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精神科実習記

 何度か触れましたが、私は発症からしばらくの間は鬱状態として治療を受けてきました。
 その治療はしばらくして効果を現し始めたように思われ、職場的にも社会的にも申しぶんない(と思われる)生活が戻ってきました。
 しかしながら、その状態は半年をも保たずして急転直下、激烈なる鬱状態に陥りました。

 当時の主治医は、これを見て、大学病院への紹介状を書いてくれました(ありがたや)。
 しばらくして、大学病院から案内が届きました。
 その中で、
 「初回の問診に当たっては、学生他も同席させていただいてよろしいでしょうか(うろ憶え、大意)」
 との記載がありました。
 多分、実習かなんかということなのでしょう。

 そういうことは避けたい人も多いと思いますが、理系頭の私としてはむしろ、「医学部、精神科の学生ってどんな実習をするのだろう」という興味がシンシンで、むしろ楽しみにしておりました(笑)。

 さて、当日を迎えました。
 呼ばれた部屋に入ると、小規模な講義室のようになっており、先生と私の面談スペース、そして椅子には白衣の学生(?)が20人程度、資料とメモの準備をして並んでいました。
 “おお、いかにも理系の実習っぽい!”
 思わず面白さがこみ上げてきました。
 先生から、面談用の椅子にいざなわれました。
(ちなみにこの先生は、うつ病学会双極性障害委員会フェローでした)

 まずは、型どおりの質問を受けましたが、極力論理的、理性的、客観的な応答に心がけました。
(適切な治療を受けるためには、まずは現状を出来るだけ正確に伝えるに如くはない)
(知的な人だと思われたいのだ(ある意味アタマは悪いけど(笑)))
 
 そして、

 「実は先日、職場の先輩から、“君はひょっとして躁鬱病ではないのか”と示唆を受けまして(これホント)」と切り出しますと、
 「すごい人だねぇ」
 「もちろん、その先輩も私も、精神医学については素人でありますので、その示唆についてはニュートラルな立場でお話ししているわけですが」

 その後は、躁鬱病が疑われる人なら誰しも受けるであろう質問を受けました。
・若い頃から、調子の良い時期、悪い時期というのはあったか
・近親者に、何らかの精神疾患の既往歴がある人はいるか...etc.
 問診はそれにてだいたい終了し、次からの通院日程を相談して帰宅しました。

 あの後、先生が学生に対してどのような説明や質問をしたか、学生が何を考えどうレポートをまとめたか、想像すると面白くてなりませんでした。
 悪くとれば、“実習の材料にされた”訳ですが、私としてはむしろ楽しめましたし、このことが、これから精神疾患治療に携わるであろう人々に何らかの示唆を与え得たのであれば本望です。

 ...私はやはり、どこかが変なのかも知れません(笑)。

(了)

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