飼育日記「めだかのきもち」㊷ハナの死
宅配便が届いてビックリ!
えっ、このままで?
「そうなんですよ。私も初めてです。」
注文した60Lのトロ舟が、内底真ん中にペタリと伝票が貼られて裸で届いた。
ハガキみたいですね。少し大きめだけど。
「ゴミが出なくていいですよね。」
過剰包装が気になる昨今、こんな大型で頑丈な品物を、包む必要はない、とシンプルに裸で送ってしまう合理性と、製品への矜持が感じられ、いいなと思った。軽々と端を片手で掴んで届けて下さった配達員さんの運び方も、クールだった。
雨が止んだので、水をたっぷり張って、新しい底砂を洗って敷き、窮屈になった住処から、まずはガガブタのポットとアサザの長く伸びたランナーを移す。ついでアマゾンフロッグピットふたつかみとアナカリスを散らす。夏はすぐ増えるので、このくらいにしておこう。
このまま二日間陽に当てて、水道水のカルキを抜く。いつも太陽任せで薬は使わない。冬越しは全員で切り抜けたが、いきなり来たこの猛暑はどうだろう。葦簀の屋根で、水温は30°を大きく超えることはないけれど、水質は急激に落ちていそうだ。
点呼が楽しみでもあり、怖くもあり…
移したガガブタに、花が咲いた。今年の1番花だ。水草の花はいつもこんな風にフッと現れる。
ガーデニング用のスチール籠を被せるのが、天敵避けに具合がいい。大きいのを吉田観賞魚に探しに行く。スタッフに売り場をたずねると、「そこからどうぞ」と、店内で使う籠の山を指差す。
えっ、いただけるんですか?「幾つでもどうぞ」サイズもピッタリ。ラッキー🙌
この店の入り口近くには、不要になって持ち込まれた大小の鉢が並んでいて、100円〜とお安い。山野草が植えられていたような、焼き〆のお洒落な鉢もある。持ち込んだ人には、鉢の大きさに応じたポイントを付けてくれる。物を無駄にしない、必要な人で使い回す精神が、スマートに実践されていて、いつもいいなあと思っている。水草の株分けに、備前のような渋い質感の小さな鉢を5つ求めた。全部で500円也。
早速、土を入れて、徒長した水草の先っぽを摘んで挿した。すでに根が生えている節の上を寄せ植えすれば、すぐに根付いて後の手入れも簡単。水草を何度も蘇らすことが出来る。
増え続ける浮き草は、望む人に譲ることにしよう。
ジモティを使ってみようかと、地域のサイトを覗いてみたら、「ウォーターマッシュルーム譲ります。〇〇の駐車場で受け渡し…」あら、うちから徒歩10分のスーパー!代金100円は手渡しで♪手を上げてみようか🖐水草を交換するのもいいかもね。スマホを介しての、アナログでローカルなやりとりが気楽で楽しそう。
どんな人が育ててくれるのか、分かるのもいい。植物と生き物の命の循環が出来たら嬉しい。
7. 7
引越しのたびに増えているミナミヌマエビの数にびっくり。新居に適当な数を入れた残りはガラス鉢で育てることにする。チビ達が元気よく動き回ったり、親エビの背中やお腹に掴まっていたり、ガラス越しに眺めるのは、なかなか愉快。お腹の卵が透けて見える親エビもいる。しばらく眺めて楽しんだら、観賞魚店で引き取ってもらうか、希望する人に譲ろうと思う。
弱って塩水浴をした親メダカ3匹。ハナと♂は稚魚と同居して間もなく、前後して力尽きてしまった。サキは塩水を出られなかった。
急に痩せる。泳ぎに力が無い。餌を食べない。 思い返してみれば、去年死んでしまった数匹も同じような経過をたどった。
3匹は、すでに生後半年以上経ってうちに来たと思われる。飼育下ではもっと長いと思っていたが、2年に満たない命だったことになる。同時期に弱ったことを考えると、寿命と考えるしかない。
3匹とも、最後を見届けられたのは慰めだった。
親しんだメダカの死は心塞ぐものだが、飼育者として、いくつかの学びがあった。
○異変に気付いたら、すぐ対処する。(尾鰭が溶ける症状が出た若魚を見つけ、すぐにグリーンFゴールドを買いに行く。いま、溶液の中で養生中。ヨロヨロ泳いでいたのに、2日目には、お玉で捕まえられないくらい元気になった。)
○水草が増え過ぎると、メダカの泳ぐスペースを狭め、混泳も進んで水質を落とす。夏は要注意。毎朝トリミングをやる必要あり。
○寿命を迎えるメダカが複数いたら、一時的に元気になっても、元に戻さず、一緒の水槽で、庇い合って最後の日々を過ごすのを見守りたい。飼育者の覚悟が出来、心のケアにもなる。
塩水浴の最後の夜、ガラス水槽を横から覗くと、泳いでいたハナが、ふと真っ直ぐこちらを見た。カメラを手に取る間もずっとそうしていて、そのアングルでシャッターを押した。メダカと見つめ合ったのは初めてだった。
個性派揃いでいざこざの絶えなかった初代メダカの中、チビで控えめなハナが気掛かりで、いつも姿を確認してから餌を撒いていた。数が控えめな抱卵も、見ればホッとしたものだ。
短かい命だったけれど、一番先に卵を産み始め、厳しい冬を切り抜け、冬眠明けから6月まで、毎日次世代を残してくれた。子世代と仲良く賑やかに過ごして、短くも濃い命を全うしてくれた。
うちに来てくれてありがとう。頑張る姿をずっと見せてくれてありがとう。
7. 13