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第21回目~サタンの誘惑⑥~

前回、時代背景をお伝えしました。

ローマ帝国の圧政下にいたユダヤの人々は、力によって国を取り戻したいと思っていました。
そして弟子たちもこの時代に生きていましたので、この考え方に影響を受けていました。

イエスが弟子達と最後の食事をしていた時でした。
(これはレオナルド・ダビンチの最後の晩餐として有名ですね!)
これまでイエスは彼らに、暴力を用いずに対応してきた姿を示し続けていたのに、この日このように言われたのです。

すると言われた。「しかし今は、財布のある者は財布を持ち、同じように袋も持ちなさい。剣のない者は上着を売って剣を買いなさい。あなたがたに言いますが、『彼は不法な者たちとともに数えられた』と書かれていること、それがわたしに必ず実現します。わたしに関わることは実現するのです。」
ルカの福音書 22章36~37節

暴力を否定していたイエスが、「剣を買いなさい。」と言うとは、一体どういうことなのでしょうか。

この箇所の後半で、イエスはご自分がこれから旧約聖書に書かれている通りに、罪人として捕らえられる、と言われました。これはイザヤ53:12に書かれています。
イエスは、いつも例えを使って話をされましたが、ここでは、これから先は苦難の時となる事を示されていたのです。

弟子達はこの奥深い意味を汲み取る事ができず、「ここに剣が2本あります」と答えたのに対し、イエスは「十分」と話されました。

その後イエスは、ゲッセマネの祈りと言われる有名な祈りを神に捧げますが、祈りが終わると、イエスを裏切った弟子、ユダが、役人や兵士を連れてイエスを捕らえようとやって来ます。
その時イエスは、戦わずして自ら捕らえられようとしました。

ところがその時、弟子のペテロが、持ってきた剣で相手の一人に切りつけ、その者の右の耳を切り落としてしまいます。

人生を投げ打ってイエスに従ってきたペテロでした。彼はイエスが捕らえられることなど到底受け入れる事ができなかったのでしょう。
ですが、彼は剣という方法を選択したのです。

するとイエスは、「やめなさい。そこまでにしなさい」と言われた。そして、耳にさわって彼を癒やされた。
ルカの福音書 22章51節

イエスの行いは、いつも変わりませんでした。
敵にさえも癒やしを行われ、決して暴力に訴える事はなかったのです。

人として取れる、弟子達との深いコミュニケーションもこれが最後になる事を知っていたイエスでした。

「自分が捕らえられても、決して暴力で対抗しないように。」

教えや見本を示すだけでは、心から理解できにくい時代に生きていた弟子達に対して、実際に剣を持たせることによって、

「自分の心に憎しみを持つ時、剣を持つことになるのだ」

という、暴力へ至る道をイエスは示されました。

最後の最後まで弟子たちを愛し、神の愛によって、神に仕えることによって解決していくことを教えてくださったのです。

この時代背景を知ることで、暴力を徹底的に否定され、人として生きたイエスを、これまでよりも深く知る事ができました。
それだけでなく、どれほど、私たちはイエス様に愛されているのかも知る事ができて、本当に感謝でいっぱいになりました。


ではまた次回。


Have a great day!


※絵はフラ・アンジェリコ作「キリストの捕縛」です。

21回




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