続・鷺は戻ってくるか
台風一過、快晴の朝。橋の上流の土手沿いを歩くと、曼珠沙華が彼岸の入りの暦どおりに顔を出している。
すぐ先に見なれない種類の鷺がいて、花とのツーショットが撮れた。
この辺りでこんなのどかな光景を見るのは、今年で最後になるのだろうか。
水辺で生かされてきたのは彼らだけではない。
生き物を見つけて歓声をあげる保育園児たち。ジョギングや犬を連れて行き交う住人たち。車椅子の母も花や鳥を眺めながらゆっくり川沿いを行くのを楽しんだ。
そう言えば、少し前までベランダの柵に並んで毎日のようにピーチクやっていた雀の姿が消えた。ルーフのバラ鉢を縫って横切る、美しい羽の、名を知らない鳥たちも久しく見ない。
東京のベッドタウンの役割を当てがわれた丘陵地は、里山が削られ田畑も消えて住宅が立ち並び、すでにかつての姿を思い出せないほどに変わってしまっている。
わずかに残った生態系のバランスを守る、という発想はなかったのか。
身近な生き物がどんどん消えてゆく環境で、人間だけがのうのうと生きられる筈がない。
もう草刈りの必要の無いコンクリートの壁が伸びてゆく。