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デジタルディスラプションに対する既存企業の戦略

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2022年4月号はデジタルディスラプションに立ち向かう成熟企業の競争戦略というテーマでした。

イメージと違うこともあったり、新興企業が絶対的優位ではなく既存企業にもできることがあったりします。

転職や企業によって新興企業側になることも可能ですが、多くの人は既存企業側、少なくない人が成熟企業に所属していると思います。しかし新興企業に駆逐されるとは限らないのです。

それでは振り返ってみましょう。

既存企業と新興企業の実際

新興企業で既存大企業に並んだのはごく少数

昨今はIT系を中心とした新興企業が圧倒的存在感を示しています。しかし1995年には存在しなかった会社でフォーチュン500に載っている会社は17社しかないそうです。

つまりGAFAMやウーバー、テスラなどの一部の超有名新興企業が目立っているために、新興企業が圧倒的存在感を持ち、既存企業を脅かしているというイメージが出来上がっているのです。

言い換えると既存企業は上手く適合しているのです。ただしM&Aで1995年より後にフォーチュン500から退場した会社は256社もいるそうです。まぁM&Aはものすごく増えているので納得の数字ですね。

既存企業ならではの戦略がある

新興企業が行う破壊やイノベーションは既存企業にとって脅威です。しかし既存企業には新興企業にはないものがあります。

ブランド力や顧客、リーチ(アプローチ可能な地域や顧客層)の広さです。新興企業はイノベーションあるいは既存企業との提携などによってこういうものを獲得しなければなりません。しかし既存企業は既に持っているのです。そしてこれらが参入障壁や移動障壁となります。

既存企業だから持っているものを活かす

複雑性

既存企業には既存顧客がいます。その既存顧客のセグメントを分類し直した事例が紹介されています。

ユニリーバのインド法人の事例なのですが、インドは広く人口も多いので、一枚岩ではなくもっと多様なのではないか?と考え、より細かくセグメントを定義し直しています。

こういった複雑性に着目して改革を敢行してみるのも一つの手です。

長期的な視座

長期的な視座を維持することも指摘されています。業界がどうなっていくか考え、長期的な視点で対応していくというものです。

流行り廃りや好不況、大きな変化はあります。しかし長期的に自社が取り組むこと、そして活かせる顧客やブランド価値などの資産を活かすことですね。

関係性の活用

また既存企業には既に関係を築けている顧客やサプライヤー、投資家などがいます。

ステークホルダーとニーズの変化やペインポイントについて話し合い、供給主導型から需要主導型に切り替えた事例が紹介されています。自社の製品・サービス自体を顧客のニーズやペインポイントから定義し直すわけですね。

限られた情報で行動を起こす

たまに聞くのですが、起業家などは情報が十分に集まってなくてもまず行動を起こすけど、安定企業に勤めている会社員は情報を十分に集めてから行動を起こすという話があります。

これは人の性格によってもありますね。また職種によっても違います。

情報収集に時間をかけ過ぎては遅いですし、情報量が少ないのに行動を起こして失敗しても問題です。

そこで公的データに加えて私的データを使うことで情報量を増やします。公的データとは政府や自治体が公開しているデータ、私的データとは自社が集めたデータです。これを読んで自社が集めたデータなんて普通じゃんと思ってしまいました。

しかし私的データを使うだけではなく、情報を集めすぎてから行動するという行動の遅さも変えなければいけません。少なすぎないか、集めすぎではないかという匙加減を把握する必要がありますね。判断基準が経験則に依存しそうです。

価値観を持ってチャンスを取りに行く

2022年4月号ではコマツのCEOへのインタビューがありました。

コマツといえばクラウドが登場する前の2001年からKomtraxというシステムを開発してきました。Komtraxの詳細はIoT関連の書籍に譲ります。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューでも過去に登場したと記憶しています。

コマツにはコマツウェイという価値観があり、これによって危機をチャンスに変える力があるとのことです。戦略の方向性としては差別化であり、そのためにTQM(総合的品質管理)だそうです。

こういう土台部分を作り込んでいきたいものですが、それは新しく会社を作る場合ですね。既存企業だったら、どこかで刷新とか変革という形でパーパスを定義して価値観を作り込んでいくとなるのかなと思います。

成熟多事業企業の戦略

2022年4月号ではNECのCEOへのインタビューがありました。

巨大で多くの事業を持つNECでは、かつて自部門の利益を出すために他部門に費用を移動させただけということが起きていたそうです。

こういう規模ではサイロ化のような自部門の都合で考える習慣もつきそうです。事業を語る言葉が事業部ごとに違うということもあったそうです。

2011年にNECは1万人のリストラを行いました。こういう巨大組織で業績が厳しい状態になると、どう対処すればよいか難しいですね。

選択肢としては注力する事業を決めるということです。GEもかつてジェフリー・イメルト氏の代になって大きな事業再編をしましたね。NECではコア、準コア、オフ・ザ・シェルフの3つに分けているそうです。

各事業が3つのどれになるかはよく議論しないといけませんが、振り分けさえすれば明確ですね。これが2種類だととても迷うと思います。

強みであるコアな技術は残すし、持ってないなら買収する。準コアは提携などを通して活用する。

この分け方だとオフ・ザ・シェルフの事業は手放すことになります。残念ながらきれいごとではなく手放す事業も必要なのです。

終わりに

一番驚いたのはやっぱりトップ企業に新興企業が意外にも少ないことですね。既存企業は強みを活かして上手く対応しているのです。そして新興企業と既存企業はそれぞれ持っている強みや資産が違うのです。

そしてコマツとNECのインタビューが、既存企業が持つ強みや資産の活用法を示しています。上手く流れができている特集でした。

世の中はドンドン変化して、ドンドン新しい技術や流行が出てきます。その変化にどう対応するか?が2022年月号では示唆されていますね。上手く変化に対応していきましょう。

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