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【読書】恐れのない組織

心理的安全性と言う言葉は何度も聞いていて、論文でも何度も目にしていました。

しかし本では読んだことがなかったので、提唱者の本を読んでみることにしました。

ちなみに心理的安全性というとGoogleの調査が有名らしく、それを初出と思っている方もいるようです。

しかし初出はハーバードのエイミー・エドモンドソン教授の論文で、1999年発表です。Googleの調査は2010年代半ば頃です。


心理的安全性とは

心理的安全性とは、誰もが気兼ねなく意見を言えて自分らしくいられる文化のことです。

これって言い換えるとサークル的な感じですよね。

一般的に職場という場所は、自分を押し殺してでも会社や顧客のために尽くすことが求められます。公的人格と私的人格があるという説も論文で読んだことがあります。

そして多くの職場において、上司や先輩、現場責任者に意見を言うことは難しく、説教されてしまう危険性もあります。

一般的に会社や上司の命令は絶対であり、それに従うのが社会人の常識です。

一方で失敗をすれば厳しく説教され、ときには始末書も書かされ、原因と再発防止策を書いて提出しなければいけないこともあります。

しかし心理的安全性がある職場では、上司や先輩、現場責任者に意見を言っても許されます。

失敗をしても責められることがありません。むしろ失敗から学ぼうという考えになります。

一見緩い職場に見えるかもしれません。会社じゃなくてサークルみたいだと思うかもしれません。

しかし協力し合いやすい雰囲気があるからこそ、チームとしてのパフォーマンスが上がるのです。

ちなみにちょっと違う観点から心理的安全性について考えた記事も書いています。心理的安全性は本当に必要なのか?と疑問に思ったら、読んでみてください。

働きやすい職場と働きづらい職場の違いが解った

私が「恐れのない組織」を読んだ感想は、「働きやすい職場と働きづらい職場の大きな違いの1つは心理的安全性だったんだ」ということです。

心理的安全性でこの2つの職場の違いが説明できます。

働きづらい職場には心理的安全性がない

私が働きづらいと感じた職場は例外なく、「上の言うことを黙って聞け」、「意見や希望を言うな」、「言われたことだけやってろ」という職場でした。

そしてミスをする度に厳しく説教されました。ある職場では、1つのミスにつき説教が1時間くらい続くのも日常茶飯事でした。ミスをする度に始末書を書かされる職場もありました。

こんなのパワハラじゃんと思いますが、これらの職場では社会人の常識とされていました。仕事は厳しいものであり、この厳しさに耐えられない人は甘えていると怒られたのです。

また上司はいつも不機嫌な顔をしてイライラしながら仕事をしていました。仕事中にモノをけ飛ばす人もいました。同僚が質問に行くとイライラしながら答えるなんてシーンも見ました。

マネジメントを仕事にしている私からすれば理解できないのですが、これが仕事ができる人のやり方でした。

またマイクロマネジメントも日常茶飯事でした。上司やプロジェクト責任者が考えるやり方・考える順序で、1時間など細かい単位で進捗報告をしないと怒られるプロジェクトもありました。

やり方ややる順序を細かく指示され、忠実に守らないと1時間くらいの説教をされることは日常茶飯事でした。とても息苦しかったです。

ちなみにマネジメントを長年やった今も、こういう職場の上司やプロジェクト責任者は間違っていると確信していますし、マイクロマネジメントは愚かだと考えています。

昭和の頃はこれが日常茶飯事だったかもしれませんが、職場によっては平成になってもこんなものだったのでしょう。令和になってもこんな職場があるかもしれませんが。

本当にこういう職場は嫌になることばかりでした。かといって同僚と話しても、「仕事なんてバカバカしいことばかりで真面目になったら負けだ」とか「そもそも働いたら負け」と言われました。

働きやすい職場は働きづらい職場と真逆だった

私は上記のような働きづらい職場に入ってしまったことが何度かありました。そういう職場ではケンカを何度もし、問題児扱いされ、最終的にはクビになりました。

しかし世の中には働きやすい職場もちゃんとありました。私は幸運にも働きやすい職場に入ることができました。

私が働きやすいと感じた職場では、自由に何でもやっていいという考えでした。案件だけ与えられて、後は自分で考えてやれというやり方だったのです。

もちろん不祥事とか事故、クレームにつながることはしてはいけませんよ。

細かい指示なんてくれませんし、細かい進捗報告も求められません。ミスをしても説教もされません。むしろ自分で考えて仕事を進められるよね?と。

さらには日常的に活発に議論することも普通でした。働きづらいと感じた職場では、愚痴ばかりで議論なんて見たことがありませんでした。黙って上の仕事に従ってさえいればいいという雰囲気でしたので。

働きやすい職場の方が売上も高く残業も少ない

自由な職場はとても働きやすいと感じます。世間の常識で言えば単なるいい加減な会社なのでしょうけど、だからと言って業績が悪いわけではありません。

自由で説教されない職場は、1人当たり売上も残業時間の少なさも、先ほどの上司の言うことが絶対で説教の多い職場より全然上でした。

それこそ1人当たり売上は2倍くらい普通ですし、残業時間も1/4くらいしかありませんでした。会社によっては毎日定時帰りです。19時で最終退出が珍しくない会社もありました。

働きづらい職場では、残業が80時間くらいザラでした。それでも残業80時間なんて甘えているとか、200~300時間くらいしてこそ本物だと説教されました。

中には毎月サービス残業が100時間あって、月曜日は1/3の人が体調不良で休む職場もありました。

厳しい環境で長時間頑張っている方が、ストレスは大きいし売上も少ないのです。

しかし自由で縛り付けも命令も説教もない職場では、1人当たり売上も高く残業も少ないのです。実に不思議ですよね?

この理由が心理的安全性でスッキリしました。

ちなみに最近は、説教されない職場や残業が少ない職場では成長できないと考える若者が多いというニュースがありました。

これと同時に管理職は説教なしで育てられないと悩み、ベテラン社会人は説教も残業もないなんて、最近の若者は成長機会がなくて可哀そうだと思っているそうです。

心理的安全性を学ぶと、これがとんだ大間違いであり、古臭い考え方だと解ります。

心理的安全性が高い職場は生産性や意識が高い

働きづらい職場は心理的安全性がなく、上司が部下を脅して言うことを聞かせているのです。だから部下は言われたことしかやらなくなりますし、上司の機嫌をうかがって、無難に切り抜けようとします。

一方で働きやすい職場は心理的安全性があります。上司は部下をサポートし、信じて任せてくれます。

部下は意見や希望を言っても許されます。説教されません。むしろ言わない人は存在価値がないとみなされるくらいです。

だから仕事の進め方に関する建設的な議論も日常的に行われます。その結果、残業しなくてもちゃんと成果を出せるようになります。

あなただったらどちらの職場がいいですか?

片方は上司の命令が絶対で、意見や希望も言えなくて、説教も多くて、残業も多い職場です。

もう片方は上司は命令よりサポートで、意見や希望も言えて、説教もなくて、残業が少ない職場です。

働きやすさやモチベーションは言うまでもなく違いますよね?そして従業員が活発に議論しながら仕事を進めるようになれば、生産性も高くなりますよね?

私自身が複数の職場を経験し、更には働きづらい職場と働きやすい職場を経験したことで、心理的安全性の効果に実体験として納得できました。

また働きやすい職場と働きづらい職場の違いを心理的安全性で説明できるんだと感じました。

ちなみに心理的安全性についてもっと詳しく、私の実体験も含めて記事を書いています。心理的安全性についてもっと知りたい方は読んでみてください。

終わりに

心理的安全性という概念は1999年に出ていたそうです。そしてGoogleが2010年代半ばに調査結果を発表して有名になったそうです。

Googleくらい先進的な会社でも、つい10年前まで一部のチームでしか心理的安全性を実現できていなかったということですね。

そういえば私が心理的安全性と言う言葉を始めて聞いたのは、今の会社の面接でした。

「マネジメントをするときに心掛けていることは?」と聞かれて答えたら、「そういうのを心理的安全性って言うんですよ」と言われました。

心理的安全性は20世紀的なマネジメントと対照的です。そしてみんなが気持ちよく仕事する上で重要です。大事にしていきましょう。

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