飼育日記「めだかのきもち」⑥ひとりだけの産卵
ヒメ♂に追い回されていた黒メダカの体が一回り大きくなるにつれて徐々に気性が荒くなり、他の♀をどつくなど乱暴を働くので、しばらく隔離しようと網を差し入れるが、すばしこくて捕まらない。
他のメダカ達も同時にさっと隠れる。大きな葉の下からソロソロと目だけ出してこちらを窺うので、網を見せると一斉に引っ込む。しばらくは追い回しが止む。仲間うちで小競り合いがあっても、外敵に対しては体を寄せ合って結束する様子に感心。
新しく♀数匹が加わる。件の黒メダカが一層激しく新参者達を追い回し始め、ヒメ♂も取りつく島なく脇に退いている。あまりしつこいので、やはり一時離すことにして、何とかガラス鉢に隔離。
ガラス鉢を横から覗いていて、これまでの間違いに気づいた。丸い背びれ、ぷっくりしたお腹…♂だと思い込んでいた黒メダカは♀だった!
他の♀を追い回すのはライバルへの牽制だったか。観賞魚店のスタッフが、産卵期の♀は気が荒くなると言っていた。続けて産卵する小柄で温和な黒♀はとりわけ鬱陶しい存在だったか。それでは、ヒメ♂が餌の時間になると興奮してこの♀に突進して行ったのは何故か?求愛行動にはとても思えなかったけど。
そうと知れば、相性の良い♂を探して来なければと、朝の散歩コースにある、いつもの店に急ぎ、「気の強い♀に対抗できる元気の良い♂を」と2匹選んでもらった。
戻って水合わせをしている時、ガラス鉢の♀のお腹に卵がビッシリ付いていることに気付く。出かけている間に卵が飛び出してしまったようだ。間に合わなかった!可哀想なことをした。
これまで使ったことのない産卵床を差し入れると、しばらく行きつ戻りつした後、無精卵を擦り付け始めた。この子には初めてのことなのにとても上手に。私にも初めて見るドキドキする光景だった。
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"乱暴で憎たらしい"ヤツが、一瞬で"いじらしい"子に変わった。 7. 15