末端行政の未来

末端行政とは、最も住民に近い存在、市区町村の役場のことである。

Ⅰ末端行政の実情

人材不足が最も大きな問題

末端行政は、住民の皆さんと直接関わることが最も多い行政主体である。
住民に寄り添い、住民の声を聞く。そして住民のために制度設計を行う。

国や都道府県が示した方針を実行するのも末端行政の役割である。

しかし、そんな末端行政には深刻な問題が存在する。
それは「人材不足」である。

国や都道府県に比べて扱う事業の規模は大きくないものの、職員1人が担当する部門が多くなっている。
そのために、専門性の欠如や過労が生じてしまう。

まさに人的資源が足りていないのである。
もっと職員数が多ければ、もっとそれぞれの部門に専門性を持った職員がいれば、どの部門においてもオールマイティに活躍できる職員がいれば、と願望だけ強くなってしまう。

では、人材不足を引き起こしている原因は、何なのだろうか。

私が思う原因は、以下に示す3点である。
① 人員の補充をする余力がない
② 人材獲得競争で負けてしまう
③ 育成が上手くいっていない

① 人員の補充をする余力がない。 

これは一重に、予算の問題である。

行政の支出において人件費は大きな負担である。
正規で1人雇えば、給料だけでなく、社会保障費などの負担も生じる。

増やしたくても増やせない状況である。

② 人材獲得競争で負けてしまう

行政職を目指す人材は、優秀であればあるほど、国、都道府県を目指す。

もちろん、自分の暮らしてきた市区町村をなんとかしたい!という強い想いを持って入ってくる人も居るだろうが、
どうしても優秀な人材は国や都道府県に流れてしまう。

③育成が上手くいっていない

優秀な人材を得るには、そもそも優秀な人を獲得することも重要だが、
就職後の育成によって、優秀な人材を生み出すことも可能である。

だが、そもそも人材育成プログラムが前時代的であったり、充実していなかったりする。

また、若手を教育する側の人材がそもそも不足しており、十分な教育ができていない市区町村もあるだろう。

Ⅱ国や都道府県との関係

政策変更に振り回される

市区町村は、自治を行う主体だが、国や都道府県の方針に従う必要がある。

そのため、国や都道府県の方針が変われば、それに従わざるを得なくなる。

国及び都道府県の方針は、政権や首相、知事が変わるたびに変更されることもあり、市区町村はそれに振り回されてしまっているのが現状である。

方針に背き、予算執行率が下がれば、次年度からの予算配分は減り、自身の首を絞めることになってしまう。

また、市民対応だけでなく、国や都道府県からの依頼も多く、
データ提供などの仕事がどんどん舞い込み急かされるのが現状である。

自治体にも関わらず、自分たちで自治を行なっているという実感が湧かなければ、職員の働く意欲にまで影響しかねず、
国や都道府県との関係性は重要なポイントである。

Ⅲ末端行政の未来

市区町村連携

人材獲得という面で、国や都道府県に勝ることはなかなか難しい。

だが、人材育成においては、工夫のしようがある。

例えばそれが、「市町村連携」である。

いくつかの市町村で連携することで、優秀な者による指導がより広く行き渡る。

時には、出向という形で職員を交換することで、
他市町村と自地域を比較し、焦燥感、競争心を掻き立てたり、新たな経験を積ませたりすることができる。

人材育成だけでなく、副次的な効果になるが、
連携によって、市区町村がまとまって都道府県や国に意見出しをすることができるようになり、発言力を高めることができる。

国や都道府県職員の出向先となる

市区町村との連携に加え、国や都道府県と積極的に人材交流をすることで、
人材育成や仕事の効率化等、ノウハウを吸収することができる。

考える力を育てる

普段の仕事の中では、仕事をより効率的に進めるために、前例踏襲、機械的な作業がとられることがある。

もちろん仕事の効率化は重要である。

だがそれでは、職員の考える力を育てることは難しい。

年齢問わず、時間がない中でも考える機会を提供することが大切である。

仕事の中で、なぜ、を常に意識できるかどうかで、何か問題が起こった時の対処能力に差が出てくるのではないだろうか。

末端行政の持続性

末端行政を持続的に回していくには、やはり人材が何よりも重要である。

AIなど、仕事を効率化するツールは普及しつつあるが、
それを使う人材次第で、ツールの効果に大きな差ができるだろう。

市民のよりより生活のために、末端行政をいかに良いものとするのか、時代の流れに合わせて、考え続けていく必要がある。

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