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『オッペンハイマー』 感想

今日の昼、オッペンハイマーを見てきました。3時間の映画なので集中が持つか心配でしたが、いつの間にかエンドロールが流れていました。ここからは感想と考察を書き散らします。多少のネタバレも含まれるので注意してください。

情報整理

まず、クリストファーノーラン作品なだけあって、やや難解な映画だった。(彼の作品だとメメントやインセプションも大好きなのでそのうち書きたい)とりあえず、頭の中の整理も兼ねて抑えておくべきポイントを書き出してみる。
・第二次世界大戦中、アメリカはナチスを恐れていた
・アメリカはナチスが降伏したあと、ソ連と核兵器の開発で一触即発だった
・主人公はユダヤ人
・白黒のシーンは回想、カラーのシーンは現在
登場人物も多く、伏線もいろいろと張られているので、一度見ただけでは咀嚼しきれなかった。もう一回見たいな。とはいえ私は事前に町山さんのポッドキャストを聞いていたので、だいぶ飲み込みやすかった。まだ映画を見ていない人も、もう見たという人もぜひこのポッドキャストを聞いてほしい。映画の解像度が上がります。


ダレないストーリーライン

まずはストーリーについて。原爆をテーマに扱うということは、反戦をテーマにしたある種の説教くさい映画なのかなと思っていたけれど、まったく違った。あくまでストーリーはオッペンハイマーの人生を主軸としている。一つひとつのシーンが長引くことなく、回想のモノクロのシーンとカラーのシーンが織り混ざりながら進んでいくので、常に緊張感があって、中だるみがなかった。開発者側は原爆を投下したわけではないので、日本に原爆が投下されたシーンも流れない。(オッペンハイマーが原爆投下後の映像を見たシーンはあったけれど)原爆を開発した人間にとって、その兵器がどこで、どのように使われたのかを体験できないというのも、恐ろしいところ。

オッペンハイマーという男

これは町山さんのポッドキャストでも触れられていたけれど、主人公は実験も苦手、女性関係にもだらしなく、子どもは妻に任せきりな典型的なダメ男。ただ、所長として人を動かす力があったり、量子力学の天才的な才能があったりする。彼はナチスが降伏したあと、まだ日本という敵がいる、核の力は実際に使ってみないと分からない、というようなことを言う。実験が苦手な彼が原爆の開発という「実験」を成功させることに執着したのは、研究者魂の他に、自分は理論だけで実験ができない、というコンプレックスがあったからだったのだろうか…

映画館で見るべき映像、音

爆発の映像、それから音を映画館で見ることができてよかった。大画面の爆発には美しさすら感じてしまったし、爆発音の音圧は映画館だからこその迫力があった。それから、劇中の緊張感が高まるような効果音もよかった。人々が足を踏み鳴らし、一定のリズムを刻んでいる音が特に印象的だったな。不安や焦りを感じるような、うるさい鼓動の音のようで、心が乱される音だった。

鳥肌がたったシーン

私が一番ぞわりとしたのは、広島への原爆投下が成功したあと、オッペンハイマーが歓声を上げる人々の前で演説するシーン。なんとなく音に違和感があるところから始まり、ついには音が消え、白い光に包まる。目の前の女性の皮膚がはがれ、誰もいなくなる。そしてオッペンハイマーの足元には、黒い塊が…。周りの狂乱的なムードとの対比だったり、映画にしかできない音や映像の表現が刺さった。それまで淡々と物語が進んでいただけに、このワンシーンは衝撃的だった。オッペンハイマーは泣くとか悲しむとか、そういう分かりやすい感情表現をしていなかったけれど、彼の心の中の葛藤をドストレートに描いていたシーンだったと思う。

作中でも反対運動の署名があったように、結果として開発された核兵器にも反対していた人はいたんだな、と思った。ドイツ国内でもナチスにドン引きしていた人がいたように、戦時中も倫理観がまともな人たちはいたんだなあ。
オッペンハイマーは、日本だけでなく世界中の人たちが見るべき映画だと思った。今も戦争が続いている世の中で、核兵器の開発は世界をどう動かすのか。少しでも多くの人が考えるきっかけになったらいいと思う。

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