今月読んだ本(2020年1月)
今年はちゃんと読書記録を公開したいと思い、記します。(もう2月・・)
1月は、自分の内面と向き合うような本が多くなったかも?
1. マチネの終わりに
正確には大晦日に読み終わったこちらの本。久々に小説に没頭した。
読みながら考えたことは、起こった事実にどう対峙して、許容していくかということ。言ってしまえば当たり前なんだけど・・
この小説でも蒔野と洋子の出会いそのものが二人の人生にインパクトを与えていて(数えるくらいしか会った事がないのに、心の中では知らぬ間に大きな存在になっている)この先どう進もうと出会った「事実」が変わることはない。
どう進んでもそれを選んだはずの自分と選ばなかった自分のどちらかがあるだけ。どちらにしても結果と向き合って、受け入れる深さがないと精神的に苦しくなってしまう。
とは言え、起きた事実への「意味」は上書きされていくので、過去は変わる。色々な意味が書き換わっちゃうことを知っているからこそ起こせない行動もあるし、幸せだって、思い込みながらじゃないと、生きていけない弱さもあるなと。(実はこの後映画も観てて、特に感じた部分。誰しも幸せって思いこみながら折り合いつけながら生きているんじゃないかなと)
私自身、このまま進んじゃったらどうなるのかなと動けなくなる時があって、それは進むことによって未来のどこかの分岐に辿り着いちゃって、どういう風に過去が書き変わるかが分からないから怖いんだなと。
それでも、人生は分岐の繰り返し。もう少し長い目線で出来事に対峙しながら、意味を上書きして、恐れず前に進んでいくしかないなと思った。
しょうがなさを受け入れる器の大きさや、どうせ書き換わっちゃうのだから、前に進むだけという勇気を貰う本でした。(映画も良かった・・・)
2. スッキリ中国論
中国と日本のこういう時はこう行動するべきだと言った”相場観”の違いを「スジ」と「量」で分類した、タイトル通りのスッキリ本です。なんとなく感じていたことが綺麗に言語化されていて、中国にある程度滞在したことがある人は納得の連続だと思う。
中国社会は大らかで、大雑把なところがあるけど、この辺りは「量」の思考で説明することができて、逆に日本の秩序や潔癖さみたいなところも「スジ」の思考(筋を通す”べき”)で説明できる。例えば、万引きという犯罪に対して中国で問われるのは金額の大小(量)、日本では金額の大小に限らずダメなものはダメ。それがルール(スジ)だから。
他にも中国的な行動様式で面白いなと思ったのは、以下。
・社会が期待する行動を振る舞う(面子・お金の使い方etc)
・同族で結束して自らの利益と安全を守る(マンション購入・教育etc)
カオスな社会に見えつつもタテの社会で自分がいるのはこの辺りで、どう振る舞うべきだという自己認識をそれぞれが持っている感覚。だからこそお金持ちはお金を使うし、自然災害などが起こればこぞって寄付をする。逆にお金がなければ徹底的に使わない。
そして、タテの感覚を持ちつつもヨコの意識がある。本の中では同族で結束してマンションを購入したり、子供を教育したりといったエピソードだったけど、ヨコの感覚は状況に応じて柔軟に変わるのが面白いなと個人的に思う。世界各地のチャイナタウン形成や、非常事態の結束力の強さ。
本の中でも、大災害などが起きた時、中国人はとにかく目の前の状況をどうにかしたいと言う熱い気持ちで行動してしまう(人としてやるべきことをやると言うシンプルな思考)のに対し、日本人は自らの役割を考え、全体の秩序を守り、全体の効率を重視するというエピソードがあって、それぞれ頭の中にある「全体」が”同族や仲間”という範囲で考えるのか、”社会全体”という大きな枠組みで考えるか大きな違いがある気がした。
人の行動とは社会の判断基準や空気感に基づくところが大きいんだなと理解するだけでも、一つ一つの行動に対する不可解さが軽減できそう。
そして、本を通して自分の行動基準がかなり日本社会的だと自覚できたのもよかった。ルールに囚われてイレギュラーな判断ができないのは馬鹿馬鹿しいと思っていたけど、「この場面ではこうスジを通すべき」という思考を無意識レベルで持ってるなと・・。そりゃ、日本で育ってるからね・・。
相手のことはもちろん、自分の無意識な思考フィルターを理解した上で中国と付き合っていけたらいいな。合作愉快!
3. カスタマーサクセスとは何か
よく聞くのによく分かってないシリーズ。カスタマーサクセス・・?カスタマーサポートのなんかスゴイ版?くらいの認識でした。
印象に残ったエピソード
とにかくお客様に何ができるか、という部分がカスタマーサクセスなのかな?と思っていたけど、幸せにできないお客様を見極めるという部分にハッとした。それってよっぽど相手はもちろん自分自身を理解してないとできないことだなと。とにかく売ろうとはまた違う世界。
「商いは買っていただいた後が大切」という基本精神に色々なことが集約されていて、買っていただいた後の関係性ありきでモデルを考える場合、必然的に売り切りではなくリテンションモデルになっていくのだなと。だから、モデルが先にあるというよりは、基本精神が先にあって、その後に最適化されたモデルが付随するようなイメージだと感じた。
あとは、プロダクトチームとカスタマーサクセスチームはベタベタに連携しないといけないというエピソードも印象的。
プロダクトチームはITリテラシーが基本的に高いので、リテラシーの低いカスタマーのことを想像できない。機能が正しい順番で使われているかばかりに目が向いているけど、その機能と機能の間でつまずいてないか、違う使い方されてないかといったところまで想像できていない。みたいなエピソード。
私はまさにプロダクト側の人間なので、機能そのものばかりに目がいって、システムが正しく動くかということに頭のリソースのほとんどを持っていかれていたなと。
要は脳内リソースの分配が違うから、補完し合うべきだよね、カスタマーに成功体験を提供するという共通目的の理解を助けるのが「カスタマーサクセス」という概念だよねと理解した。
この本を通して、カスタマーサクセスとは手段ではなく考え方なのだという掴みは掴めたので、あとは日常の事例で腹落ちさせるしかないな。
4. 2025年、人は「買い物」しなくなる
発売前から気になっていた本。タイトルはとってもキャッチーだけど、「買い物」を取り巻く消費者や小売の歴史と現在、これからが考察された本だった。インフルエンサー経済も、歴史を見ると必然的に生まれるものだったんだなとか、単発的に生まれるトレンドとかなくて、あらゆる事象が実は繋がっていて結果的にトレンドという大波に集約されるイメージができて、面白い本だった。
わざわざ実店舗に行く必要のない買い物はネットで済ませたいし、何が欲しいかも分からないから検索よりレコメンド商品から探したいし、そうすることで買い物する(買い物に出向く)感覚がなくなっているのは自分自身感じる。
この部分にもあらゆることが凝縮されてるなと感じた。ショッピングの選択権が私たち消費者に移ることによって、マス向けの大量生産商品から小ロットで売り切るような商品に変わってきてるし、中国で生まれている「新国貨」トレンド(ここ数年で国民的ブランドになった中国発のコスメや飲食ブランド)も、ショッピングの選択権の移り変わりを反映しているんだろうなと。
私自身は中国の事例を追うことが好きだけど、この本で学ベる歴史や潮流がに繋がることが多くて、自分の中の知識を深めるきっかけになった。
5. 82年生まれ、キム・ジヨン
韓国のミリオンセラー小説。
前から読みたかったのだけど、今回ソウルに行く機会があったので、購入。そしてソウルの地下鉄の中で読む感慨深さ。
読むまで自分にはあまり関係がない話なんじゃないかと思ってたけど、読めば読むほど、自分と重ねててびっくりした。そういうことか。キムジヨンは特別な人なんかじゃなくて、ありふれたごく普通の女性がモデルなんだな。これ、読んだ女性はみんなどこか重ねる部分あるだろうな。あまりにもありふれた日常の中での出来事だから、見過ごしてた。本当に。
私は正直これまで性別によって起こる差分みたいなところにあまり問題意識を持ってなくて、だってそれぞれの個性を生かして生きていくしかないじゃんと思ってたけど、「それが当たり前じゃん・・?」と無意識に思い込んでたんだろうな。そういう人の問題意識を顕在化させる本だったからこそ、ここまでの話題作になったんだと思う。
普段全く気にしてなかったけど、弟のために色々なことを我慢した(進学、塾、寮、バイト)過去の自分に今更向き合うことになって、少し苦しくなった。けど、それが当たり前な雰囲気だったから、私は私で受け入れて与えられた環境でベストを尽くすしかないと思っていたし、そうしてきた。
結局、どれだけ多くの人が当事者意識を持てるかでしか実社会って動かないんだと思う。その意識の芽生えがあっただけでも、読んだ意味のある本だった。最後のカウンセリングのシーンが全てなのでは。
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長くなっちゃった!2月はどんな本が読めるかな〜!
最後まで読んでいただきありがとうございます!!!!いい一日になりますように!