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日本語教師日記132. ことわざと国民性:「一難去ってまた一難」

ある生徒さんが、とても緊張する会議に出席するのでしばらく心配していて、
敬語の復習などを依頼されていました。

今日のレッスンで、
「やっと終わりました。本当に緊張しました。お世話になりました」
と言いましたので、

じゃあまあ、あとはゆっくり休んで、
あとはのんびり、日本語の宿題にでも取り組んでください。

と言いました。すると彼女は、

「いえいえ、来週にはもっと緊張するプレゼンがあるんです。
先生、助けてください」

私は急に、昔読んだ HOBIT(ホビット:ロード・オブ・ザ・リングの前日談)のある章のタイトルを思い出しました。
そして、いつものようにひけらかしました。

ほうほう、Out of the frying pan into the fire、ですね?

主人公ビルボが、命からがら、危険から脱出した途端、今度はそれよりもっと絶望的な状況に至るという章です。

まさしく、
「熱ッ!死ぬ! たまらん!」

というので、フライパンから飛び出したら、そこは火の中だった、
というわけです。
ことわざも、うまいことを言いますね。

生徒は、

「先生、日本のことわざで、同じものがありますか?」

と訊いてきました。これはよくあることです。

えっ? あるかな?
う〜んとう〜んとね・・・あれかな?

早速Google Docsに入力しました。

「一難去って また一難」

はい、読んで。

「え、はい、え〜・・ひとなん・・・きょって、またひとなん?」

惜しい!
いや全然惜しくないです。
これはえ〜・・やらしい湯桶読みですな。この前やったやつね。
いちなん・さって・また・いちなん、です。
意味は?

「はい、わかります」

この人は日本語だけで仕事ができる人なので、
読めない熟語もだいたい、漢字から類推できます。

「・・わかります。一つの困難があって、終わったのに、次の困難が来た、
というような意味でしょうか」

ビンゴです。お利口ですね。

そう言って私、ふと思いつきました。
思いつきで話が脱線していくのはいつものことで、生徒よごめんなさい。

ねえMさん、面白いと思いませんか?
英語圏の人は、大変な事態になると自分から飛び出して行って、
もっと大変な場所へ行くのかな?
積極的というか、アグレッシブ?
そこ行くと、この諺が生まれた日本て・・日本人て、
自分がいるところへ、困難の方がやってきて、
困難の方から、去ってくれるのを待っている感じがしません?
で、あ〜、去ってくれた、良かったぁ、と思っていると、
すぐにまた次の困難が自分のところへ「やってくる」というか・・・

「あ、本当ですね! なるほど〜。国民性が出ていますね」

まあ、フライパンの中で焼かれちゃったら、消極的な日本人でも
それは、火の中にだって、飛び降りるでしょうけどね。

「先生、似ていたり、同じ意味のあることわざを、
    日本のと外国のと比べたら、面白そうですね!」

そうね。でもMさんは今それどころではないので、
プレゼンが終わったらちょっとやってみましょうかな。

「あ、そうでした😓」


外国のことわざや 言い回しは、私の場合、聞いてすぐわかるのと、そうでないのとあります。

これは諺ではありませんが、こんなことを聞いたことがあります。

僕は「1枚目のパンケーキ」だった。

ピンときましたか?

私はたまたまですが、夫に教わって、彼のおふくろの味であるところのパンケーキを昔はよく作っていたので、面白い! と思いました。

パンケーキって、薄く焼きますけれども、なんかフライパンにバターが馴染むまで、ひっつきやすいです。久しぶりにパンケーキをやることにして、その一枚目が「あ〜あ・・・」というような、ひっついたり、焦げ付いたり、半分ぐらいフライパンから剥がれなかったり、ということがよくあります。(上手な人はその限りではありませんが)

はい、この「1枚目のパンケーキ」って、「出来の悪い長子」という意味なんだそうです。ひどいですよね。これ言われたら傷付きます。

独身で、どんどん歳をとっていっていた頃ですが、
なぜか新婚カップルの生徒/友達がいまして、よく遊んでくれました。
私、寂しそうだったのかな?
年齢が同じぐらいだったのと、波長があったのでしょうが、そういうカップルが三組ぐらいいて、温泉とかスキーとか、海外までも三人組でいくということがしばらく続きました。一番遊びまわっていた時代です。

あるとき、二人に車でどこかへ連れて行ってもらっていて、

「こういう私を、《おじゃま虫》と日本語で言うのですが、
英語圏ではなんというの?」

と、自虐的な質問をしました。

旦那の方が教えてくれました。

「それはねtamadoca, third wheel と言うんだよ」

んん?  三つ目の車輪? 自転車に乗れない子供の補助輪のこと?

「違う違う🤣   車輪二つで走っていけるのに、なぜかくっついている三つ目の車輪ということだよ」

うわぁ。他にある?

「あるよ! グーズベリーとも言うよ!」

なんだそれは。

グーズベリーという植物が、実が二つ、一つの根本(ではないのか・・)でくっついてぶら下がって実るのですが、ちょっと間になぜか、三つ目の実も、あるのだそうです。

なにそれ、よくわからないけど失礼な〜・・!

で、山中湖のペンションについてから、旦那が絵を描いてくれました。
まさに、私でした。

前述のMさんは、英語はネイティブな実ですが、母語はボスニア語です。

おじゃま虫は、ボスニア語ではなんというのでしょうか。
来週、訊いてみたいと思います。


トップ写真はグーズベリーです。
検索して、初めて実際に見ました。


そして下の写真は、そういうことを言われるようになったのがよくわかる、一つで成っている実が、ちょっと寂しそうなグーズベリーです。

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