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日本語教師日記85.ハロウィーン間近なので子供生徒ちゃんとー(2)お姉ちゃん編

姉弟のレッスンは、弟くん最初でお姉ちゃんが次です。

ハロウィーンの近づいていたこの日、
お姉ちゃんに新しいジャムボードのページを開いて画面共有してもらいました。

これから怖い話をしたいと思うのですが、あなたがしますか? 私がしますか?

と尋ねたら、私のを聞きたいと言いました。


お姉ちゃんには、忘れていたとしても、聞けば思い出す言葉のストックがありまして、それがなかなかすごいのです。
たくさん会話をしながら、それを引っ張り出していきたいと思っています。

レッスンでは会話のフローを大切にしたいので、
とにかく一つのお話をすら〜っと語り下ろすことにしました。

ときには英語を交えますがこれは、流れを中断したくないからなので、
大切な言葉はその場で止まって導入します。

では、ホラーストーリーの古典、「猿の手」の始まりです。

私:Nちゃん、「猿」はわかるよね?

Nちゃん:わかる! わたし今、さるにセーター編んでます。

私:ビーニードールの? パスポートのついたあれ?

Nちゃん:そうそう。パスポートじゃなくて、タグです。
持って来て見せてもいいですか?

私:はい、ぜひ見せてください。

(Nちゃん中座し、ビーニードールの猿を持ってきて、
彼の情報を読んでくれまして、それからお話が始まりました)


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【可愛いからって油断するな!】

「では、始めます。

そんなに昔じゃないんだけど、100年ぐらい前かな。
イギリスにお父さんとお母さんと男の子が住んでいました。
男の子と言ったけど、もう大きくて、工場で働いていました。
Nちゃんは工場ってわかる?」

ーーわかります。factory?

「そうです。ある日、お父さんの友達が遊びに来ました。その人はずっとインドに住んでいて、いろいろ面白いお土産を持って来てくれました。
その中に、気持ちの悪いものがあったの。
それは、猿の手のミイラでした。ミイラはわからないでしょう?」

ーーわかりません。

「なんと言ったらいいのかな。エジプトのピラミッドの中にあって、バンデージでぐるぐる巻いてあって・・」

ーーああ〜、mummy?!

「そうそれです。その中に、猿の手のミイラがあったの。
それは、お友達の人が、インドの魔法使いからもらったの。
魔法使い、わかる?」

ーーわかります、wizard?

「そうです、でも一応ジャムボードに入れてください」

ーー漢字は? これでいいですか?

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「はい、それです。でね、その魔法使いが言ったんですって。

これは、願いを叶える手だ。願いは3つまで出来る。
願いがあるときは、指を一本折って、願いをすればいい。
でも、願いをするときはよく気をつけなさい。
願いにはいつも、pay backがついてくるからって。

魔法使いは、『できれば、猿の手は使わない方がいい』って言ったそうです。
でもお父さんはお友達に、その猿の手をくださいと頼みました。
お友達は、『いいの? だいじょうぶ?本当に気をつけろよ』
と言いながら、猿の手をくれました。

その晩、3人は猿の手を見ながら、どうしようか、別に望みはないしねぇ、
って話していました。
お母さんはお父さんに、そんなの怖いからやめてよって言ったのですが、
お父さんは、

『いいじゃないか、どうせ嘘かもしれないし。
どうでもいい願いを言ってみようよ。
そうだ、house morgage (住宅ローン)が、あと200ポンドだけ残ってるから、それを猿の手に払ってもらおう』

そう言って、猿の指を一本折りながら、
『住宅ローンの返済の200ポンドを私たちにください』と言いました。

次の日、息子さんが工場の事故で死んでしまいました。
機械の中に落ちて、息子さんの体はぐちゃぐちゃになってしまいました。

工場の人たちはお父さんとお母さんに、
『息子さんはinsurance(保険)がなかったので、何も出ません。
でも お気の毒なので、みんなで少しずつお金を出しました。

ちょっとですけど、これをどうぞ』

・・・・・・それがちょうど200ポンド・・・・

ーーこわ〜い・・

「でしょう? お母さんはもう、泣いて泣いて、ずーっと泣いていました。
それで夜になって、お母さんが、
『猿の手を使って、むすこを家に返すように願いを言って』
と言いました。

お父さんは息子さんの体を見ていたので、
『いやいやいや、それはどうかな、それはやめよう』
と言いましたが、お母さんがあんまり泣いて頼むので、
仕方なく、そうしました。

その夜遅くのことです。
家の外に、なんだか・・・・濡れたような、重い音が聞こえました。
音は少しずつ近づいてきて、それから・・濡れたようなノックの音がしました。

お父さんとお母さんはびっくりして動けなくなりました。
それから、ドアの鍵が・・・・内側で、ぎぎ〜・・・・と、回りました。

お父さんが猿の手をさっと掴んで、最後の1本の指を折って、
『息子をお墓に返してください!』と言いました。

すると、鍵は回るのをやめて、外は静かになりました。
お父さんがドアを開けると、ドアの外の地面は、濡れていました・・・」

ーーひ〜・・

「どうでしたか? 怖かった?」

ーー怖かった・・・

「じゃあ、お父さんとお母さんに話してあげてね」

ーーはーい。


来週は、ジャムボードを見ながら、同じ話をしてもらうことになっています。

どのぐらい覚えているでしょうか。楽しみです。

昨日もお話しましたが、二人にとって、
多少わからない表現やフレーズがあっても、母語に近い日本語ですので、
ギャップは脳が自然に埋めているようで、
知らない言葉も理解の妨げになっていないのがわかります。

姉弟がアメリカに移住してから11年目が過ぎようとしています。
これだけ日本語を保てていると言うことは、昔と違って日本の文物が、ネットを通して大量に行っていることと、何にも増して、お母さんが一人で奮闘して、たくさん日本語を話してあげているからだと思っています。

読み書きはこれからの課題ですが、それは短いレッスンで無理に押し込むことができない部分です。将来的に、自分のモチベーションができて、もっと日本語を読みたいとなったときに、まだ私が教えていたなら、そこらへんも相談に乗りたいと思っています。


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ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca
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