『幸運の呪物』
※月に1度、とあるサークルに参加して居り、幾人の方々からは認知して頂ける様になって参りました。プレゼンに対するコメントを頂けるなど嬉しい限りで、心ばかりの小物を作成して、ネタに絡ませてプレゼントさせて頂いた時のシナリオとなります。
お耳汚しを失礼致します。
これは、幸運のお守りをアレンジして作ったビーズアクセサリーのストラップです。
光沢のある赤黒ツートンのビーズと、金色を指し色にしてアバンギャルドに仕上げました。はっきりとしたコントラストも相まって、力強くドラマチックな印象を与える様に作りました。
適当に回しますので、もし宜しければお近づきの印に貰って頂けると嬉しいです。
貰って下さった優しい方は、話を聞く間だけで構いませんので暫く握って於いて下さい。自分がストラップの持ち主ある事をしっかり教えてあげて欲しいのです。
さて今回は、私が学生の頃、講義中の雑談で教授から聞いたOBのお話なのですが…。
約2年間、日本の病院で診療放射線技師として従事して居たOBは、突然アフリカのザイール(現:コンゴ民主共和国)に「JICAの青年海外協力隊」として参加したのだそうです。
「先生これお土産です。」と、先生はOBから赤いブレスレットを手渡されました。
「先生知ってますか?ザイールって数百の民族が存在して居て、民族間の権力争いや資源の奪い合いが紛争の原因になって居るんです。」
「未だに小さな村同士で『いさかい』が在るんですよ。」
「何代前の誰々が家の家畜のヤギを盗んだとか、仲の悪い隣村の男に娘が連れ去られたとか…。そこで今でも重宝されて居るのが呪術師で、この様な問題解決の為に呪術を施すのだそうです。」
赤いブレスレットを指さしながらOBは、
「占い婆曰く、このブレスレットは『赤く輝く呪いのブレスレット』と言われて居て、隣村の村長を呪い殺した呪物として知られて居るらしいですよ。」 と聞くや否や、先生は、
「そんな物要らんわ!」と跳ね除けたのですが、
「まあまあ最後まで聞いて下さい。」とOBは話を進めるのです。
「先生、呪いなんて無いですよ。」
「このブレスレットの赤と黒のビーズは『トウアズキ』と云うマメ科トウアズキ属の種子で、熱帯地域、特にインドやアフリカに広く分布して自生して居る植物なんです。」
鮮やかな赤と黒の種子は数珠や装飾品として呪い(まじない)に用いられ、非常に有毒なアブリンという毒素が含まれて居り、これは青酸カリ(シアン化カリウム)と比較すると『1,000倍』も強力な毒性が在るのだそうです。
アブリンはタンパク質合成を阻害し、細胞死を引き起こす為、経口摂取や吸引、注射などで体内に取り込まれた場合、吐き気や嘔吐、頭痛に始まり、呼吸困難や臓器損傷を経て、痙攣、出血、多臓器不全を起こし死に至ります。
租借した場合の致死量は、種子1~2個。噛んだり破損した種子に触れる事で毒素が体内に入り、重篤な中毒を起こすのです。
呪術として使う場合、種子に穴を開けて装飾品を作り微量のアブリンを経皮接種し続ける事で死に至らしめる、これが所謂、呪いなのだそうです。
「要は、死因は呪術では無く、毒による中毒死なんです。」
「だから昔から呪いのアイテムとして良く使われて来たんです。」
そうOBが自慢げに説明すると、
「尚のこと要らんわ!触ったやないか!」と先生は激怒したそうです。
「口に入れなければ大丈夫やないですか?」 とOBは笑って誤魔化したのですが、度を超した冗談は許されなかった様です。
処で、皆さん幸運のお守りはしっかり握って下さって居ますでしょうか。
持ち主が分からなくなると効果が薄まるかも知れませんので、握っておいて下さいね。温まると、小豆の様な良い香りがするんです。
話を戻しますが、このOBは、発展途上国に一人で旅行するのが好きで、或る時、南米ペルーを訪れた事が在ったそうです。
ある土産物屋でエケコ人形を見つけて入店した際、店主とラッキーアイテムについて話して居ると、 「こう云う幸運のブレスレットもあるよ。」と、勧められたのが、ザイールで占い婆が見せてくれた、『赤く輝く呪いのブレスレット』と瓜二つの赤黒のブレスレットだったのだそうです。
店主曰く、これは『ワイルーロ』と云う、南米産のマメ科オルモシア属の種子で、ペルーやボリビアの伝統工芸品に使用され、幸運や魔除けのシンボルとして装飾に使われて来た物なのだそうです。
食べる事は推奨されて居ませんが、一般的に毒性は無いとされ、持つ人を幸運にすると言われて居るお守りです。財布に入れると財運アップ、身に着ける人を、嫉妬の気持ちなどからも守ると言われて居ます。
また、この種は赤黒のオスと赤のみのメスがあることから、恋愛運、夫婦仲アップの効果が在ると言われ、カップルがお揃いで着ける事もあるそうです。
さて、お話は以上なのですが、皆さんの手の中にある赤黒のビーズは、どちらですかね。
以上、『幸運の呪物』と云うお話でした。
ご静聴ありがとうございました。