”ショック・ドクトリン”~あまりにもショックな手法を知る意義
この手法が何かということを知ることでニュースの見方が変わってきます。その手法とは”ショック・ドクトリン”です。
NHK番組である『100分de名著』にて「ショック・ドクトリン」を取り扱ってくれたため、初めて私はこの手法について知ることができました。
カナダ人ジャーナリストのナオミ・クラインさんが書いた「ショック・ドクトリン」を、指南役であるジャーナリストの堤未果さんが分かりやすく解説、さらに、タレントの伊集院光さんが私たち目線でコメントしてくれる回でしたので、とっても分かりやすく「ショック・ドクトリン」について知ることができました。
ところが・・・前もってお伝えしますが、この「ショック・ドクトリン」という手法を知れば知るほど、とっても暗い気分になるのです。
なぜなら「ショック・ドクトリン」の内容自体、捉え方次第では「えっ、陰謀説を唱えている話?」と勘違いされる方もいらっしゃるのではないかと思うほどのものなのです。”ディープステート”といった陰謀論的に似たような話があったり、AIが作ったフェイクニュースかと思うくらいの衝撃的な内容があったりと・・・
さらに、当番組での伊集院さんコメント、さらに番組プロデューサーのコメントからも、「ショック・ドクトリン」があまりにも”ショック”を受ける内容だということが分かると思いますので、それらのコメントもご紹介しますが、ホント、”暗くなります”よ。
でも「ショック・ドクトリン」という手法を知っておけば、私たちがいざ”ショック”を受けたときに、私たちにとって必要な選択をすることができるのではと思っております。
私たちにとって身近な話題やニュースにもショック・ドクトリンが潜んでいる可能性が高いかもしれません。
私たちがいま現在、どのような社会で生きているのかを理解しながら、実は裏側ではこのようなことが起こっていることを見抜き、そのうえで私たちが何をすべきかを考えて行くことが重要となっています。
そこで今回は、NHK番組『100分de名著』で教えてもらった内容をもとに、「ショック・ドクトリンとは?」から「実際にショック・ドクトリンが使われた出来事」と言った暗い話だけでなく、「ショック・ドクトリンを回避する方法」といった明るい話も交えながら、「私たちがどのような視点からショックを受け止めれば良いのか」をボソッとしたいと思います。
さらに、次回のボソッとからは「あっ、これ、ショック・ドクトリンだ!」というニュースについてご紹介していきたいと思っております。
ショック・ドクトリンとは
ショック・ドクトリンとは、社会に壊滅的な惨事が発生した直後、人々が茫然自失している時をチャンスととらえ巧妙に”ショック”を利用する政策手法です。
※「ドクトリン」=政策、過激な経済政策という意味
ショックを受けて、パニックで頭が真っ白になった間に、通常なら反対が多すぎて受け入れられないほどの過激な政策を一気に通すという手法であり、日本語では「火事場泥棒」とも表現することもできます。
このショック・ドクトリンを知るために大事なキーワードがあります、それは”フリードマン理論”です。
ミルトン・フリードマンが提唱した”新自由主義”
「大きな政府」や「福祉国家」を狙いに定め、「政府が介入せず、まったく規制のない状態にあれば市場は自らバランスをとる」ことを理想と掲げ、国家の役割は警察と国防以外はすべて民営化して市場の決定にゆだねることを推奨したのがフリードマン理論。
ショック・ドクトリンにおいて強制的に行われたことを3つにまとめることができます。
①規制緩和
②民営化
③社会保障の削減
シカゴ大学で教鞭をといっていたフリードマンから直接学んだ学生たち、通称”シカゴ・ボーイズ”がエリート層として経済界に深く張り込み、”新自由主義”を推し進めたことによって、世界各国でショック・ドクトリンが起こったのです。
番組内で堤未果さんはこのようにおっしゃっております。
ショック・ドクトリンが使われた出来事
ショック・ドクトリンが使われたらこんなにも怖いことが起こることを、堤さんと伊集院さんが「たとえ話」を使ってこのように分かりやすく教えてくれましたのでご紹介します。
それでは、実際にショック・ドクトリンが行われた出来事をご紹介しますが、簡単な内容しか私は記載しておりません。実はnoteを検索したところ、ショック・ドクトリンの詳しいことを記載されたnoteページがありました。とっても詳しく記載されていらっしゃるので、よろしければそちらもご参考ください。
ピノチェト独裁下のチリ
チリにおいて70年代に起こったチリ軍事クーデターによって、アメリカなど先進国の民主主義下では推進できなかった大胆な市場原理主義的改革を断行された出来事で、「ショック・ドクトリン」の最初の実験台になったと言われています。
イギリスサッチャー政権
普通の民主主義国家、普通の先進国でもショック・ドクトリンは適用されたという実例です。
フォークランド紛争というショックが起きた際にイギリスサッチャー政権のもと、国が一丸となって団結しないと!という機運が高まったことを背景に、公共事業の民営化、企業と政府が密接となり、企業有利の政策が実施された。
国際機関が推し進めたショック・ドクトリン
IMF、世界銀行、そんな中立な国際機関でもショック・ドクトリンのプレイヤーとして大活躍してきたことを知ったとき、私も本当にショックを受けました。
1997年の「アジア通貨危機」で、タイのバーツは暴落をはじめ、韓国も国家破産寸前に追い込まれる中、IMFはアジア危機で苦しんでいる韓国に対して、融資するために「ワシントン・コンセンサス」を条件として提示。「民営化しなさい、そしたらお金を貸しますよ。」ということをIMFが条件提示するとは・・・
中露でも起こったショック・ドクトリン
1980年、中国はフリードマンを招待、中国は市場を外国資本に開放した。しかも中国では天安門事件での残虐な報復の恐怖を体験しており、中国政府のやり方に人民は反対することができないまま、中国国内でショック・ドクトリンが行われていきました。
さらにソ連を崩壊させたエリツィン政権化においても国家の監視下の下で市場経済を導入した。ソ連崩壊という国民がショック状態の中で、ロシア版シカゴ・ボーイズによって、ロシアは新自由主義を取り入れることになる。
アメリカ・同時多発テロ
アメリカや世界中が一瞬でショックを受けた、アメリカ・同時多発テロ。9.11によって自由な国アメリカが一夜にして自由でなくなったのがアメリカ。
ブッシュ政権によってすぐさまショック・ドクトリン政策を推し進められ、「テロリストという新しい敵がアメリカを狙っている、いつテロが起こるかわからない」と国民を不安がらせる中で、セキュリティ業界に湯水のようにお金を入れ、安全保障と言う名のもとに愛国主義を抱え、GoogleやFacebookなどと秘密裏に契約を交わし、知らない間に情報が全部取られることが正当化されてしまったのが”9.11ショック・ドクトリン”。
まさに大規模なショック・ドクトリンがアメリカで起こったのです。
戦争終結後のイラク
イラク戦争後、イラク占領政策をまかされた連合軍暫定当局(CPA)のブレマー代表は、意図的に無政府状態と恐怖の蔓延を助長し、市民を思考停止状態へ。それを好機として過激な市場開放を断行し、CPAは経済政策に偏った政策を行った。イラクはアメリカ企業の草刈り場と化します。
災害ショック・ドクトリン
ショック・ドクトリンは、米南部のハリケーン・カトリーナやスマトラ沖地震によるアジアの津波災害においても行われた。被害を受けた場所ではその土地をまるごと民間に売り飛ばして高級リゾート開発へつなげようとする行為も行われた。
日本でも例外ではなく、ハリケーン・カトリーナで被害を受けたニューオーリンズで起こったショック・ドクトリンと同じ共通点が東日本大震災にも起こっていると堤さんは指摘します。
ショック・ドクトリンを回避する方法
こんな暗い話題ばかりのショック・ドクトリンですが、『明るい話題としてのショック・ドクトリン』を番組内では紹介してくれました。
それが、ショック・ドクトリンに対して民衆が立ち上がった実例です。これこそ”ショック・ドクトリンを回避する方法”なのです。
タイで津波被害にあったモーケン族、彼らは立ち上がり、外資に奪われる前に被災地に「再侵入」を行い、自分たちの土地である権利を主張、粘り強く政府と交渉することで、自分たちの住んでいた場所を取り戻したのです。
モーケン族も被災者です、しかし彼らは被災者として政府の援助を待つことなく、避難所でおとなしく公的な復興計画を待つことをせずに、自分たちの力だけで再建、見事に「ショック・ドクトリン」を自分たちの力だけではねのけたのです。
ショック・ドクトリンを回避したモーケン族のもとをニューオーリンズでハリケーン災害に遭った被災者が訪れここを視察、「国に戻ったら、あなたが方をお手本にして頑張りたい」と決意を述べるほどに、勇気づけられたという姿もあったそうです。
民衆のショック・ドクトリン
私たちはどのような視点からショックを受け止めれば良いのか?
ショック・ドクトリンを知ったことで、私はこのように考えました。
公共事業を国から請け負っているグローバル企業は、社会でショックが起きることを念頭に予め計画を練っている。さらに、政府も当然のように次のショックに向けて国会で成立させたい憲法修正案や政策を用意している。
多国籍企業も国もお互い儲けを出すために、ショックが起こったら用意していた計画を即時発動させようとしている・・・そう、私たちが混乱している中で、すごい勢いと早さでショック・ドクトリンが起こすために・・・
このような観点で日々のニュースをみていくと、「あっ、ショック・ドクトリンが起こりそうな気配」を感じたり、「これ、ショック・ドクトリンの卵では?」という気づきもあることでしょう。
もしショック・ドクトリンが起きたと思ったら・・・
番組内で堤さんがショック・ドクトリンの検証ポイントを教えてくれましたのでご紹介します。
※NHK番組『100分de名著』「ショック・ドクトリン」(著:ナオミ・クライン)より
【”広く・長く・深く検証する”こと】
絶対にショックになっているので、立ち止まって、焦るんだけど、もう一回ゆっくり考えてみることが大事。
ショック・ドクトリンが理論上大事にしているのは”スピード”です。とにかくチンタラやっていてはダメな手法、だからこそ”広く・長く・深く検証する”ことで対抗していくことが大事だとおっしゃっておりました。
【有事のときに機能するか?】
国が水道や教育、医療を民営化しますと言い出した時に、「果たして有事のときに機能するか」ということを検証しましょう。
災害が多い日本では水道民営化は果たして有事の際に機能するのか?
数値で効果が判断できない教育や医療を民営化しても良いのか?
【地域住民が当事者として入っているか?】
復興プロセスを民主化すること、それができれば民営化もいい形でできる。
【ショックが起きたら国会は絶対チェック】
ショック時には、どんな法律を国会で通そうとしているのか?
【選択肢があるかどうかを必ずチェックすること】
ショック・ドクトリンの罠として、選択肢はなくなっています。
例えば、テロとの戦い、賛成しないなら君はテロリスト扱いになるよとか、コロナパンデミック、ワクチンを打たないとコロナで苦しむよ、といった感じに選択肢を無くしてショック・ドクトリンを推し進めようとします。
【二元論的な考えはしない】
どっちが良い、どっちが悪いという二元論的な考え方によって、ショック・ドクトリンに取り込まれやすくなるので、誰が悪いといった二元論的な考えはしない。
私たちは”覚醒”することが求められている
番組内で伊集院さんもおっしゃっておりましたが、「復興というものは、経済も活性化されるからいいんじゃないの?」と私も当然のように思っておりました。
そのため、被災したらすぐに国が動くことが大事!だということを信じておりました。被災を受けたら政府が助けるのはアタリマエであると考えていました。
だからこそ、”覚醒”が私たちには必要なこともわかりました、モーケン族のように、自分たちが復興の主体者であるという意識が大事なことも。
このようにショック・ドクトリンを知ったことで、見え方が変わったというボソッとでした。