動物の漢字の話
本日は教養編の初心に立ち返って、子どもたちへ向けての内容になります。漢字が苦手な子どもの為に、少しでも興味を持ってもらいたいという思いで書いたもので、大人の方には少々物足りないかもしれませんが、お付き合い下されば幸いです。
犬・馬・牛・羊・豚・鹿・熊・虎・象・兎・鼠・亀・鼈など
一文字の基本的な漢字。おそらく漢字ができた初期に、すでに中国の人々の生活に深く入り込んでおり、単純な漢字を割り振られた動物だと考えられます。ニクヅキを持つ豚だけは少々あやしいかもしれませんが。
少々意外なのは「鼈」ですが、漢字の元が甲骨文で亀の甲羅が宗教的に重要だったことを考えれば、カメとスッポンが別々の、それぞれ重要な生き物と考えられていたとしても不自然はないと思います。
猫・狼・猪・狐・狸・猿・貂・獺・豹など
獣編で一文字の漢字。おそらくほとんどが形声文字ですので、猫なら「ビョウという獣」、狼なら「ロウという獣」という意味しかないです。ただしビョウは現代日本語での読みで、現代中国語ならマオかミャオという感じの発音になるでしょう。古代中国語ではどうなるのでしょうか?
犬などの単純な文字を割り当てられた動物たちほどありふれた動物ではなかったのかもと思うと、猫などちょっと意外に感じます。
カワウソは現代ではあえて漢字で表記する場合は「川獺」と書くことが多いと思いますが、「獺」だけでカワウソの意味があるようです。
狢
現代日本ではアナグマをさすけれど、近代まではタヌキとアナグマもはっきり区別されていなかったりしたので、古代中国では何を指していたのか分かったものではないですね。何か情報があれば追記します。
鼬など
鼠のつく一文字の動物。他に貂の異字体もあるようです。鼠のような動物ではなく、鼠を捕る動物に鼠の文字が使われているのが興味深いです。
犀
牛の入っている漢字。まあ理解できるかも。
羆
熊の入っている漢字。一文字でヒグマを意味する漢字があるのは興味深いです。古代中国の人々にはクマとヒグマの区別が重要だったのでしょうか。
麒・麟
鹿編の漢字。麒麟で2文字のイメージがありますが、麒がオスの麒麟、麟がメスの麒麟を意味する1文字の動物となります。架空ですが。
麒と麟の区別は「十二国記」の読者なら間違えようがないですね。
鰐
魚編なので、動物と言うよりは魚に近いと考えられていたのでしょう。ワニ類の研究者の青木良輔氏は著書「ワニと龍」で現在中国にいる小型のワニ以外に古代の中国には日本のマチカネワニのような大型のワニが生息しておりそれが龍と呼ばれていたのではないかと主張していましたが、最近になって該当する歴史時代まで生存していた大型ワニが確認されたということがニュースになりました。
蛇・蛙・蜥蜴
動物なのに虫偏。獣でも鳥でも魚でもない生き物は虫だと考えられていたと説明されることがありますが、僕自身はちゃんとした資料で本当かどうか確認できていないので保留としておきます。
山羊・羚羊・驢馬・騾馬・駱駝・獅子・狒々
単独の漢字を与えられず、2文字で表現されている動物。単独の漢字の生き物よりも中国の人々の視界に入ったのが遅いのかとも思いますが、その割にはヤギやロバのようなオリエントではかなり早く家畜化されていた生き物が含まれているのが不思議。東アジアと西アジアで重視された家畜の違いを示しているのかもしれません。
ただロバの驢、ラバの騾、ラクダの駝、獅子の獅、狒々の狒は一文字でその動物を示しているとも思えるので、2文字で表現されるようになったのは新しい時代の話かもしれません。
羚羊は「かもしか」と訓読みする場合と「れいよう」と音読みする場合で別の生き物を指すというややこしさがあります。
河馬
二文字の漢字ですが、日本であてられた漢字。学名Hippopotamus(学名はイタリック体で綴るルールですが、noteではイタリック体が使えないようです)はナイル川に暮らすカバにギリシャ人がつけた名前に由来しており、ギリシャ語で馬を意味するhippoと川を意味するpotamusを組み合わせた言葉です。日本語はこの学名を直訳したものですね。
英語でもそのままhippopotamusですが、hippoと略されたりします。それ馬って意味!と言いたくなりますが、英語ではhippo=馬というのは飽くまで外国語の知識になるので仕方がないのでしょう。
海豹・海驢・海象
海+陸上動物で表わされる海獣たち。比較的新しくできた熟語のような気がします。
海獺
アイヌ語からの借用語。音からあてた「猟虎」と言う漢字もあります。「海獺」の表記は英語のsea otter(海のカワウソ)の和訳。アイヌ語のラッコに日本名が決まる前には「ウミウソ」という呼び方も検討されたとか。
麒麟・獏・猩々
架空の生き物の名前を与えられた動物たち。猩々は酒好きで赤ら顔の妖怪ですが、オランウータンの中国名となり、日本でもオランウータンの別名として使われることがあります。更にチンパンジーを黒猩々、ゴリラを大猩々と呼ぶこともあるそうです。
漢字についてのコラムは初挑戦でしたが、楽しんでいただけましたでしょうか。今後も思いついたら、追記するかもしれません。
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