
湯気の向こうの 2024/12/6
昨晩早めにふとんに入った功績だろう、7:00台に目を覚ますことに成功する。
起き抜けに即パソコンに向かって1、2時間原稿を進めるのが最近のスタイルだ。カーテンの隙間から陽射しは入り込むが、まだ夜の中にいるような、ひとりきりの感覚のまま文章を書く。
ひと段落したら、何時まで陽射しが出ているかアプリで確認して洗濯機を回す。今日はいろいろ洗濯できそう。時短モードで水量はマックス、任せている間に身支度を済ませる。
クライアントから間借りしているオフィスに来て仕事をする。久しぶりだが、やはりしっかりスイッチ入るな。ダカダカと仕事を進め、(しかし終わらない)お昼には近くの中華料理屋でランチ。ひとり客は全て大円卓に通されるオペレーションで、8人が黙って囲んだ。人がどんなものを注文しているのか興味の強い質なので、見渡しやすい形状で嬉しかった。
19:00、布施でナオさんと待ち合わせる。
おでん屋台で飲もうと約束していたのだ。21:00に開く予定なのでそれまでの一次会、どこで開催するかウロウロ。いくつか振られ、そうだ!とたどり着いたのが「八番」。

秋にナオさんと制作したZINE、得一のファンブック内でも紹介したのだが、布施にある立ち飲み酒場「八番」は、元々は得一だったそうで、今もその名残があるとかないとか。わたしは未訪で、いつか行きたいと思っていたのだ。
着くと、外観、内観ともに、思いっきり得一みを感じる。入店すると笑顔の店員さんが樽をテーブルに転用した席に通してくれた。この樽、尼崎店や扇町店にもあるヤツだぞ。
メニューを見ても得一ソウルが宿っているとしか思えない構成だ。日替わり料理のメニューの縦書き横書きが同居したレイアウト、左上には今日おすすめの鮮魚!こりゃ間違いない、ここは元 得一だ!

店員の方は明るく機敏に働かれている。常連さんらしき方との会話が多いあたりは得一より地域密着型か。一見の我々にもずっと笑顔のお姉さん、ニコニコと店を明るく照らしていた。感じがいいなー!

造り、ぬか漬け、マカロニと定番をつついて(もちろん得一みがある)はしゃいでいたらあっという間に良い時間だ。思わぬ得一調査ができたことにホクホクしつつ20:40、店を出た。
八番はいったい、どのような経緯でできた店なのか。聞いてみたかったが、会話できずに店を後にした。
さて、今日の目的であるおでん屋台。ここは以前より素晴らしいと噂を聞いていたので、やっとの訪問!期待ふくらむ。
自宅に吊るしてあるラズウェル細木先生の酒のほそ道カレンダー2024、12月の絵はこの屋台がモデルなのではと推察されていて、この絵が部屋で見られるうちに来ておきたかったのだ。
駅から続く商店街の終着地点まで歩き、閉店した銀行の前の広場に屋台が設置され、のれんがビニールの囲いの内側にある。まだ準備中のようだ。

しかし、なんと素晴らしい外観か。
こんな完璧なビジュのおでん屋台は初めて目の当たりにしたかもしれない。
銀行の営業時間が終了してからひらくので21:00開始なのだそう。少し前で待たせてもらい、提灯に灯りがともると同時に一番乗りで入店。その、暖簾の向こうに広がる世界の素晴らしさよ!

早速瓶ビールで乾杯し、グイと飲んでいくつかおでんをもらう。

豆腐、たけのこ、糸こん。大根、紅しょうが天、どて焼き。

パクッとホフホフやると、この世で一番優しいだしが冷えた体にじわりと広がる。温かい液体が食道を通って胃袋に落ちていく道筋がくっきり分かる。ビニールで作られた壁はしっかり風を防いでくれて、おでんが温めてくれた体はそのままポカポカ。天国~。
やはり人気店なのだろう、開店から続々と暖簾がめくられ、20分ほどであっという間の満席。入店希望者が訪れる度にみんな少しずつ詰め合い、最終的に我々は店主の横ポジションまでにじり寄るような形に。
「行けるやろ、入り入り」「ごめんなぁ、詰めたって~」「ありがとうございます~」
出張中の東京人をもてなす浪速のサラリーマンや、SNSで見てきた若者など、客層がごった煮状態。みんな揃って空間とおでん鍋の素晴らしさに感動している。のぼる湯気の向こう、笑顔の人々を眺めつつ、だし割に切り替えた。

屋台ゆえ、本来お手洗は少し離れた別の店のものを借りるそうだが、すぐ横にチョコザップがあるのを見つける。わたしは会員なのでお手洗いはチョコザップのものを使用しようと店を離れた。
チョコザップの入口には先客がおり、後ろに並ぶ。ふと先客が顔を上げてこちらを見たら、なんと、1軒目に行った「八番」の店員さんだ。「あらー!」お互い顔を覚えていたようで、「さっきの!」「まあ!偶然ですね!」と言葉を交わす。「この辺りによく飲みに来るんですか?」と聞いてくださったので、得一が好きで巡っていること、今日はおでん屋台がてら、元・得一だと噂の八番に寄ったことを伝える。すると、やはり八番は元々得一だと教えてくれた。しかし店員さんは得一時代のことはあまりよく知らないそう。
あまり長く立ち話するのもご迷惑なので(というかわたしもお手洗いの我慢が限界値だったので)挨拶して別れた。
なんか、布施、来て良かったな、と心から思ったひとときだった。
屋台に戻りナオさんに顛末を話すと、菩薩みたいな笑顔で「すごいですねぇ」と返された。うんうん、このおでん空間、心が穏やかになるよね。
締めに、おでんだしを使ったかすうどんを注文する。大阪だねぇ。かすによる甘さとコクが加わったうどん、上に載ったとろろ昆布と食べるとたまらん美味しさ。堪能したなぁ。

気付くと、外に何組も入店待ちができている。(そして皆入店を待ちながらおでんを食べている)我々も失礼しようとお会計をして店を後にした。

素晴らしい場所だ、月に1回来たい、と帰り道はしゃぎ、終電までまねきねこでカラオケをして帰宅した。

今日のはじめて見た
この缶チューハイ。布施の自販機にて

いいなと思ったら応援しよう!
