インテリVS普通の人

 菅総理大臣による学術会議会員の任命拒否には驚いた。かつて中曽根元総理は、国会において、学術会議会員の政府による任命は形式的なものに過ぎないと答弁している。今回の任命拒否はこの答弁と矛盾している。菅総理大臣は、6人の任命を拒否した理由について何も語っていない。この任命拒否は権力による学問への介入であり、憲法第13条に違反していると言わなけれならないだろう。インテリ界隈は、激しい怒りに包まれている。

 だが一般の人たちの受け止め方はどうなのだろうか。菅総理は何かルール違反をしたかもしれないが、学術会議も左翼学者に支配された問題ありの組織で、「どっちもどっち」という受け止め方が主流なのではないか。マスメディア、とりわけテレビの報道もそうした方向に世論を誘導しているようにみえる。「学問の自由」と言われても、多くの人にはピンとこないはずである。いまでも18歳人口の4割強が大学に行っていないのだから。

 携帯電話の料金引き下げ、不妊治療への補助。そしてハンコの追放…。菅政権の打ち出したこれらの政策を、インテリたちは馬鹿にする。ただの人気取りだ、少子化対策やIT化の立ち遅れの解消に資するものではないと。だが、普通の人たちにとってこれらは、「干天の慈雨」と受け止められている可能性がある。泥臭いキャリアをもつ菅は、任命拒否のマイナスを携帯料金の値下げ等のプラスが補って余りあると踏んでいるのではないか。

 菅は、この任命問題を「もりかけ桜」と同様うやむやにするつもりだろう。菅の次の標的は、NHKだと多くの人たちは考えている。学者も嫌われているが、NHKはそれ以上だ。何しろアンチNHKを標榜する政党が、国会で議席を得ているのだから。NHKを叩けば、国民各層から拍手喝さいを浴びる可能性は大である。国民世論を背に、政権は人事に介入し、番組内容の統制を強化していくはずだ。ディストピアの到来を阻止できるか。




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