ヘアケアD2C「MEDULLA(メデュラ)」のPLとユニットエコノミクスを検証 | D2Cスタートアップの教科書
※「D2Cスタートアップの教科書の目次」にD2C関連の記事をまとめています。
年明けからD2Cのニュースが絶えません。
パーソナライズヘアケア「MEDULLA(メデュラ)」を製造・販売するSpartyの資金調達が、今週発表されました。
「MEDULLA(メデュラ)」は、2018年5月から利用者それぞれにパーソナライズしたシャンプー&トリートメントをデジタルチャネルを中心に販売するThe D2C企業であり、昨今のD2Cブームの火付け役みたいな存在です。
今回のプレスリリースでは、月商やユーザー数などの各種KPIが部分的に公開されていたため、これらを元にMEDULLAの事業実態について考えてみたいと思います。
ヘアケアD2C「MEDULLA(メデュラ)」とは
MEDULLAという商品は、一言でいうと、
「パーソナライズシャンプー&トリートメント」
です。
シャンプーというのは、大手消費財メーカーが作ったドラックストアに置いてあるような安価な商品や、美容院などの施設で扱うようなプロ使用の商品など、ピンからキリまで山ほど販売されています。
個人の髪質は、硬さ・細さ・色・痛み具合などそれぞれであり、いちユーザーとして考えても、(女性は特に?)第一印象に大きな影響を与える割りに、一覧性・検索性が低いためこだわって選べていない人が多い。
そこでMEDULLAは、Web上で髪質をアンケート形式で診断することで、個々人に適した配合のシャンプーを提供するというブランドです。
実態としては複数種類を予め在庫として抱えておき、「オーダーメイド」かのように見せていることで、ユーザーからの見栄えや満足感とオペレーションの簡単さのトレードオフを考慮した設計になっています。
近年ヘアケア領域で大成功したのが、卸チャネルを中心に一気に認知度を獲得した「BOTANIST」ですが、MEDULLAはBOTANISTとは異なりデジタルネイティブなヘアケアブランドとして成功しつつあるようです。
ヘアケアD2C「MEDULLA(メデュラ)」の販売方法
シャンプーやトリートメントといったヘアケア商品は、ドラックストアを中心とした卸売チャネルがほとんどですが、MEDULLAは商品購入前にユーザーからアンケートをとってパーソナライズするという性質上、Webでの注文が不可欠です。
そのため、単なる卸売ではなく、「アンケートを取れるチャネル」のみで販売しているようです。
商品単価と販売
LP経由でも公式サイト経由でも、定期購入価格6800円(初回4880円)という価格はブラしていません。
昨今のツーステップマーケティングのような安売りをしないという姿勢。
また、単品でお試しといった方法もとらず、必ず定期購入に誘導されます。
ただしもちろん購入回数の縛り等はありません。
自社EC経由での販売
一番単純なのが、自社ECによる販売です。
MEDULLAを運営するSpartyは、このシャンプーの販売するタイミングで創業しているので、D2Cの会社によくある「一定規模に育ったカテゴリ特化メディアのマネタイズブランド」ではなく、純粋に商品ドリブンなブランドです。
なので、メインの販売チャネルは自社ECでの購入です。
スタートアップ界隈ではメディア露出も多いので、「PR中心に売れている」と誤解される方も多そうですが、「PRで商品は売れない」という通販の常識を考えると、やはり広告運用をゴリゴリやっていると思われます。
美容院経由での販売
また、従来からのへアケア商品販売チャネルである美容院経由での販売も展開しているらしいです。
ただ、こういうトリッキーなチャネルはおそらく投資家ウケを狙ったものであり、ボリュームとしては少ないかと思われます。
ポップアップストアでの販売
先月から有楽町のマルイでポップアップストアをオープンしています。
店舗で診断してもらって商品が買えるとのことですが、店舗のサイズ感などを考えるとボリュームとしてもまだまだ小さいでしょう。
ヘアケアD2C「MEDULLA(メデュラ)」のPLからみる、今後の展開
今回の資金調達に関する一連のプレスリリースでは、いくつか事業実態に関するKPIの状況が公開されていました。
【Bridgeの記事】
・ユーザは20代後半から30代前半の女性を中心に8万人にまで拡大
・現在では月1万人のペースで成長
【Techcrunchの記事】
・2020年1月の月商は2億円近く
・昨年(2019年)の秋口以降、事業が一気に伸びた
80000人のユーザーというのは、「アクティブな定期購入者が8万人」と見せかけつつ、消費員単価が6000円程度・月商が2億円近くということで、累計の購入者が80000人ということに注意。
ユニットエコノミクス
上記の公開数値だけではユニットエコノミクスは計算仕切れません。
ですが、
・初回単価4880円
・定期縛りなし
・クリエイティブも凝っている
というところを考えると、
・獲得単価はおよそ10000円
であり、
・2回目以降と比較した割引率も20%程度とかなり低め
・シャンプー自体を定期購入する習慣はまだ馴染みがない
ということを考えると、
・F1~F5くらいにかけて継続率は60%・70%・80%・90%とじわっと上がっていくイメージ
かと想定されます。
また、シャンプーの原料はほとんどが「水」であり、常温保存可能で密封も不要とかなり単純なので、原価率もかなり低く、パッケージや送料と合わせても限界利益率で60%以上は確保されていると考えられます。
上記の点を考慮してユニットエコノミクスを引いてみました。
比較的硬めの数値を置いてみたのですが、それでも回収期間は6ヶ月。
かなり割りの良い事業だと言えます。
想定PLと今後の展開
以前どこかのメディア(出どころを忘れました…)で、リリース後2~3か月で売り1000万円以上に急成長したが、数ヶ月後に製造トラブルで販売停止になったという話をみました。
なので、販売再開後から今のユーザーが着き始めたと考えています。
このような状況から考えると、ユニットエコノミクス作成時に仮置きした原価率・継続率を元にこれまでのPLを引いてみました。
累計調達額も直近のラウンドを覗くと1億~2億円のレンジで、直近のKPI(単月売上・ユーザー数・累計ユーザー数)もいい感じに収まった線が引けました。
(精度は保証しません)
ユーザーを獲得してグロースしているのですが、十分にグロースしつつあるので、2020年前半には単月黒字、2020年下旬には累積の赤字分も回収できるような計画になっています。
なので、2021年の実績を元に時価総額100億強で上場も余裕な規模感だとみれます。
(年商50億・営業利益10億・純利益7億・PSR2~3倍・PER20倍)
もちろん今回のリリースにあった、「常設店舗」や「サロン連携の強化」が吉と出るのか凶とでるのか、はたまた単なるパフォーマンスに留めておき堅実に事業を伸ばしていくのかはわかりません。
まとめ
今回発表されたMEDULLAのプレスリリースの情報を元に、事業実態を考えてみました。
MEDULLAの事業がうまく成長し一定の規模でExitができるのであれば、若干冷めつつある?のD2C界隈のムードの風向きが大きく変わると思われるので、ぜひ頑張って欲しいです。
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