見出し画像

【論文読了】リーダーの意思決定

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年11月号はリーダーの意思決定でした。

私自身、長年に渡りマネジメントに携わってきた経験から、意思決定こそリーダーにとって難しいことであり、重要なことであると実感しています。

この号では意思決定について昨今の事情に合わせた論文が掲載されています。


痛みを伴う決断を下すことこそ、リーダーの仕事である

まずは元ソニーCEOへのインタビューでした。

いかに正しい人間であるかという話に好感を持てました。世の中は仕事の世界においては人間性は軽視され、いかに優秀であるかが重要視されるからです。

私はマネジメントに携わる関係上、人間関係にはとても気を使っています。でも人の協力を得るためにとても役立つのです。

いかにスキルが高いかは重要ですが、それで驕り高ぶってしまっては、嫌なヤツになってしまい、協力してもらえません。表向きは従ってくれるでしょうけど、言われた最低限のことしかしなくなるでしょう。

それから異論の大切さも解説されていました。

上の言うことを黙って聞けという職場を私はいくつか経験していますし、社会人として当たり前のことでしょう。

しかし心理的安全性を実現し、何かあったらリーダーが代わりに顧客や関係者に謝ったり、一緒に解決方法を考えてくれたりした方が、メンバーも意見を出しやすいです。

ちなみに心理的安全性については詳細な記事を書いていますので、読んでみてください。

平井氏は音楽→エンターテインメントと異動していったようで、未経験からチャレンジする機会があったようです。

これが逆に自分は実力も実績もあるというおごりを作らないことにつながったようです。

更には若い頃に肩書で仕事をしない上司に出会ったことが、平井氏の価値観に大きく影響を与えたそうです。

この人はいいな、凄いなという人に出会えると、大きな学びがありますよね。尊敬できる上司や先輩は少ないかもしれませんが、その少ない上司や先輩との出会いが大事ですね。

戦略的意思決定に欠かせない質問力を高める

リーダーの重要な仕事は答えを示すことから質問することに変わるという論文です。

AI時代になって、AIを活用するために質問力が重要になったのもあるようです。

この論文では質問スタイルについて解説があり、スコアを付けられるようになっています。

質問の種類は次の5つです。

  • 調査のための質問(何が解っているか?)

  • 推測に基づく質問(もしかして?)

  • 結果を出すための質問(次はどうするか?)

  • 解釈のための質問(つまり何か?)

  • 主観についての質問(口に出せないことは何か?)

これらについてそれぞれ25点満点で付けられるようになっています。私の場合は次のようになりました。

  • 調査のための質問:13点

  • 推測に基づく質問:19点

  • 結果を出すための質問:9点

  • 解釈のための質問:16点

  • 主観についての質問:9点

私はやってみないと解らないけどやったことがない人が多いことをよくやってきました。それゆえ仮説検証型アプローチなどをよく使ってきました。

それが推測に基づく質問や解釈に基づく質問の点数につながっているのでしょう。

一方で結果を出すための質問や主観についての質問は点数が低いです。次のステップはどうするか?とか本音や不安、解釈や関係者の意見などに関する質問ですね。

これらを意識しないと鍛えられないですし、気付かない観点になってしまいそうですね。

データドリブンな意思決定はどこで道を間違うか

データで判断する際の注意点について書かれた論文です。

たとえば成長市場の事業で広告を打って来客が増えたとします。この場合、広告の効果なのか、市場の成長による効果なのかが解りません。

それなのに広告は効果があったと判断してしまうケースがあるのです。

因果関係と相関関係という言葉がデータサイエンスでよく言われます。ビールとおむつが一緒に売れることが多いという話は相関関係です。

ちなみにAIは相関関係だけで判断しており、因果関係は考慮されていません。

他にもサンプル数による結果のばらつき、測定基準などの話も出てきます。

私も見積で使うのですが、サンプル数が多い方がばらつきは小さくなります。

この論文では心理的安全性を確保してみんなが意見を出せるようにすることで、集合知を活かしなさいという話が出てきます。

データの見方によって、適切な気付きも間違った気付きも得られます。そう考えると、間違った見方をしていないか気付く方法に、人に聞くという方法がありますね。

それからFacebookの実験の話も紹介されています。広告が感情に与える影響を無断で行ったという話です。それはまずいんじゃないか?と止める人がいなかったんですね。

グレーゾーンなことをするときこそ、独断だと危険です。複数人で相談して、安全策を検討した方がよいです。

ベンチャーキャピタルに学ぶ意思決定の手法

ベンチャーキャピタルと一般企業の意思決定の違いを解説した論文です。

一般企業の意思決定のやり方は、よく言われるように合意です。時間をかけて根回しをして、関係者全員の合意を取って初めて、実行に移すことができます。

これはビジネス書やビジネス誌でよく言われていますよね。

一方でベンチャーキャピタルの意思決定のやり方は、合意ではないそうです。

全員の合意がなくとも、有望だと判断する人がいて(1人の組織さえあります!)、その人が有望な理由をしっかり説明できればいいのです。

野球に例えるなら、一般企業はヒットを積み重ね、ベンチャーキャピタルは三振を繰り返してでもホームランを打とうとするのです。

ベンチャーキャピタルの場合、ホームランが大きいのです。投資先が上場あるいは大企業への売却をすれば、莫大な収益を得られます。

こう考えると、期待値ベースで計算したら、ヒットを積み重ねるよりホームランを打った方が高くなるのかもしれませんね。

ただしこういう例が10社に1社など極めて少ないのです。投資の専門家がよく検討してもこれほど外れるので、三振しまくってでもホームランを打っていることになるのですね。

一方で一般企業ではベンチャーキャピタルほど大きなホームランにはならないです。イノベーティブな製品ができない限りは。

となると一般企業ではイノベーションのためにベンチャーキャピタルの意思決定方法を使えとなるわけですね。

意思決定の秘訣

最後はドラッカーの論文です。書かれたのが1967年とは思えないくらいで、今でも通用する内容です。

個人的には問題の本質を見極めるとか、意思決定は実行してこそ、目的を満たすことというところに説得力を感じます。仕事でも使える考え方です。

それから「何が受け入れられやすいか?」ところからスタートせず、「何が正しいか?」という所からスタートしろという話も出てきます。

「何が受け入れられやすいか?」はやってしまいがちなのではないでしょうか?でもそれで何が解決するの?と思います。

私は仕事柄、「どうあるべきか?」と考えることが多いです。これも「何が正しいか?」に近い質問ですね。

そして最後は自分の目で現場を見ろです。確認しないと、適切な意思決定だったのかどうかが解りませんね。

終わりに

私自身、長年に渡りマネジメントをやってみて、意思決定こそが難しいことを実感しています。

そして今回は決めることだけでなく、質問することやデータから判断すること、ベンチャーキャピタルの手法などなどバラエティに富んでいました。

単に決めることの訓練をするだけでなく、様々な手法を学んでみることも、意思決定の幅や質を高めるのに役立ちそうですね。

個人的にはベンチャーキャピタルの意思決定の手法を株に応用したいところです。

いいなと思ったら応援しよう!