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やいやい 2023/7/16


ずっとできずにいて気になっていた家事を片づける。換気扇のシートを貼り替えたりとか、イスの足に絡まったホコリをかき出すとか、そういう類の用事だ。かなり久しぶりに麦茶を煮出したら、香ばしくてあたたかい香りが台所を満たして実家にいるような気持ちになる。ああ、夏。

PCを開いて仕事をわずかに進めたところで、ライター仲間のナオさんから連絡をもらう。鶴橋で東京のご友人を案内中とのことなので、キリの良いところでご一緒させてもらうことに。

家を出るも道中が暑すぎる。思わず丸金商店に寄って一杯ビールを注入してしまう。商店街の真ん中にひとり立ち、キンキンの生ビールを呑るのは優越感がものすごい。通りすがる人全員から羨望の眼差しを受けているような気分になる。そうだろう、暑いだろう。ビールがうまいぞ。ベビーカーに乗った赤子すら、こちらをうらやんでいるように感じる。

やはり丸金の生はうまい
暑すぎて歩いてる最中もずっと飲んでた

コリアンタウンのお好み焼き屋にいるお二人と合流し、早速ビールで乾杯した。いろいろなお話を聞きながらイカ焼きや焼きそば。ナオさんのご友人らしい朗らかな方で、平和にお好み焼きを美味しく楽しんだ。

気軽な良いお店だった
イカ焼きって美味しいんだね

店を出て散歩しながら鶴橋駅へ戻っているところにだんじりと遭遇。昨日から我が町鶴橋は夏祭りで、周辺の神社からだんじりが出て町内を回っている。てっぺんで勇ましい男性が舞い、車内では若い女性が淡々と太鼓を刻む。だんじりの周りは、扇子をふりふり踊り掛け声を絶やさないギャルたちが囲む。なんとかっこよくまぶしい。

ひとしきり眺め楽しんで、立ち飲み屋へ入店を打診するも満席。歩くと稲Balが空いているので入店することに。3,4杯飲み席を立ち、駅前でラスト缶チューハイ。いかにも鶴橋らしいコースを巡れたな。「最高に楽しいです」と言っていただけたのもとても嬉しかった。楽しそうな写真がたくさんスマホに残っていて、いつでもこの気持ちを思い出すことができる。

稲Balはいつだって最高

ナオさんとご友人は帰宅されたが、わたしの夜はまだ終わらない。(かっこいい発言)20時~21時ごろに御幸森神社へ各だんじりが戻り、ラスト演舞を行うそう。迫力満点のパフォーマンスだと、昨日の酒場の店主、本日稲Balでも太鼓判だった。そりゃもう行くっきゃない。いつも行く酒場で一杯飲んで時間を待ち、開催場所へ向かった。

向かう道すがらお腹が減ったのでコンビニで肉まんを買い、パクつきながら歩く。その横を稲Balのママが通り過ぎて挨拶した。肉まんの買い食いが見つかって恥ずかしい。

神社に近いエリアが近づくにつれて人が増え、特に大きなだんじりが揺らいでるのが見えてきた。お巡りさんが「頼むから下がってくれ」と交通整理に苦労している。

コトの中心へ向かっている

だんじりの前後には法被を着た若い女性や子ども達がおり、周りを固めている。その数は昼間見たギャル立ちの比ではない。ディズニーランドのパレードくらいを想像していただくと良い。もっと密度が高いか。聴衆も、もちろん周りの法被組もひざを使ってだんじりが奏でるリズムにノり、道の両側からだんじりに迫っている。やいやい、やいやい、と掛け声がかわいい。

道路には等間隔にいくつかのだんじりが並んでおり、それぞれ演舞をしている。収まっている神社の違いだろうか。提灯の文言、お囃子、法被、踊りすべてだんじりごとに違っている。

すると、お巡りさんが臨戦態勢を強めて聴衆をより端へ寄せようと動く。各だんじりが奏でるお囃子と掛け声が急に強まり、てっぺんで踊る兄さんは腰をより深く落とし気合を入れ直す。近くにいた2つのだんじりがスピードを上げて近づき、ぶつかる!と思う直前で止まり、煽り合うように大きく回り踊り声を出し合う。その背後ではコンサート演出のような紙テープの放出。派手派手しく空間が咲く。そこはヤザワエイキチ的なんだな、と面白く思った。聴衆みなカメラを構えながらリズムにノる様はもはやクラブである。行ったことないけど。もちろんわたしも「やいやい」「やいやい」の掛け声に合わせてヒザを揺らして体重を移動して全身で楽しんだ。

ひとしきり空間が踊り狂ったのち、だんじりがピタと止まり向き合った。先陣にドシと構えていた男衆が口上だろうか、何か声を発して唱え、「ぅぉお疲れ様ですっっっ」と締める。再び2つのだんじりが踊り合い、それぞれが違う方向に動き出す。メインロードを外れて脇道へ消えて行った。

なんと素晴らしいものを見てしまったんだろう。というか、見るというより一緒に場をつくった感覚が強い。同じ音で踊り声を出し合うことの一体感。行事として守る格式と地の人がつくりあげる儀式を皆で大事にしているのであろう神々しさ。見た目の美しさ勇ましさだけではないものを感じた。


気に入った方のだんじりについて行く。住宅街をグルッと回ってから格納される蔵のある神社へ行くようなので、先回りして待ってみる。出店でプラコップチューハイが100円だったので買って飲んだ。少しぬるかった。

ふぅと落ち着くと、暑さにあてられ疲れてしまったようだ。だんじりの帰りを待てずに帰宅することにした。

稲Balで聞いた話によると、昔は2つのだんじりを実際にぶつけ合っていたという。てっぺんに乗っている人が落ちて死亡するなどの事故がありそこまではしなくなったが、当時の迫力は今に比べものにならなかったそうだ。


これまで鶴橋を飲み歩く中で、鶴橋の人はパリピが多いなと面白く思っていたのだが、この祭を見て納得だ。これを幼少から経験しDNAに刻まれているのだろう。土地を醸成する魂の一端を感じた夜だった。


今日のつぶやき

だんじり囲むギャル。ああいうギャルになれる人生も歩んでみたかった。

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はしお
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