「美味しさ」の作り方を求めて
美味しいと感じるものの正体はなんなのであろうか。それがわかればシンプルなのだが、そうも上手くはいかない。インド料理、スパイスカレー、スパイス料理などはシンプルになっているところが多い。スパイスの香りと商材、そして塩。日本独特の「UMAMI」と言うものを調理する行程であまり聞かない。しかし玉ねぎやニンニク、生姜そしてトマトなどを熱することや炒めること、煮込むことで得ようとしているのはUMAMIなのかもしれない。そしてトマト、ヨーグルトと肉と掛け合わせると得られる独特の美味しさも旨みである。使っている食材、調理の仕方、掛け合わせ方をみていくとそれがお「美味しさ」の道しるべになっているのかもしれない。そして道に迷った時に頼りになるのが「UMAMI」の作り方でもある。
どのように美味しいカレーを作る方は人それぞれであるが、場合によっては作りたいものを作るために必要なものが揃っていない場合もある。今の時期だとスパイスカレーに頻繁に登場する「トマト」が手に入りにくくなっている。インド料理でも欠かせない食材の一つであるが、昔からあるかといったらそうでもない。トマトがインドにやってきたのは1500年代、アメリカ大陸で食されていたトマトをポルトガルやスペインなどが船で各地に運んだことが所以でインドにも伝わってきた。トマトから出てくる独特の旨みの元であるグルタミン酸がなかったかと言うとそうでもなく、インドでははるか昔。約5,000年前からヨーグルトを使っていた。乳酸菌がタンパク質を分解してグルタミン酸を増やしてくれるそうであるが、トマトが伝わったことでヨーグルトの代わりや使われていたところにトマトが使用されるようになったのではないだろうか。そして出来上がりの味は少し違うが調理する行程で求めようとしている「美味しさ」は旨みであるとしたらトマトを使う調理行程をヨーグルトで代用したり、その逆でも美味しいカレーが出来上がるのではないだろうか。
実際に何通りかの調理手法でトマトとヨーグルトを使ってみたが、出来上がりの見た目は違うが、どちらも旨みがでた美味しいカレーに仕上がった。
「ない」状況になると色々なアイディアが出てくるのであろう。私の祖母は日本に来た時にタマリンドやコカムといった酸味と甘みを兼ね備えた調味料が手に入らなかったので梅干しと黒糖を使ってダールカレーを作っていた。バジルが手に入らなかった時は紫蘇を使っていたそうである。インドのジャイナ教の人々は玉ねぎやニンニクなどが宗教上使えないのでヒング(アサフェティダ)を料理に多用するようになった。
美味しさを作れる色々な方法を知れば料理の幅はもっと広がるのであろう。なんだかスパイスの組み合わせを色々と知るのと似ているようなな気がする。