【書評】60代からの資産使い切り法
観点が面白いため読んだ本のメモ。
『60代からの資産使い切り法』、著者は野尻哲史さん。資産の取り崩し方に特化した一冊で、老後の生活を豊かにするための戦略を深堀りしています。
資産形成の方法はNISA・iDecoを活用しながら、インデックス投資✖️積立✖️中長期間の保有によって複利の力を借りて増やす、シンプルな方法で確立・している(してきている)と思います。
一方で、資産"活用"(実際に老後を迎え、資産を利用していく)においては、資産を様々な方法で取り崩していく技術を知っておかないとどれほど資産形成しても無駄になるため、というのが本書の主張になっています。
改めて考えてみると、自分の死期を予想することが難しいため、いつまでにどのぐらいのペースで使い切れば良いのか、どれぐらいの資産を後世に残すのか、といった問題を考慮すると資産"形成"より"活用"が難しいです。
ここに焦点を当てた金融サービスはまだほとんどない認識ですが、
登り(積立)が新NISAで一般化したら次は下りの議論になるんだろうなという読了後の感想。
取り崩し戦略の必要性
2023年に実施された「60代6000人のアンケート」の結果を基に、健康状態、仕事・やりがい、人間関係、資産水準の4つの要素が生活全般の満足度にどう影響するかを解析しています。
特に、資産水準が1単位上がると生活全般の満足度が最も上がることが重回帰分析によって明らかにされています。
本書では、「取り崩し戦略」を用いることで、できるだけ長く資産を持続させる方法と、それによって生活水準を見極めることの可能性を指摘しています。具体的には、老後の資産水準が人生の満足度に与える影響を理解し、資産を効率的に使いこなす技術を身につけることの重要性を強調しています。
取り崩し戦略の実施方法
資産に関する3つのフェーズ(資産形成期、資産活用期、資産使うだけ期)の概念を導入し、それぞれのフェーズで異なる収入戦略を展開する必要性を説いています。具体的な例として、資産活用期では生活費の確保を目的として、勤労収入、年金収入、資産収入の組み合わせによって、どのように生活を支えるかが議論されます。
引退後の運用継続の必要性についても触れられており、確定拠出年金やNISA預り金など、引退後も資産運用を続けることでリターンを得る方法が提案されています。また、「何歳で自分は死ぬか?」といった具体的な年齢設定をもとに、資産をどれだけ持続させるかの計画を立てることの重要性も説明されています。
資産配分の考え方においては、リスク資産と無リスク資産の保持比率をどのように決めるかについて、詳細な指針が提供されます。例えば、「リスク性資産比率」は年齢とともに変化させるべきであり、65歳であれば有価証券35%、預金65%とすることが一つの方法として紹介されています。
最後に、新NISAの捉え方についても触れられており、老後も資産活用を行うことから非課税メリットがあるNISAは資産活用層にとっても有意義であると指摘されています。しかし、英国のISAと比較した際の日本の新NISAの制度上の課題も指摘され、将来的な改善点についても考察されています。
スイッチングの可否 新NISAは資産構成の入れ替えができない、英国ISAはスイッチングが可能。加齢に従って資産の引き下げ(構成比)を見直す際にスイッチングは必要となる。
相続への考慮 英国ISAは配偶者への相続(Ex.夫が亡くなった際の妻へのISA残高の引き継ぎ)が以下のように配慮されている 。
配偶者がなくなった翌年は、その人の年間上限額が上乗せされる(日本で置き換えると年間360万に1,000万上乗せされるイメージ。なお、相続税については必要に応じて支払う必要はある
資産収入周辺のテクニック
書籍に詳細あるが、省略して記載しています!気になる方は是非本書を読んでみてください!
年金収入戦略 公的年金受給額の増加には受給年齢の延長が鍵。繰り下げ受給により受給額最大42%増。受給タイミングによる納税額の変動も考慮が必要。
生活費効率化戦略 引退後の生活費削減には住宅費の見直し効果的。地方都市への移住や住居のダウンサイジングによる生活費削減と満足度維持のバランスを推奨。
持ち家の資産活用 リバースモーゲージやホームエクイティによる資産活用方法。持ち家を担保に生活費を借りるリバースモーゲージや、より小さな物件への買い換えによる売却益の活用を解説。
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