慕情
太陽
夏の故郷が目の裏に見える
日差しと、青空と、白雲と、公営住宅
砂浜と、海岸と、山と、展望台
日暮れと、漁港と、廃墟
工場と、港と、橋
おれは心休まらぬこの場所を嘆く
倒れている部屋の中で故郷を思い出す
あの場所に居たい
そう思うのは
残してきた心を晴らしたい気持ちもあるのだろう
故郷の陽を受けた君の笑顔を幻視した
月に恋した大莫迦者
水面に浮かぶあなたを見て
その輝きにときめいた
水中へ飛び込んだって
水の網に留められるのでしょう
空に浮かぶあなたを見て
その明るさに愛を見た
空に手を伸ばしたって
天蓋に阻まれるのでしょう
遠くへと去るあなたを見て
その姿に哀しさを覚えた
私が手を振ったって
日差しに隠されるのでしょう
そうやって 後になって気付くのです
水底からあなたが泳いで来ていたこと
天蓋をあなたが開いていたこと
日差しの中あなたが手を振っていたこと
あなたは私を見ていたのですか?
私はあなたを見ていなかった
見ていた自分ばかり私は見ていた
だから贖罪に私はあなたから永久に去るのです
逢えたなら
いつか逢えるなら わたしのことを忘れていてほしい
いつか逢えるまで 覚えてるから
あなたの待つ手をそっと触れて暖めれば
きっとわたしは救われてたのでしょう
あなたの待つ手は冷え切って
きっとあなたはこごえてるのでしょう
いつか逢えるなら わたしのことを嘲ってほしい
いつか逢えるまで 謝ってるから
あなたの笑みにそっと答えていたのなら
きっとわたしはここにはいなかった
あなたの笑みはそっと消え去って
きっとあなたは待っていたのでしょう
いつか逢えるなら わたしのことを忘れていてほしい
いつか逢えるまで 罪を背負うから
いつか逢えるなら わたしのことを忘れていてほしい
いつか逢えるまで 覚えてるから