BiblioTALK de KINOKO vol.043のお知らせ|2024-03-27
この告知は、うでパスタが書く。
今月もYouTubeLIVE配信だけはやる。
その日時は、年度末も押しに押し詰まった2024年3月28日(木)20時からである。
「BiblioTALK de KINOKO vol.043」は、九段下の私設図書室ビブリオテーク・ド・キノコからキノコとうでパスタのふたりがお届けするライブ配信である。配信はこの「九段下パルチザン」定期購読者限定で、配信URLは現在お読みのこのノートの末尾、有料部分に記載されている。あと追い視聴やアーカイブ視聴も可能だ。
配信では、みなさんからのお尋ねや単なる声援にお応えしている。
お志(つまり投げ銭)はnoteの「サポート」機能を通じて頂戴しているから、最低百円ということになって恐縮だが一言添えてお寄せいただきたい。
貧窮などの理由でこれが難しいという場合にもどうか顔をあげてほしい。質問箱を通じたお尋ねも可能は可能だ。今回はすでにたくさんの興味深いご質問を頂戴しており時間の都合でお答えしきれない事があるかもしれないが、いずれ必ずお答えするつもりである。まぁただしご理解いただきたいのは、我々は別に「知の巨人」でもなんでもないのであなたはほとんどそのへんを歩いているおっさん二人組にいきなり話しかけて大切なことを質問しているようなものだということだ。
さて、「世界一野球のうまい男」・大谷翔平の身辺に突然降って湧いたスキャンダルに多くの日本人はまだ足もとがふらついているようだ。ネットにはこの一件からもなにか教訓を導き出そうとして何が起きたのかを考察している人と純粋に大谷の名誉を守りたい人の二種類がいて、前者の勘ぐりに対して後者がやたら敏感になっているのが見受けられるけれども、世界観の違いだろう。
前者にとってこの世界とはどこをとってもフラクタルなので、大谷のようなスターの身に起こることも自分の身に起こることもいずれは相似形に過ぎないわけだが、後者はたとえば「テレビの向こう」のスターの生きる世界に自分たちが「近づけるわけがない」という、こういう距離や次元の問題だと思っている。
端的にいって、後者の考えは誤りである。こうした現実認識の歪み、当事者意識の欠如はある日突然落下する砲弾や裁判所からの手紙、ガン告知、火災、巨額の相続などに対して脆弱で、それ自体を防ぐことは誰にとっても難しいとはいえ、こうした人々にとってはそれを受け止めることを非常に困難なものにするだろう。この世界に他人事など存在しないのだ。
今般もう一方の当事者と目される水原一平・元通訳については学歴詐称の疑いが報じられており、それに紐付く形で深くて低い声以外のすべてが嘘だったことが当時一大スキャンダルを呼んだ「経営コンサルタント」・ショーンKの再評価が進んでいる。曰く、「ここまでの嘘が長くバレなかったのは、バレまいとして努力を惜しまなかった本人の能力・努力がもはや嘘を真にしたといってもまったく過言ではないレベルに達していたことを示しているに他ならない」というわけだ。
ショーンKというひとのことを私は実は全然知らなくて、たしかあれはボストンにいた頃に、「経歴詐称であぼーんした」というニュースで初めて知ったぐらいなのでどうでもいいというか何の感情も持ち得ないわけだけれども、しかしこういう味のある人が放逐を経てふたたび迎えられる、そういうことがありうる社会の懐の広さはいいと思う。だいたいドナルド・トランプなんかも、まぁこの場合は私もいいとは全然思わないけれども、あれも何回も企業を破綻させてきた人間で債権者からしたら「勘弁してくれよ」というレベルの人間で、大統領選に初めて出馬したときも、誰だったか忘れたが共和党の重鎮から「何が優れた経営者なんだよ、トランプエアもトランプ大学もみんな失敗して潰しまくってんだよ」というようなことを言われていた(結果、大統領に当選したのはみなさんご存じの通りだ)。そんな人間でもああやって日の目を見る(というかむしろもう眩しすぎて見れない)という、それ自体はいいことなんだと信じたい。
その上で、ショーンKという人について皆さんのいう「能力」と「努力」について私がもっとも重要だと思うのは、氏がどれほど能力に恵まれていて努力を惜しまなかったとしても、あれだけの嘘をつかなければ彼があの高みにたどり着くことは決してなかったであろうという私自身の確信だ。おそらくショーンK自身は今日に至るまでこの件についてはあまり多くを語っていないのではないかと思うが、「努力家だ」という世間の声に対して彼が恥じ入っているとすれば、それはそう言われれば言われるほど、世に数多存在する他の努力家と彼とを分けたのが彼の大嘘に他ならなかったことを彼自身がいちばん分かっているからだ。
いまひとびとがショーンKを称賛すらするとき、彼らは能力と努力が必ず評価されて日の目を見ると信じたいからそうしているのだが、ショーンK自身はそうではないことを知っている。なぜなら彼は、ひとびとが彼の能力や努力ではなく、あるいはそれ以上に彼の嘘をこそ評価し、愛し、称賛した日々のことを決して忘れることがないからだ。そして自分があれほどの嘘をついたのは、まさにその評価や愛や称賛こそが自分の餓えて足ることのなかったものであって、それに比べれば「努力家」の称号やそれに見合った満足など何ほどでもないと、そう分かっているからだ。すべてが暴かれたあとのショーンKしか知らない私は、氏の「見るべきものはもう見た」という態度と、その叶えられた祈りを称賛のまなざしで見つめている。
以下、有料部分にYouTubeLIVE配信URLを記載する。
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