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1.1 製造業・小売業の変革とD2C | D2Cスタートアップの教科書

※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に一連の記事をまとめています

「D2Cとは何か?」みたいな話題になると、「自社製品をECで売る通販でしょ?」とか「オーダーメイドとかパーソナライズかした新興勢力の高級品でしょ?」と、表現されることが多いです。

これは間違っています。

ということでこの記事では、製造業・小売業を振り返りつつ、「D2C」というものとは何かを整理していきます。

製造と小売の歴史的関係性

「製造業 = 物を作る」という行為は、「お金」という概念が生まれる前の物々交換時代からずっと存在する世界最古のビジネスです。

お金の発祥は紀元前で、物々交換の不便さから生まれた概念だと言われています。


一方「小売業=物を届ける」は、製造業がよりものづくりに特化できるよう、効率化のために生まれたビジネスです。

小売の元祖は「商人」という概念であり、「物を買い」「必要な人に届ける」ことで中間マージンを得るというモデルです。

こちらも紀元前から存在している業態です。

このように「製造業」と「小売業」の関係は、数千年前から始まり近代まで、ほとんど変化していませんでした。

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この関係性で各業種が成長しようとすると、
・製造業 = 小売業が売れそうだと思うもの・売りたいものを作る
・小売業 = 買値と売値の差が大きいものを売る
という力学が働くことになります。

良い商品を作りエンドユーザーがより多くのお金を出し、得たお金でもっと良い商品を開発する。
というスパイラルになれば三方良しなのですが、実態はこうはなりません。

製造とエンドユーザーの間に「小売」という関所が入ることで、このバランスは大きく崩れます。

小売は自身のビジネスを拡大するために、「より良い商品をより高く売る」という難しいことをするこなく、「より安く商品を仕入れ」ようとしていました。

「小売が不当に稼ごうとしている!」ということより、「自身で商品を開発する仕組みを持っていない」「良い商品があってもエンドユーザーが買ってくれない」という問題に起因しています。

そうなると、製造業も安く製品を開発する必要があり、結果的に質が犠牲になります。お客さんが手にする商品も、価格は安くなりますが、質も同時に下がっていってしまうのです。


また小売業は、「物の売り買い」という経済の仕組みの中でかなり多くの役割を占めていました。

商品購買フローと担い手を、
・製造 = 製造業
・集客 = 小売業
・流通 = 小売業
・決済 = 小売業
・サポート = 小売業(製造業)
とあげてみると、「製造」以外の全ての役割を担っていたことがわかります。

製造業と小売業の関係性を揺るがす変革

このように製造・小売・ユーザーとの関係は、その構造上の問題により、良いもの作り続けるという環境に身を置けていませんでした。

しかしこの構造は、この20年で大きく変化しました。

変化1. インターネットの出現

インターネットの出現により、
・製造 = 製造業
・集客 = 小売業 / 製造業 / メディア / EC
・流通 = 小売業 / 流通業 / EC
・決済 = 小売業 / 製造業 / 決済代行 / EC
・サポート = 小売業 / 製造業
と変わりました。

「集客」「決済」「サポート」の3つのステップに製造業が関われるようになりましたし、製造・小売・ユーザーという3者の関係の中に、集客に特化したビジネス( Google / Facebook / Amazon 等 )や、決済に特化したビジネス( クレジットカード 等 )の存在感を大きくなりました。

この環境変化により「集客」「サポート」を高品質化できた製造業は大きく伸びた一方で、「流通」に強みがなかった小売業は大幅に縮小しています。

変化2. SNSの出現

インターネットの出現は、単にユーザの購買フローを担う役割を「小売業」から「製造業」に移し替えただけでしたが、SNSは購買フローを再構築しつつあります。

SNSによって個人が手軽に情報を発信することで、エンドユーザー自身が情報発信を担うようになりました。
また、ユーザー同士がサポートしあう「ユーザーコミュニティー」という概念も広がってきています。

・製造 = 製造業
・集客 = エンドユーザー / 小売業 / 製造業 / メディア / EC
・流通 = 小売業 / 流通業 / EC
・決済 = 小売業 / 製造業 / 決済代行 / EC
・サポート = エンドユーザー / 小売業 / 製造業

「エンドユーザー」というプレーヤーが増えたことで「小売業」「製造業」の役割はさらに変化しました。

エンドユーザーという数の暴力により、小売業・製造業が発信する情報は大きく薄まったため、むしろ発信力のあるエンドユーザーを最大限生かすことが求められています。

製造業・小売業の今後とD2C

もちろん変化はこれだけでは終わりません。新しい変化の潮流も少しづつ現れてきています。


例えば「エンドユーザーが作る」という変化です。

単に情報を発信する立場がさらに進化し、エンドユーザーは「物を作る」という役割まで担いつつあります。

BaseなりStores.jpなりのプラットフォームで物を販売するという形式だけではなく、個人の特徴に合わせて物を提供する「オーダーメイドビジネス」や、ユーザのフィードバックと強く結びついた「コミュニティードリブンな製造業」、発信力のある個人を広告塔とした「個人ブランド斡旋ビジネス」など、新しい業種が伸びつつあります。


エンドユーザーの役割が今後も拡大するのであれば、おそらく「流通」や「決済」にも関わってくるはずです。

C2Cで商品を売るプラットフォームは、単なる中古品の流通市場なのではなく、メーカーの【公式】なものになると思います。

そして、個人が企業に代わり販売するマルチ商法もクリーンで当たり前になるような気がします。


冒頭で「D2Cとは」、
「自社製品をECで売る通販でしょ?」
「オーダーメイドとかパーソナライズかした新興勢力の高級品でしょ?」
という認識は間違っていると言い切ってしまいましたが、

「D2C」の一部にすぎない

というのが正しい表現でした。

「作る」「売る」という単純なビジネスが、現代の消費行動の変化により非常に複雑化してきました。
この荒波の中を乗りこなしてハックした、新しい「作る」「売る」ビジネスの総称を「D2C」と呼ぶのだと思っています。

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