うつ病というトンネルをさまよってみて
私は約1年前にうつ病の診断を受けた。
その前から何年も不調が続いていたが、診断を受ける数か月前から体調が急激に悪化した。しかし不調はいつものことだから慣れっこだったし、コロナ禍でみんな大変なのだからと、自分の状態の異常さに気づけなかった。病気だなんて微塵も思わなかった。
死にたい思いをかかえて毎日を生きていた。寝れば必ず悪夢。なんでもないことで涙があふれる。何を食べても美味しくない。というか食べない。
でも病気だと気づかず自分のせいだと、自分が弱いからだと思っていた。
とうとうある日、会社に行けなくなった。涙が止まらなくなって。起き上がれなくなって。
自分を責めて責めて情けなくて、もう少しで消えそうだった。いや、心はもう……。ひとりで真っ暗なトンネルーーもしかしたら死へと続いているかもしれないーーをさまよっていた。
そんなとき、なんとか医療につながった。
約1年たった今、苦戦を強いられているものの回復してきた。死んだほうがマシな気分になることもまだあるけれど、あのとき助けにつながって本当によかったと思う。
病気かもよと言ってくれた家族、病院に付き添ってくれた上司、話を聞いてくれたカウンセラー、薬をくれた医師。いろんな人につながったから今がある。
だからこうやって、苦悩の経験をささやかだけど発信している。
つながることを知らないまま死を選ぶ人がひとりでも減るように。
病気の恐ろしい症状を、自分の甘えだとか思わずに躊躇うことなく相談できる人がひとりでも増えるように。
救おうなんて思わない。できない。
けれど向こう側に行こうとするときの、ちょっとした引っ掛かりくらいにはなりたい。
1年前には楽しいことが何もなかった。好きだったはずのことも何もかも手につかなかった。冷たく暗い孤独なトンネルが永遠に続いているとしか思えなかった。
けれど今はささやかな日常が少しだけ楽しいと感じる。
できないことはまだたくさんあるけれど、できることのなかで楽しいことがちょっとある。ああ、あの時は病気のせいだったんだと今なら思える。
1年で回復の兆しが見えるなんてかなりラッキーなケースかもしれない。少なくとも私は同じトンネルでも1年前とは見えている景色が違う。出口が見える。少し暖かい。そんなトンネルになった。
徐々にというよりも、ある日グッと良くなった。それは抗うつ薬が増量になって最大投与量を飲めるようになったときだった。
霧が晴れたとまではいかないけれど光が見えた。見えている世界の色が変わった。
まだ暗闇に落ちることはあるものの、いろんな人のおかげ、医療のおかげで、必ず光はまた届くって知れたから、暗闇は怖くなくなった。
全てに感謝。生きていることに。生かされていることに。本当にありがとう、みんな。きっといつか恩返しする。