膝OA〜治療のポイントは適切な負荷〜
今回の記事は↓↓↓の過去Tweetをまとめたものになります。
膝OAへの介入機会はかなり多いと思います。
治療のポイントが適切な負荷とはどういうことなのでしょうか。
基本的な部分も踏まえて確認していきましょう。
膝OAの本質
膝OAとはどのような状態なのでしょうか。
膝関節が変形している
だけなのでしょうか。
OAはOsteo Arthritisの頭文字を取ったものです。
osteo:骨
osteoは他の単語と複合して使うと“骨“という意味を持ちます。
例えば、僕らが関わる言葉だと
osteoporosis:骨粗鬆症
osteoblasts:骨芽細胞
osteoclast:破骨細胞
などが挙げられます。
arthritis:関節炎
ギリシャ語でarthroは関節、irisは炎症という意味であることが語源となっているそうです。
あれ?
変形という言葉が見当たりません。
ということは膝OAの病態の本質は変形ではなく、
骨で構成される関節の炎症
と考えることができます。
関節の変形の重症度を示すKellgren-Lawrence(K-L)分類についても確認しておきましょう。
grade 0:正常
grade 1:関節裂隙の狭小化はないが、骨棘や骨硬化がみられることがある。変形性関節症が疑われる状態。
grade 2:関節裂隙の狭小化(25%以下)がみられたり、骨棘ができ始めたりする。変形性関節症の初期状態。
grade 3:関節裂隙の狭小化が進行(50-75%)し、はっきりした骨棘や骨硬化がみられる。変形性関節症が進行している状態。
grade 4:関節裂隙の狭小化がさらに進行(75%以上)し、消失していることもある。大きな骨棘や顕著は変形がみられる。変形性関節症の末期状態。
ここまでを踏まえて変形の重症度と疼痛との関連について報告されているものをいくつか紹介します。
Kellgren-Lawrence分類(K-L分類)のgrade3以上での疼痛保有率は
男性:40%
女性:60%
であったことが報告されています(Murakiら 2009)。
K-L分類のgrade2〜4での疼痛保有率は47%、膝関節の痛みを有している者のうち15%でK-L分類のgrade2〜4であったことが報告されています(Hannan 2000)。
これらのことから
膝OAの本質は炎症である
変形の重症度は必ずしも疼痛の程度を反映しない
ということを念頭に介入していくべきであると言えます。
実際にK-L分類でgrade 1であっても強い痛みを有している方への介入を経験することもあります。
異常なメカニカルストレス
膝OAの主な病態は軟骨の代謝異常です。
軟骨の代謝異常は以下のような流れで関節の炎症に繋がっていきます。
異常なメカニカルストレス
↓
関節軟骨の繊維化
↓
関節軟骨の亀裂・びらん
↓
軟骨下骨の硬化・象牙化
↓
滑膜による軟骨細片の貪食
↓
滑膜の炎症
異常なメカニカルストレスにより関節軟骨が正常な状態を保てなくなる(代謝異常)ことで滑膜の炎症が生じ、痛みとして現れるということです。
この代謝異常の中で軟骨の増殖が起きると骨棘が形成されていきます。
ちなみにですが、
水(関節液)が溜まる
という状態もこのメカニズムの中で生じます。
滑膜の炎症
↓
関節液の過剰な分泌
↓
疼痛誘発物質の滞留
↓
炎症の増悪
↓
軟骨の代謝異常を助長
「水を抜くと癖になるんでしょ?」と言われることがありますが、このメカニズムを理解しておくと、そうではないことがわかります。
水を抜く≠癖になる
ではなく
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