2.3 資金・メンバー…リソースの集め方 | D2Cスタートアップの教科書
※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に一連の記事をまとめています
前回の記事では、D2C事業を始めるにどのくらいの資金が必要で、どの程度の収益となるかを大まかにイメージするための「ざっくりPLの引き方」を紹介しました。
事業計画をひいて十分成功できると判断したら、いよいよ事業を始めましょう。
D2C事業を立ち上げるに当たって、まず必要なのは「資金」、そして可能であれば「運営メンバー」を集めましょう。
この記事では、D2C事業を始めるに当たって最初に行う「資金」と「メンバー」の集め方について説明します。
D2Cスタートアップの資金の集め方
こちらの記事でも紹介した通り、普通のD2Cの場合、およそ5000万ほど資金がないと毎月のしかかる固定費をペイできず100万単位での単月黒字まで達しません。
もちろん自己資金で5000万円を持っている人は別とすると、D2Cスタートアップは、なんとか早い段階で5000万以上の資金をかき集める必要があります。
D2Cに限った話ではありませんが、スタートアップにおいて外部から資金を集める方法は大きく、
・間接金融 … 銀行などからの借り入れる
・直接金融 … 株式を発行し、投資家から出資を受け入れる
の二択です。
聞いた話ベースだと、だいたいどのD2Cスタートアップも、
直接金融: 1000万
間接金融: 2000万
くらいの金額でスタートするところが多い。
D2Cは、お客さんにお金をはらって商品を買ってもらう、という非常にシンプルなビジネスモデルなので、事業自体にあまり詳しくない金融の担当者でも事業判断をしやすいということで、このように間接金融を多めに受ける傾向にあります。
D2Cスタートアップの間接金融(銀行・公庫など)による調達事情
前述の通り、D2Cスタートアップの間接金融事情は、インターネット系のスタートアップとは異なり、かなり間接金融から借り入れを受けやすいです。
だいたい1社あたり上手くいけば2000万くらいの借り入れを目指せます。
ただ気を付けなければならないのは、商品もない売上も立っていない創業時に銀行からできない!ということ。
ではどこから借りるのかというと、政策金融公庫からの創業融資です。
■政策金融公庫からの創業融資について
(たしか)創業2年目までは、無担保で借り入れができ、2000万円までなら決済が通り安いと言われています。
(2000万円を超えると支店長決済の範囲を超えるため、融資がかなり難しくなるので注意)
なので、この公庫からの創業融資を受けられれば、だいたい間接金融からの借り入れミッションは完了です。
ですが、いくつか落とし穴があります。
それは創業融資の審査が担当者による属人的な判断で左右されやすい、ということです。
・〇〇支店は審査が厳しい
・担当者の××さんはこの業態は絶対通してくれない
というようなことが多々ありますし、極め付けは、
・一度出した内容はデータベースに残るため、一度審査に落ちると次はもっと通りにくくなる
ということらしので、1回目の審査から数パーセントのコミッションを払ってでも、ちゃんとした会計士さんに事前に相談することをお勧めします!
※会計士さんによっては、審査に通す前に事前に担当者に話しをつけてもらい、×がつく前に修正方法を紹介してくれるという斡旋までしてくれたりします。
ただ、この「ちゃんとした会計士さん」を見つけるのも難しい。
ネットで検索すると、いくらでも会計士は見つかりますし、いかにも実績ありげなLPが出てきますが、担当者の内部情報を知っている会計士は数少なく引っ張りだこなので、ネットで探しても出てきません。
広告宣伝しているようなところや、成果報酬ではなく初期費用を要求してくるようなところは、絶対にやめたほうがいいです。
失敗してお金だけ取られます。
なので、すでに事業を初めていて借り入れが上手くいっている会社から会計士を紹介してもらうのが一番お勧めです。
※twitterでDMをいただければ会計士さんを紹介します。
■銀行からの借り入れについて
冒頭で銀行からの借り入れが難しいと言いましたが、創業期から借りいれる方法は実はいくつかあります。
それは、政策金融公庫から借り入れだけで商品を完成させ、プレスリリースまでちゃんと打ってしまうということです。
販売実績がまだなくても、商品があることで銀行の借り入れハードルはかなり下がり、PR Timesなりなんなりを銀行マンもしっかりチェックしているので、銀行側から融資の相談を持ってきてくれます。
プル型で話が進めば、さらにハードルが下がっていきます。
ただし、この時融資を受けられる金額は資本金の金額の大小で変わってくるので、ここでも多めに借り入れをしたいならば、先に投資を受けて資本金を増やしておくのがお勧めです。
D2Cスタートアップの直接金融(投資家・VCなど)による調達事情
間接金融での調達と並行して、投資家からの直接金融による投資を受ける会社が多いです。
ここ数年はまだまだベンチャー投資が活発なので、創業前のフェーズでも数百万~1千万程度の投資をしてくれる投資家やVCは多くいます。
スタートアップのシード投資の話は各種記事で紹介されているので割愛するとして、D2C特有のポイントを紹介します。
■ 賛成派と否定派で二極化しています
D2Cの調達で一番のあるあるが、投資家が「D2C賛成派と否定派に二極化している」という状態です。
D2CはまだまだExit事例が少なく、全体でみれば失敗している会社が多い、というのが原因でしょう。
また、もともと通販業界は投資を受けずに借り入れだけで成長してきた歴史があり、大手通販企業もほとんど上場していないため、企業価値の算定やリターンの予測がつかないため、スコープ外としている投資家も多くいます。
(残念ながら、D2Cという広い括りで見ているようで、個々の事業の将来性では判断してくれません…)
なので、同じ投資家に何度もプレゼンして出資を受けるというしつこさよりも、賛成派に当たるまで数多く当たったほうがアプローチとしてはお勧めです。
※twitterでDMをいただければ賛成派の人を紹介できるかもしれません
■ D2Cならではのシード調達資料のポイント
D2Cスタートアップのシード調達で見られるポイントは、
1. 買う理由はあるか?(感情ではなく論理で買う商品か?)
2. 実行力がある創業者か?
3. 市場は十分に大きいか?
の3つ(優先度順)くらいです。
逆に言えば、業界経験がなくても、技術力がなくても、若く過ぎても、30才超えていても、大丈夫です。
事業内容がいけそうなら通るし、事業内容がダメなら通りません。
別事業にピポットできる組織にならないので、シード投資でありがちな「人で投資する」という判断はされにくい印象です。
事業内容の客観的な判断を煽る意味でも、投資家にピッチするのは良いと思います。
初期メンバーの集め方
資金が集まったら、次はメンバー集めです。
BULK HOMMEもFabric TokyoもBase Foodも「創業期は1人で1年くらい頑張っていた」という話しをよく聞きます。
実際、物流・製造もOEM、カートやCRMもSaaSを使うだけだし、広告運用は代理店任せ、サポートもコールセンターに…となれば1人でもある程度できます。
ですがいくら外注しても一人だと業務過多になります。
製造周りの営業活動から顧客サポートまで、日々のオペレーションが多く幅も広いので、効率化もほとんどできません。
なので、できればもう1人か2人はオールラウンドにやってくれる人がいるとめちゃくちゃ楽になります。
特定のスキルを持った人というより、何でもやってくれるオールラウンドな人を見つけると良いと思います。
「資金」「メンバー」以外に必要なものは?
資金とメンバーが揃えばD2Cの立ち上げは前に進みますが、あえてもう一つあげるとしたら、通販/D2C業界の知り合いを見つけることです。
間接金融の会計士の話しかり、先駆者に気軽にものを聞ける立場に入れると、見えている落とし穴にはまりにくくなります。
ex)
・代理店の適正価格がわからない
・オペレーション周りで引き返せない道にハマる
・どのKPIをどのくらい改善していく必要があるのかわからない
など、先駆者なら誰でも知っているけど初めての人は絶対わからないこともあるので、気軽に聞ける知り合いを見つけると良いと思います。
以上です。
次はプロダクトを完成させるまでの裏側の準備についてまとめます。