見出し画像

【マンガ紹介 #10】めんつゆひとり飯【小ネタバレ】

めんつゆ一本でOK!でもやっぱ色んな物食べたいからほんのり努力します!ということで料理が上手な同僚を脳内に飼う物語。


作品データ

巻数:7巻(連載中)
作者:瀬戸口みづき (著)

あらすじと1話

「十越さんってお料理すっごい上手って聞きました~!」の一方で
「面堂もちゃんと自炊しているのか?」
平凡な会社のとある廊下。料理は最高のコミュニケーションツール。
「自炊はしてる、ちゃんとはしていない」「新手のなぞかけか?」
「ほとんどめんつゆしか使わないの!」
その日からか、劣等感なのか何なのかは知らないが、面堂は料理をする際に彼女が作り出した十越さんと料理することに。
昼間に言ってた肉じゃがを自分も作ろうと試みたので、牛筋と玉ねぎと人参とインゲンを簡単に炒めて少し経った後にめんつゆと水を投入。最後に「凍ったままの冷凍ポテト」を入れる。このやり取りの全てに脳内の十越さんがツッコミを入れる。
後日、そのことを別の同僚に話すと「心に十越さんがいるところから
言及した方がいいのでは」と言われるが回答として
「たぶん背徳感それ込みでおいしい、横着めんつゆ料理!」
こういう具合に様々な料理を作りつつ、料理の価値観が刷り合わさって日毎に料理が上手くなってくる面堂さん!という物語ではなく、絶妙なアレンジ方法がポンッと思い浮かび、面白いやり取りをする物語。

惹かれた点

瀬戸口みづき先生は様々な4コマ漫画を書き上げており、こちらも連載中の作品(この作品以外に、もう1作品ある)。絵柄とか~トピックとか~と言った具合に判り易い点も上げやすいが、何よりもドライヒューマーと日常性のミックスと見せかけて、凄くキッチリとしたキャラクター性を維持するギャグマンガを良く書き上げる。また4コマギャグマンガでありながら、幾度と複数の4コマ以上の笑い話を作っている。
そして本作品はそれを「料理」というモチーフを通してより視覚的に落とし込みつつ読者層に「どんなカオスが出来ているのか」を想像させやすい点がかなり特徴的。後の方の巻になるが「たらこ焼き蕎麦」とかいう、灰色にピンク色の粒が入った料理を見せる。
そして本作品も例に漏れず、たくさんのキャラクターを自然と出すことに長けており、2巻では料理好きで豆な御父さんと家に着くと全エネルギーを使い果たしゆったりの権化になる御母さんの幸せな家庭と、姉としての尊厳を拗らせ過ぎた面堂草子。そして3巻にはポン酢の使い手こと本酢さん。全員ポッと出ではあるが強い個性を持っていて、漫画だからこそ他キャラクターと全力でぶつかりあうことに異論が無く、皆それぞれ印象的な料理やイメージを残す。
特に御父さんと御母さんの真珠婚(30周年)でじっくり煮込んだ煮卵の件は、昨今の作品では見られない強かな夫婦関係を凄くイメージしやすい形で落とし込んでおり、思わずソロ主義である自分の考えを見直したくなる程。
これら全てを抜きにしても実際に紹介される料理は美味しそうだし、面堂さんのヘンテコ閃きも足蹴にできないライフハックだったりする。

これ百合漫画じゃね?(ネタバレ付きコメント)

話数が進むごとにキャラクターが増えたり、主人公の面堂さんまたは十越さんのいずれかが料理するとは限らないが、確実に互いに意識し始める。いつでも料理のことを話し、的確な言葉遣いとアドバイスをしてくれる十越さんとのらりくらりで最終的にめんつゆで何とかしちゃう面堂さん。
ただ二人のやり取りが進化し、だからと言って深く傷つけることも無く、ボケとツッコミのような簡単なレッテル付けも出来ない、とても愉快に会話を弾ませている。
次第には十越さん自身も面堂さんを心に飼うようになり、稀に若干の罪悪感を覚えつつも密かに対抗心を燃やしている十越さんは、溺愛している旦那さんやスーパーシスコンな弟さんのフィルターを抜きにしても可愛い。ということを真正面に受け止めているのが面堂さんだったりする。
そんな十越さんも、実は面堂さんの心の中だけでなく、様々な場所で面堂さんの罪悪感を優に超えて色々と料理のひと手間を加えさせ、何だかんだで十越さんと共に料理の閃きへと到達し、美味しい料理へとありつける。
実は互いに日常へと浸透させている。これを恋心や「あなたのことを考えると眠れないの」といったロマンチックな言葉を出すことは無くとも、二人はかなり深い精神的繋がりを有しているし、強かな友人関係を楽しんでいる。
こーんな高尚な関係性の考察ではなくとも、二人が偶然公園で鉢合わせた時や一緒にプール行った時もそうだし、社員慰安旅行として海へ出かけた時もそう。お互いに気遣いし尊敬している点も伺える。

最後に

実際に料理人や一人暮らしでなくとも楽しく読むことが可能だし、上記にも書いた通り瀬戸口先生はしっかりとしたキャラクターで誇張抜きのありきたりな日常を描き上げる天才でもある。
強いて言うなら十越さんの水着シーンがやたらとエッチだな~と思う場面はあったが、それ以外を除いてどこでも読めて誰にでも紹介できる漫画である。
ドラマ版の存在は、この記事を書き上げた時に初めて知った存在だが、CMやNG集版を見ただけだが、かなり作品の雰囲気を保っており且つ類まれな演技力から察するにギャグドラマとして完成度が高いことが伺える。それと十越さん役と面堂さん役の俳優さんがバチバチに仲が良くって「女性二人のプライベート」を見てる感があって、この数年味わえていなかった特A級の背徳感がえぐかった。
ドラマにせよ漫画にせよ、是非この作品を手に取って読んでみて欲しい。
ここまで読んで頂きありがとうございます。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?