2.4 「リアル」プロダクトができるまで | D2Cスタートアップの教科書
※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に一連の記事をまとめています
前回の記事では、D2Cスタートアップを立ち上げる際に必要な資金とメンバーの集め方についてまとめました。
プロダクトのアイデアも固まり、いよいよ資金とメンバーが集まったところで、プロダクトの製造体制を構築します。
この記事はOEMでの製造体制構築を中心に、プロダクトの販売開始にたどり着くまでの流れとポイントをまとめます。
製造体制の大まかなフロー
D2Cのサプライチェーンは、
・製造工場
・倉庫
という2つがロールが存在します。
製造工場は指定した製造ロットで商品を製造し、倉庫に一定の個数を丸っと配送します。
倉庫は商品をうけって保管し、注文が入るとお客さんの手元に個別配送します。
D2Cの立ち上げ時は、「工場」と「倉庫」を自社でやるのか外注するのか?そして外注するならどこの企業に頼むのか?を設計する必要があります。
他にも工場から製品を個別直送するドロップシッピングの形式をとる場合もあります。(製造をインハウス化しているメーカーに多い)
外注製造(OEM)と外注先の選び方
商品のデザインやコンセプト・ブランドなどが出来上がったら、資材の調達や製造工程の作成と実際のオペレーションはOEM工場に依頼する事になります。
製造を外注した場合、自社とOEM先がどこまでの責任をおって開発するのか境界が曖昧になります。
「ものづくり」は外部ではわからないようなノウハウが詰まっているので、OEM先が意欲的に協力してくれるような関係性を作るのはまず重要ですが、将来の価格交渉やインハウス化も考えると、商品のコアになる部分を見極めて、そこだけは最低限最初からインハウス化するべきです。
D2C事業は製造業なので、売上アップはもちろんですが原価も重要なKPIです。問い合わせてみて初めてわかる事ですが、OEMを使う場合は意外と原価率は高い…!ので、原価が安すぎる商品(サプリなどの粉物や飲み物などの液体もの以外)を販売する場合は、いつかインハウス化が必要になるのは心に止めておきましょう。
製造業である工場や倉庫は、巷で言われている通り、テクノロジー化が全然すすんでいません。
Webインターフェースがなく、メールで受発注しているなんて事もザラです。
なので、製造サイドとやりとりする場合に、定常業務としてどのようなオペレーションが発生するかは契約前に洗っておくべきです。
どんな製造工場もHPくらいは作っていますが、SEO対策がボロボロなので、ググって出てくる工場は極一部ですし、Webからの問い合わせには基本返信してくれません。
なので、最低でも20社以上は電話で問い合わせ、その中で対応してくれそうな2~3社の中で1社を選ぶことになります。
その時の評価基準はざっくり以下の軸があります。
・技術的に製造可能か?(製造設備が工場ごとに違うので対応可能な範囲は異なる)
・最低発注ロット
・発注から納品までのリードタイム(半年以上なんてこともある)
・品質管理が適切か
・十分にスケール可能か?(月1億円分くらいは発注可能なところ)
これらが十分に満たした上で最後の最後に価格をみるべきです。
ものづくりは「安かろう悪かろう」です。
将来インハウス化を考えるならなおさら、OEMで商品の原価を追い求めるより、商品とサービスの質を最重要視しましょう。
インハウス製造のポイント
・上記の条件でOEM先が見つからなかった
・製造開始に初期費用や体制構築までのスピード感が妥協できない
・製造ノウハウを外部に出したくない
など、様々な理由でD2Cスタートアップはインハウス製造から始めることがあります。
この判断は経験上、MVPを検証する必要がある商品ならば良いですが、一定の規模以上に売れると最初からわかっている商品でやるのはぶっちゃけ悪手です。
スタートアップが確保できるような2~3000万円の予算で構築できる製造工場は、例えばワンルームの1室でバイトを雇って作ってもらう程度です。
これだと製造キャパは月間1000万円程度までです。
D2Cスタートアップで月商1000万円だと、正直数年たって単月黒字になるかならないか程度なので、
・アクセルを踏むにも製品が作れない
・工場を増やすにも借り入れできない
・日々のオペレーションが多すぎてシンドイ割に儲からない
という落とし穴にハマり、最悪の場合売れているのに撤退ってしまうという事までありえます。
なので、もともと工場を持っているような会社が新規事業として立ち上げる場合を除き、インハウスでMVPの検証をする前にOEM先の目処を立てておくのがオススメです。
倉庫の選び方
倉庫は工場探しと比べて商品による違いはほとんどない(常温保存かクール保存か程度)ので、委託先探しは割と簡単です。
選定時のポイントはざっくり以下です。
・配送品質
・オペレーションの柔軟さ
・発送のタイミング(前日の何時に発送情報を渡すと、いつまでに配送できるか?)
配送品質に関しては、めちゃくちゃ雑で誤配送がめちゃくちゃ起きているような倉庫や、商品が雑にラッピングされていたりなんて事もあります。
(これは実際に販売開始してみないと分からないのが痛い…)
また、商品や同梱物の変更があってもすぐに対応してくれたり、ギリギリまで配送先の追加・変更・キャンセルができたりというオペレーションの柔軟さも重要です。
OEM委託先工場の選定と同様、金額面で比較するのは最後ですが、工場よりは品質がブレにくいので、最初から金額重視で比較しても大丈夫かもしれません。
ちなみに倉庫業を名乗る方々も、実際に倉庫をアセットとして持っている会社と、倉庫のスペースを借り上げて営業力でサブリースしている会社があります。
もちろん直の業者に当たった方が金額は安いですが、融通が聞きにくいというデメリットもあるので一長一短です。
以上です。
次回は販売開始直後の初期顧客獲得についてまとめます。