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Shot Qualityという指標について

Shot Qualityとは何か?

バスケットボールを観ていたり、やっていたりすると、時には「今日は外す気がしない」といった日があれば、反対に「オープンなシュートは作れているのに…」といった日もあるでしょう。シュートは入る日もあれば外す日もあり、シュートの結果には選手のスキルだけでなく、ランダムな要因も影響します。Shot Qualityは、そのランダム性を取り除き、打っているシュートの質自体を評価しようとするものです。言い換えると、「シュートが入った確率」ではなく「打ってるシュートがいいシュートか」を評価しようと試みていると言えるでしょう。

近年のサッカーのデータ分析において、「xG」という指標が使われるようになってきています。xGは、expected Goal (ゴール期待値) の略であり、とあるシュートが成功する期待値を0~1の間で評価し、1に近いほどゴールの可能性が高いシュートであることを示します。算出に使われるデータは人によって違うとは思いますが、シュートの位置やディフェンダーの位置が代表的な例でしょう。

Shot Qualityが達成しようとしているものはこのxGと同じです。Seth Partnowによると、NBAで使われるShot Quality関連のメトリクスの代表例として、Second Spectrum(トラッキングデータを提供している企業)のメトリクスが挙げられるそうです。ただ、Bリーグで一般公開されているデータでは、トラッキングデータは手に入らなかったりと使用できるデータが少ないので、今回はシンプルなデータを用いて最善を尽くす努力をします。

シンプルなデータを用いたShot Qualityの指標の先行事例として、SravanによるSSQM(Simple Shot Quality Metric) v1.0というものがあり、今回はこちらのコンセプトと、Second Spectrumのコンセプトの2つを組み合わせるということをします。こちらのSSQMの記事を読むまでは、Shot Qualityの計算にはトラッキングデータデータが必須なのかと思っていましたが、Sravanはシュートの位置のみというシンプルなデータだけを用いて、トラッキングデータを使わずにShot Qualityの指標を作ることができていました。今回、Bリーグのデータを用いて似たようなことをやってみようと思えたのはSravanのおかげなので、改めて感謝をしたいと思います。Thank You!

各指標の概念と計算手法の説明

さて、ここからは実際の指標とその説明に入っていこうと思います。概要として、今回はコートを以下のように14のエリアに分け、各エリアの選手毎のeFG%とリーグ平均のeFG%の二つを見ていきます。使用したデータはB1 2023-24シーズンのデータになります。

今回採用したコートの分類の仕方
(色に特に意味はありません)
  • eFG% (Effective Field Goal Percentage) -おさらい
    eFG%は、通常のFG%とは違ってスリーポイントに3点分の重みをつけて評価をする指標です。以下の式で求められます。(右側のPTSはフリースローによる得点は含まれません)

  • qSQ (Quantified Shot Quality)
    コンセプトとしては、「平均的な選手」が同じシュートを打った時のeFG%の期待値です。Second Spectrumでは、シュートの位置をはじめ、シュート前の動作やドリブルの数、ディフェンダーのコンテストがあったか等のトラッキングデータを使用しているそうです。今回実際に使うデータはシュートの位置のみなので、各エリアからのリーグ平均のeFG%をqSQとします。xeFG%(eFG%の期待値)ということもできます。この値が高ければ高いほど期待値の高いシュートを打っていることになり、反対に低いほどタフなシュートを打っているといえるでしょう。

  • xPTS (Expected Points)
    xPTS(得点期待値)は、とありエリアからのショットアテンプトに、期待値(eFG%)を掛け合わせた結果です。シュート1本のxPTSは以下のように算出することができ、これを足し合わせることによって各選手のシーズンを通した得点期待値を算出します。

  • Points Added
    期待値(得点ベース)よりどれだけの得点を決めたかを量で見る指標です。選手毎に、シーズンを通して実際にとった得点から得点期待値を引くことで、期待値に対してどれだけ得点を上乗せしたかを測ります。

  • qSI (Quantified Shot Impact)
    qSIでは実際のeFG%の値から期待値(eFG%ベース)を引き、リーグ平均よりどれだけ効率が良いか(もしくは悪いか)を測る指標となります。単純な効率のみではなく、各シュートの難易度(リーグ平均)と比較することによって「ショットメイキング」や「決定力」の才能を測れる指標となりえます。

  • qSP (Quantified Shot Probability)
    予測をしていく際に、すべてのシュートを同等(リーグ平均)として扱っていくことは少々無理があるでしょう。小さなポイントガードがレイアップをアテンプトするのと、運動能力に長けた大きなウィングの選手がダンクをアテンプトするのでは、後者の方がは得点期待値が高いのは自然なことです。また、過去の確率をそのまま予測に使うことも少々無理があることでしょう。
    qSPのコンセプトとしては、「この選手がこのようなシュートを打ったら、どれくらいの期待値があるか?」という質問に答えるようなことです。ここでもSecond Spectrumはトラッキングデータを使って算出をしているようですが、今回はシュートの位置しか使えないので限界があります。今回は、Kostya Medvedovsky「Padding」というテクニックを使い、シーズンを通した確率に対してリーグ平均のシューティングポゼッションを「ある程度」足し合わせることによって、「安定化」させた値をqSPと今回はしたいと思います。(Paddingについてはいずれ別の記事で詳しく書きたいと思ってます)

このままデータの紹介に入るとすごく長くなりそうなので、今回は概念の説明のみとさせていただきます。次回、実際Bリーグでどの選手がShot Qualityが高いのか、またはどの選手がシュートの「決定力」があるのかを紹介していきたいと思います。また次回の記事を書いた際にはよろしくお願いします!

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