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スパイス屋のおじいさんがその孫にスパイスを通して生きていく上で大切なことを教えていく映画があった。ブラックペッパーは太陽、シナモンは金星など様々なスパイスを色々な惑星に捉えてその特徴を説明しているシーンがあった。そして孫に「地球はなんだと思う?」と聞く。悩んでいる孫におじいさんは優しく教えてあげる。

「地球は塩だよ」

 そしてそれはバランスだとか、料理に命を吹き込んでくれるものだとか、言っていたような気がするが、「塩は地球」というおじいさんの言葉がスッと私の中に入ってきた。

 スパイスを使って様々な料理は彩りを豊かにしてくれるし、風味を明るく、楽しくしてくれる。スパイスの持っている香りが料理に深みや辛み、爽やかさ、苦みを与えてくれる。そしてそれは豊かな香りとなって我々の食欲を刺激してくれる。

 しかしその豊かな風味も「塩」がないと生き生きとしてこない。それはスパイスは「香り」であって「味」ではないからである。日本では味噌や醤油など発酵調味料を使うことによってそこで塩味を料理に加えて味を作ることができているので塩は最後に味を整える程度に使うことが多いが、スパイスから作るカレーやインド料理は発酵調味料をあまり使わないので「味」を作る大事な部分を「塩」に頼ることが多い。スパイスは香りが大事で、それがほぼ全てといっても良いくらいである。

 よくスパイスからカレーを作って見た方の感想を聞くと「何か物足りない」「味が足りない」といってスパイスをさらに足してみたけどうまくいかなくて諦めてしまった。などといった話をよく聞く。ほとんどのケースはスパイスが足りなかったのではなく、塩が足りなかったことが多い。
 「スパイスは香りであって味ではない、味を作るのは塩が大事」

スパイスの組み合わせや活かし方もとても大事だが、しっかりとした塩使いがスパイスからカレーを作るにも、スパイスを生かして美味しい料理を作るのにもとても大切である。

 スパイスからカレーを作る時はスパイスの香りを引き立てるように作っていくことが多い。最初の油でホールスパイスの香りを引き立て、玉ねぎやニンニク、生姜を炒めたらターメリックやコリアンダー、レッドペッパーなどそのカレーの中心の香りを加えて炒めることが多い。その料理の中心の香りのスパイスを加える時にその料理に必要な塩を加えることでしっかりとした「味」を作ることができる。

 優秀なスパイス使いは優秀な塩使いでもある。

 何か物足りないと思ったら最初に塩加減を疑ってみよう。

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