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BH本国ブログ『蓋はしないで大丈夫』
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浸漬法のコースを執筆しているときに、奇妙な現象に気づきました。フレンチプレスでコーヒーを抽出するときに蓋を外しておくと、収率が大幅に増えました。私たちの予想とは逆の現象です。
蓋をしたままにしておくことで、水の熱さはより長く保たれ収率が増えると大抵は予想するでしょう。暫定的にですが収率を最大化するには、少なくともクラストを壊すまではフレンチプレスに蓋をしないことをバリスタハッスルは推奨します。
実は私達は以前からこの現象には気づいていました。カッピングでブレイクをする最適なタイミングを決めるための実験を行っている時でした。
その実験では、カッピングボウルをポリスチレンの蓋で覆うことで、カッピングボウルの表面を断熱するクラストにカッピングが依存しないようにしました。ポリスチレンの蓋を長く置くほど、収率が減少することがわかりました。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57319889/picture_pc_dc16223f028e32d4b4052e3804f2e5cc.jpg?width=1200)
カッピングでの収率がより減少したのは、より長く覆われていたカッピングボウルでした。
当時私たちが思いついた最も良い説明は、蓋からの結露の滴がクラストに落ちて、クラストを早い段階で部分的に壊しているかもしれないということでした。しかし、これら2つの実験を公開した後、アボット教授とBHリーダーのマット・パーガーはそれぞれほぼ同時に、よりエレガントな説明を提案しました。蓋を外して表面を冷やすと、対流の形成を助けて収率が増加するということです。
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![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57319951/picture_pc_d9237c575f1fac89044e54bbf0377b5a.jpg?width=1200)
フレンチプレスの対流。蓋を外すと、蒸発により上部の液体がより速く冷却され、温度勾配が大きくなります。温度勾配が大きいほど、対流が大きくなります。
フレンチプレスの蓋を外したままにすると、蒸発により液体の上部が冷えます。これにより温度勾配が起こり、下部が高温になり、上部が低温になります。お湯は冷水よりも密度が低いので、お湯が上昇します。
一方、上部の冷たい水は下部に沈みます。これにより、液体に循環電流が発生し対流となります。
対流が実際にこの奇妙な現象を引き起こしているかどうか、またはクラストに干渉する結露の滴によるものかどうかを確認するために、簡単な実験を行いました。私たちはカッピングボウルでコーヒーを抽出し、一部のカップでは、蓋として凹型の皿を使用しました。蓋を暖かく保つためにお湯で満たした蓋と、蓋を冷やしておくために氷で満たした蓋です。
![スクリーンショット 2021-07-22 220929](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57320256/picture_pc_3547ed4c9511b548688ce85c015ee5f2.png?width=1200)
左側が氷で満たされた冷たい蓋、右側が沸騰したお湯で満たされた加熱された蓋。
蓋が対流を妨げている場合は、冷えた蓋は温度勾配を大きくするため、蓋を冷やしたボウルでの収率が増えると予想されます。一方、蓋からクラストに結露が滴り落ちるために抽出を妨げていた場合、冷たい蓋はより多くの凝縮につながるため(また同時に抽出温度の低下も起こります)、冷やした蓋のボウルでは収率が少なくなると予想されます。
蓋なしで3カップ、加熱蓋付きで3カップ、冷却蓋付きで3カップを用意しました。 BHカッピングプロトコルに従って抽出し、8分が経過するまで蓋を所定の位置に保ち(カップを攪拌およびクリーニングする場合を除く)、各カップの収率を測定しました。収率は、各カップから3つのサンプルのTDS平均値から計算されました。
![グラフ日本語](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57321368/picture_pc_325ef82ffcb8e46896228d054ead5994.png?width=1200)
以前の実験と同様に、蓋を加熱したボウルの収率は、蓋のないボウルよりも低いことがわかりました。ただし、蓋を冷やしたボウルの収率は、蓋のないボウルよりもわずかに高くなりました。これは、収率の増加が実際にボウル内の対流によるものであることを示唆しています。蓋に氷があると全体的な抽出温度が下がりますが、対流の影響は十分に強いため、実際には収率が増加しています。
しかしながら、以前フレンチプレスの蓋を外したことで収率が19.7%から22.1%へ増加した時と比べると、このカッピングでの各抽出による違いはかなり小さいものでした。これは、熱の多くがボウル自体を介して失われるカッピングボウルに対して、フレンチプレスではより蒸発冷却の方が重要である可能性があります。
それでこれは一体何を意味している言えるのでしょうか?フレンチプレスであろうとクレバードリッパーであろうと浸漬法で抽出している場合、不思議に思われるかもしれませんが、蓋を外したままにすることで収率を高めることができます。熱を失いすぎることが心配な場合は、抽出の観点から蓋をするよりも側面からの熱損失を防ぐ方が効果的です。おそらく、抽出器具用の断熱材を選択するか、一度の抽出する量を増やすと良いと思います。
ただし、この効果は3つの別々の実験で確認されていますが、現象に関するデータはまだ限られています。そのためデータを統計的に有意性があると呼ぶには不十分です。さらに多くのデータを収集し、材料の選択や抽出器具のサイズなどが結果にどのように影響するかを調べ、また最も重要なこととして、これが味にどのような影響を与えるかを確認することです。そこで皆様のサポートが必要です!自宅やカフェでフレンチプレスを使用していてデータを提供できる場合は、次の手順に従って、この現象の解明にご協力いただけると幸いです。