スパイスの価値
スパイスの歴史を遡ると遥か昔までいくことができる。
クレオパトラ、ソロモン王に楊貴妃、暴君ネロにヴァスコ・ダ・ガマ。誰もが一度は聞いたことがあるような人物がスパイスにまつわる話を持って登場する。
それほど神秘なものとしてスパイスは人々を魅了していったのであろう。ヨーロッパでは12世紀から17世紀にかけスパイスの利潤が経済に大きな影響を与えた。アラブの商人などからベニスやジェノヴァの商人がスパイスを仕入れ、ヨーロッパの他の地域に流通させていった。シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場するアントニオの船にもスパイスを積載されていることが記述されている。そして海洋貿易の危険さについても書かれている。
黒死病などを経て、スパイスの需要が高まった西欧ではアラブの商人やヴェニスの商人に高いお金を払うより自ら船を出しインドやインドネシアに買い付けに行こうという動きが活発化していきコロンブスやマゼラン、ヴァスコ・ダ・ガマが登場する。リスクが高くコストも高い陸路でのスパイスの流通が海を使うことによってリスクもコストも減り、スパイスがより身近なものになていったそうである。スペイン、ポルトガルに続きオランダ、イギリスなども大航海時代に突入していき次々とアフリカ、アメリカ、アジアの様々な地域を侵略していった。スパイスは人も時代も大きく動かしていき、その価値は金や銀などと同じように取引されていたようである。
クローブや胡椒などの栽培がより広範囲で幅広く行われるようになり、スパイスの貨幣価値というものは下がっていったそうである。
よく言われる、昔は胡椒って金と同等の価値があったんだと言われるが、調べてみると時代や地域にもよるがそんなに高価なものではなかったようである。それほど需要が高まらなかった17世紀の日本では今よりも安く胡椒が買えたのだとか。
時代や地域によってスパイスの需要も価値も変わってきた。ある時は貨幣のように取引されていた時代もあったそうである。
スパイスの価値について考えを巡らせていると、大学生達が私を訪ねてきた。
彼らはスパイスからカレーを作ることを学び何かSDGsなことをしたいと考え、農家などで出てしまう販売することが難しい野菜達を使いカレーを作りそれを販売することにした。ただし、値段は「言い値」である。客が自分で決めて彼らにカレー一杯分の料金を払うのである。私はそんな彼らの活動を見ていて新しい価値というものが見えてきたような気がする。客はカレー一杯の料金を払うために大学生達の活動や考えを知った上でそれにお金を払うのである。一般的な一杯のカレーの値段ではないのである。
スパイスの価値がお金ではない何かに変わろうとしている。それはスパイスだけの話でもない。
何をどう売るのかよりも何をどうしているのか。
大学生の活動を通して我々がスパイスを通して実現していきたいことがおぼろげながら見えてきた。
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