原因を知りたいと思うのは⑤
※ミトコンドリア:細胞の中にある小器官
上の文章は、私が最近、ネットで読んだ記事の抜粋(引用)です。「心の病」の脳科学(講談社)を購入するきっかけとなった記事です。
私がつよく関心を引かれたのは、引用部分後半の段落です。
双極性障害と因果関係があるミトコンドリア機能障害はあちこちで起きうるものであるということに驚いたのです。
この記事の続きには、双極性障害のモデルマウスを調べた結果、「視床室傍核(ししょうしつぼうかく)という脳深部で変異がとくにたくさん起きていることが分か」ったと書かれています。
私の父は脳梗塞を患ったのですが、この病気の原因は脳にあるわけではありません。血管性の病気なので、全身のどこで起きてもおかしくないわけです。脳であれば脳梗塞、心臓であれば心筋梗塞、肺であれば肺塞栓症といった具合に。
それと同じように、身体のどこでミトコンドリア機能障害が起きるかによって疾患名や疾患が引き起こす症状が異なるということであれば、精神障害のひとつである双極性障害(躁うつ病)に対する社会の認識が大きく変わるのでは!と。少なくとも、私にとっては目からウロコでした。
すべての糖尿病の原因がミトコンドリア機能障害にあるわけではないようですが、たとえば、ミトコンドリア機能障害に起因する糖尿病の人は、それが起きる部位によっては糖尿病の症状ではなく、精神疾患の症状を呈していたかもしれない、そうを考えると、誰が双極性障害になってもおかしくない(誰もがなり得る)病気だということになります。
双極性障害は気分障害の一つで、極端な気分(感情)の浮き沈みによって、二次的に社会生活や人間関係に支障をきたすことが多い病気です。
気分(感情)といった形で表れるので、しばしば本人の性格傾向と混同され、誤解されることの多い病気です。
この研究では、すべての双極性障害の原因がミトコンドリア機能障害にあると結論付けているわけではありません。だとしても、この研究結果が世間一般に知られることで、双極性障害が個人のパーソナリティに起因しているとか、親の育て方が原因だという一元的(限局的)な見方をくつがえす大きなきっかけとなりそうです。
社会の偏見や誤解を解くには。「差別をなくそう」とか「多様性の尊重」といった倫理的視点や「本人も好きで(病気に)なったわけではない」と感情に訴えるだけでなく、このように客観的に因果関係をクリアにして誰もが「自分ごと」としてとらえることができる視点を提供していくことが必要だと感じます。
(つづく)
【追記】もしこの記事を読んでいる方の中に双極性障害の診断や治療を受けている人がいらっしゃって、「ミトコンドリア機能障害」が原因かもしれないということで「じゃあ治療はどうしたらいいの?」、「ミトコンドリア レベルで起きている病気なら治らないってこと?」と不安を感じられた方がおられるかもしれません。
そういう方には本を読んでいただければ、と思うのですが、それだとちょっと不親切な気がするので補足しますね。
「仮説から見ると、既存の治療法は対症療法ではなく、発症原因に作用しているとも考えられる」(本より引用)とのことです。いま処方されている薬の効能が仮説によって裏付けられたということですね!
同時に、本では「ミトコンドリア機能障害」に起因した双極障害が他の疾患(双極性障害と一括りにされている可能性があるもの)ときっちり鑑別できれば、それに特化した治療の研究が進むであろうということが書かれており、今後に期待ができる内容も詳述されていました。
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