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RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる【書評】

医者というと「専門特化」している職業の一つだろう。この本では、知識の幅(レンジ)が大事であると述べられている。

チェス、ゴルフというような親切な世界では、早期に専門特化して、1万時間の法則などに代表されるように鍛錬を早期に開始することが有用だ。

しかし、現実のほとんどの場合は意地悪な世界だ。直面する課題は毎回異なり、何か行動をとった場合も適切なフィードバックは帰ってこないことが多い。

自分は皮膚科医として働いているが、似たような状況は起こるけど、全く同じ状態・背景の患者さんであることはありえない。

医療の世界は意地悪な世界なわけだ。

そのような状況の場合はどのように考えたらいいか。例えばドイツの天文学者のケプラーは星の運動に関する3つの法則、いわゆる「ケプラーの法則」を発見した

星の運動なんて、直接肉眼で観察した人はいない。しかも当時は天体が、不動の地球の周りを回っていると考えられていた。

ケプラーの前の時代に、コペルニクスが地球中心説(天動説)から太陽中心説(地動説)へと理論を革新させた。コペルニクスも、超アウェーな状況で、周りの人間が信じていることと真逆のことを唱えた。

その後コペルニクスの理論を信じた学者は火刑にあうなど、散々な目にあった。その状況でも、ケプラーは自分の頭で考えて、ケプラーの法則を明らかにした。しかも直接みたことなかったのに。

すげー勇気だ。

じゃあどう考えたのか。「アナロジー」だ。アナロジーとは、類推のこと。さまざまな事象間に共通点を見つけ出すこと。

アナロジーを使うには、色んなジャンルのことを広く知らなければいけない。

皮膚科でいうと以下の領域がある、全部は網羅してない

  • 皮膚悪性腫瘍

  • 乾癬などの炎症性角化症

  • アトピー性皮膚炎などの湿疹関連疾患

  • 水疱症

  • 外科

  • レーザー治療

  • 美容皮膚科

  • 皮膚病理

  • 蕁麻疹、痒疹

  • 血管炎

  • 熱傷などの物理的皮膚障害

  • 色素異常症

じゃあ、この全部の分野にまたがればいいのか。

個人的には、まだ幅(レンジ)の広さが足りないと思う。皮膚科も極めてないの分際で何言ってんのという意見はあるだろう。それこそ、専門特化の罠かなと思う。

個人的には訳のわからない分野までまたがって興味を持っていこうと考えている。他の分野では当たり前の知識、すでに古いとされた知識が医学(さらにニッチな皮膚科)の分野で新しく使えることになるかもしれない。

この本にも書いてあるが、実は過去に実績をあげた人物は、専門特化にスタートダッシュをした人ではなく、キャリアを紆余曲折した人が多い。

ユタ大学教授のアビー・グリフィンは画期的なイノベーションをした人たちを研究し、「シリアル・イノベーター」と名づけた。特徴は以下の通りだ。

不確実性への耐性
システム思考
隣接する分野についての技術的な知識
今入手できるものの使い道を変えて使う
類似の領域をうまく活用して、イノベーション・プロセスの材料となるものを見つける
バラバラの情報を新たなやり方で結びつける
さまざまな情報源からの情報をまとめる
複数のアイデアを次から次へ飛び回る
興味の幅が広い
他の技術についてより多く(また、より幅広く)読み、専門外のことに幅広く関心を持つ
複数の領域にまたがって、学ぶ必要を感じる
自分の領域以外の専門知識を持つ多様な人々と、コミュニケーションをとる必要を感じる

RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる P292

これらを意識して過ごしていこう。




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