D2Cコスメ N organicのビジネスモデルを勝手に分析 | D2Cスタートアップの教科書
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※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に過去の記事をまとめています。
前回の記事では、先日IPOに向けてS-1を提出した米国のユニコーンD2Cブランド「Casper」の事業実態を分析してみました。
D2Cを運営する上で同カテゴリの商品に限らず他社が展開する通販商品のビジネスを分析することは非常に有用です。
商品そのものは参考にできなかったとしても、広告の打ち方や、LPの作り、細かい売り方(商品)、デザインなど勉強になるものは非常に多い。
特に急成長している商品や安定した人気を誇っており、単月で黒転まで持っていけている商品は要チェックです。
今回は女性向け通販コスメのカテゴリでここ数年急成長している、N organicのビジネスモデルを分析していきたいと思います。
D2Cコスメ「N organic」運営の株式会社シロクについて
株式会社シロクはサイバーエージェントの子会社
N organicを運営する株式会社シロクは、あのメディア・広告代理店事業を行うメガベンチャー「サイバーエージェント」の子会社です。
サイバーエージェントは主力となる広告代理店を自社事業として運営しながら、切り離し可能な一部のメディア事業や今まで取り組んでいなかった事業を子会社として切り離して運営する経営方針を取っていることで有名です。
このスタイルは株主から下手な物言いを避けて新規事業の立ち上げるためと、子会社の「社長」というポストを用意することで優秀な人材を囲い続けられるなどのメリットがあります。
シロクも例にもれず、学生中にアプリで一発当てかけたCA内定者が中心となって2011年に作られた会社です。
もともとメディアだったのに、気づいたら化粧品の販売を開始
自分もシロクという会社については2014年くらいから認知しており、アプリなりメディアなりをやっている会社だと思っていましたが、知らないうちに大きくピポットし、N organicというコスメD2Cを始めており爆益急成長企業に変わっていました。
(ドットアップスというアフィ事業もやっていますが、N organicのボリュームの方が圧倒的かと思います)
公式HPの利用規約をみる限りN organicの販売開始は2017年5月なので、運営開始して丸2~3年かと思われます。
2017年3月にはすでにシロクは調子良かったぽいので、ドットアップスの方で数億程度の利益を得ており、それをN organicに投資したという形かと思われます。
通販系のD2Cはうまく進めると、1年で単月黒字、2年で累積黒字化します。もし事業の成長性が見込めるなら、マクアケも上場したことですし、近々上場するかもしれません。
官報によると2017年から利益をあげ成長
決算公告によると、直近5期分の利益水位はこのような形です。2017年から急に3億を超える利益を出しており、直近も利益ベースで200%も成長しています…!
N organicの販売開始が2017年だとすると、通販事業で初年度から3億も黒字化するのは多分無理?なので、2015年から開始しているドットアップスで3億程度利益をだしていると思われます。
ドットアップスは、ランキング形式のアプリアフィリエイトで、「無料 アプリ」などのビックワードで上位に入りつつ、各種メディアで運用型アフィもやっています。
運用型アフィは投資回収期間も短くROIが合えば広告をぶん回して一気に利益をあげられるので、立ち上げ1年で3億利益とかもあり得ます。ですが、積み上がらないため成長性はないので、2017年から安定して数億程度の利益を出し続けているのかと。
とすると、N organic単体の売上・利益はこんな感じでしょうか?
D2Cコスメ「N organic」の商品力
なんとなくN organicの事業の実態が見えてきたところで、このブランドの商品について調べてみます。
どんな商品なのか
一言でいえば「女性向けのオーガニックコスメ」です。
コスメといっても、いわゆるメイク用の化粧品ではなく「スキンケア」や「ヘアケア」などの表に出にくい商品を販売しています。
ちなみに全く別の株式会社ナプラ(老舗の化粧品メーカー)が運営する「N.」というコスメブランドも少し前から販売しており、ロゴや商品コンセプトがぱっと見ほとんど同じなので、誤認して買った人も多いようです。
通販の商標関係てめちゃくちゃシビアなので先行していた企業から訴訟される気がするのですが、そんな様子もないのでもOEM先として提携してたりするんですかね…?
2か月分のスキンケアローション(100g)が8000~10000円くらいの価格感なので、かなりの高価格帯商品です。
が、もちろん商品はOEM生産で、基礎研究をしてきたわけでもないので原料に特別な工夫があるわけではなく、ほぼほぼただの水です。
ただパッケージはちゃんと作っているので、原価は1500円くらいと思われます。
誰が向けの商品なのか?
ターゲットはF1~F2。
肌や美容に悩みを持ち始めた大人の女性に、シンデレラマーケティングで売っていく感じ。
女性向けコスメの市場環境は?
女性向けのコスメ通販はインターネットが普及し始めた2000年代から伸び続けており、デジタルネイティブなスマホ世代が30代前後に達した近年も成長し続けています。
親会社サイバーエージェントのクライアントにも女性向けコスメの通販企業は多くいたでしょうし、売れるメディアも当たる訴求もCPOも調べ安い環境にあったかと思うので、子会社がダマで通販事業を始めるというのはかなり固い商売でしょう。
どんな売り方をしているのか?
公式サイトからは10種類以上のSKUのなかから8000~10000円の価格帯で単品購入ができるようですが、主力の獲得経路は「トライアルキット1480円」からの定期購入引き上げでしょう。
数千円する商品が80%近く安い金額で単品購入できるので、お得!と見せかけて、本商品の5分の1程度の分量しか入っていないので、実質割引率0%です。
メールマーケやLINE@経由でメルマガを送って定期に引き上げる方法ももちろん実施しているはずですが、一番の定期引き上げルートは「確認画面アップセル」です。
トライアルキット購入時にそのまま定期コースを契約すると、本商品が40%OFFで購入できる上に、トライアルキットも無料で進呈される仕組みになっています。
化粧品通販の前例に則り、親会社ゆずりの広告運用力と資金力でしっかり黒転させるという非常に真っ当な通販の成功事例です。
D2Cコスメ「N organic」の事業計画を逆算してみる
過去にも青汁王子の「フルーツスッキリ青汁」のPLを作りましたが、
同じ方法でN organicについてもユニットエコノミクスとPLを引いてみます。
N organicの原価について
本商品は売り値が9600円であり原価率が20%だとすると商品自体はおよそ2000円、そこに同梱物が300円分と送料負担が300円ほど乗るので、原価は2600円と仮定します。
トライアルキットは分量が5分の1なので、単純計算で商品が400円、同梱物300円、送料300円を乗せて、原価は1000円とします。
N organicのユニットエコノミクス
N organicは商品も複数あり売り方も様々ですが、主力経路の「トライアルキット」->「スキンケア定期コース」を考えてみました。
トライアルからの引き上げ率を25%、その後の継続率はおおよそ他社商品の数値等を鑑みると30%->20%->10%と推移していくと考えられます。
出稿ボリュームが増えた1480円の化粧品のCPAは3500円くらいなイメージなので、投資回収期間は4ヶ月とかなり優秀な通販商品です。
原価が安い商品は強い…!
N organicのPL
色々な仮定と、そこから算出された各KPIの値を元に、今後のPLを引いてみました。
マス広告も打ち始めたとすると獲得単価がどの程度まで悪化しているかはわかりませんが、通販事業は単月黒字になると一気に伸びるので来期の純利益はズバリ「15億円」と予想しておきます。
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