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ワイン本レビュー 「シャトーラグランジュ物語」

このnoteを書くきっかけにもなった書籍「シャトーラグランジュ物語」のレビューです。ワイン好きの方には有名な話なのだと思いますが、日系企業のサントリーがボルドーの格付けシャトーの所有者であり、その復活に素晴らしい貢献をしてきたことが数々のエピソードを交えて紹介されています。

ワイン本を探すと、多くはワインの知識だったりソムリエ教本のようなものが多いのですが、個人的にはこういった作り手の方の感情や思いが伝わる本を多くよみたいなと感じました(もし、そういった本が他にもあれば是非コメントなどで教えていただけると嬉しいです)。

この本を読んだ多くの人は、鈴田健二という人物を非常に好きになってしまうと思います。鈴田さんはサントリーが買収した時には、荒廃していて"格付けシャトー"という名前だけの状態になっていたシャトーラグランジュを復活させた人物で、この本の主人公の一人として登場します。
また、鈴田さんという人物が好きになるのと同時に、ボルドーという伝統的で閉鎖的な社会で日本人として成功するために奮闘している様子は、何か勇気をもらえるような感覚にもなります。

ちなみに、鈴田健二さんはネットで調べてもあまり情報がない方なので、その人となりや紹介されているエピソードもなかなか貴重な話です。
最終的に、「鈴田はボルドーの偏屈な人間になった」と書かれていて笑ってしまいましたが、フランスの方は英語で話しかけてもフランス語で話し続けるみたいなエピソードをよく聞く上に、そのフランスの中でもボルドーは伝統を重んじると書かれていたのできっと想像以上に余所者が入っていくのが大変だったのだろうと思います。

シャトーラグランジュを甦らせた鈴田健二さんの後任として、椎名敬一さん、桜井楽生さん、と章は進んでいきます。鈴田さんが未来のために植え替えた葡萄、椎名さんが挑戦のために植え替えた葡萄などその多くが未来を見据えた仕事であって、ワイン作りの時間軸の長さを感じました。

鈴田さんは2009年に亡くなられているのですが、その事実を知らないまま読み進めていたので、そのことに触れられている箇所でしばらく呆然としてしまいました。
今後、シャトーラグランジュを飲むときには必ず鈴田さんやこの本の事を思い出すと思うので、ワインはそこに込められたストーリーや歴史を一緒に味わうものなのだとこの本から勉強させてもらいました。

ワイン好きであれば是非、という内容です。


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