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考えないでカレーをつくりながら、考えたこと

久しぶりに、カレーをつくった。

じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、豚肉、カレールーを用意して、まず、材料を切る。

私の場合、最初に玉ねぎを切って、おろしにんにく(チューブ入り)とオリーブオイルとともに鍋に入れ、弱火で炒めながら、他の材料を切る。そうすると、ちょうど玉ねぎがいい感じになった頃に、じゃがいもやにんじんを入れることができるからだ。

あ、ちなみに、じゃがいもやにんじんを入れる前に、豚肉も炒める。

玉ねぎと豚肉がいい感じに炒めてあるところに、食べやすく切ったじゃがいもとにんじんを入れ、そこに材料がかぶるくらいの水を注いで、鍋にフタをする。沸騰するまでは中火で、その後は弱火でコトコト煮る。

コトコト煮る時間は、約15分間。キッチンタイマーを15分にセットして、スタートボタンを押す。

タイマーが「ピピピッ、ピピピッ」と鳴るまで、特にやることもないので、ワインを開ける。私は、カレーに白ワインを合わせるのが好きだ。

ここでワインをかぶかぶ飲んでしまうと、カレーができあがる頃には酔っぱらってしまうので、ちびちび飲む。

ワインをちびちび飲みながら、ふと思った。

私、カレーをつくるとき、なんにも考えてないなぁ。

「カレーが食べたい!」と思ったら、じゃがいもとにんじんと玉ねぎと豚肉(ときには鶏肉や牛肉だったりもする)が冷蔵庫にあることを確かめて、もしなかったら、スーパーへ買いに行く。我が家ではたいてい、カレールーは常備してある。

そうして材料をそろえたら、材料を切る。切ったら、炒める。炒めたら、水を注いで、コトコト煮る。

ここまで、一気にやっている。なにも考えずに。

なのに、なぜ「ブログを書こう」と思っても、書けないんだろう?

「エッセイなんて、他人に見せる日記みたいなもの」と、エッセイストのどなたかが言っていた。

なるほど。確かにそうだ。その人の日常や好きなことや家族のことなど、とても個人的なことを、おもしろく書いているのがエッセイで、そのもとになるようなものがブログなんじゃないかと、私は思っている。

と、いうことは、自分の身のまわりにあることを書けばいいわけである。

私は普段、取材ライターをいう仕事をしていて、たいていは誰かにインタビュー取材をして、原稿を書いている。

インタビュー取材の相手は、どこかの会社の社長さんだったり、お店の店長さんだったりすることが多く、そういう相手の仕事は、必ずしも私自身に関係することばかりではない。むしろ、全く関係ないことの方が多い。

だけど、私は興味津々で話を聞き、それを原稿にまとめている。原稿を書いているときは、とても悩むし、それなりに時間もかかるけれど、話を聞いているときは、どんな取材相手でも、とてもおもしろくて、時間があっという間に過ぎる。

あ、ということは、私は自分の身のまわりにあることを、おもしろいと思ってないのかな?だから、書けないのかな?

いやいや、意外とそうでもない。先日だって、用事があって久しぶりに銀座へ行ったのだが、ついでにいろんな県のアンテナショップへ立ち寄ったら、見たことがない食べものがいろいろあって「おもしろ~い!」と思ったばかりである。

ほら、私の身のまわりにだって、おもしろいことはあるじゃないか。

でも、ブログは書けないんだよなぁ……。

時間がないから?いや、時間はある。仕事はそんなに忙しくない。本当に忙しくなさすぎて、仕事を大募集したいくらいだ。

でも、ブログは書けないんだよなぁ……。

なんでだろうなぁ……。

そんなことを、ワインを飲みながらぼんやりと考えているうちに、タイマーが「ピピピッ、ピピピッ」と鳴った。

鍋のフタを開けると、もうすでにおいしそうな匂いがして、じゃがいもやにんじんがいい感じに煮あがっている。

カレールーのパッケージを開けて、ルーを割り入れる。お玉を使って、鍋の中でルーをよく溶かす。「おお~。カレーだ」という香りをかぎながら、鍋の下の方からよくかきまぜる。鍋の下の方に入っていた玉ねぎや豚肉が顔を出し、さらにおいしそうな匂いがする。

私は小さく「よし、よし」と言いながら、再び鍋にフタをする。コンロの火が弱火になっていることを確かめて、再びキッチンタイマーをセットする。ここでもやはり、15分。次に「ピピピッ、ピピピッ」と鳴ったら、できあがりだ。

さて……。と、またワインをちびちび飲んで待つ。待っている間に、あっ、と思いついた。

そうか。これをブログに書けばいいんじゃないか!

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