日曜カレー劇場
「インド人の考えた日本のカレーです」
アナンのカレーブックの表紙に書かれているキャッチコピーは41年間変わらない。そしてその41年間を通して様々な人がカレーブックを手に取り新しいカレーの物語を紡ぎ始めた。実家の母がカレーブックでカレーを作っていた方がカレーブックを見つけて懐かしんでいただけたり、料理を作るきっかけになりレストランを始めた人がいたり、カレー作りの面白さをカレーブックを通して目覚めカレー屋さんを始める人がいたりと様々である。
1983年に誕生した「カレーブック」。カレーをスパイスから作るという習慣はほぼなく、ホールスパイスを油で最初に炒めるという工程が多くの人に衝撃を与えた。そしてそれは瞬く間にたくさんのスーパーやデパートに並ぶようになった。
本を開くとワクワク感がある。作り手のカレーとの物語が新しく始まる。41年前から今までたくさんの人たちのカレー物語の大事な1ページとなり、その後日本のカレー業界に大きな影響を与えていく人たちになっていった。「インド人が考えた日本のカレー」はいつしか「日本人の考えたインドのカレー」を作るきっかけの一部になり「スパイス」とレシピ」だけがセットになっているカレーブックには作り手や食べ手の裁量や自由度が入り込めるようになっているのでそれぞれで新しいカレーの物語が始まっていく。
インドから日本にイギリス経由でカレーが伝わった1800年代。カレーライスではないインド料理が広まった1970年代。そして1980年にスパイスからカレーが誰でも作れると伝えた「カレーブック」。インド人が作るのではなく多くの日本の人たちがスパイスからカレーを作り始め、そこからまた新しいカレーが次々に誕生していった2010年代。インド料理に日本の人たちの感性が入り独特なスパイスカレーというものも誕生した。インド料理のテクニック。日本に長く愛されているカレーライス。
そしてこれからは約150年の歴史を経て日本で育った技術とセンス。インドから伝わった伝統、歴史、多様性が重なり合い新しいカレーの歴史が紡がれていくのではないだろうか。
インド人が考えた日本のカレーは日本人が考えたインドのカレーになっていき、そしてインドと日本のカレーになっていくのではないだろうか。
カレーブックから始まったカレーの物語。巡り巡ってやってくるのは「日式カレー」
カレーの世界に新しい文化が生まれてくる。
2025年1月12日(日)から始まる「日曜カレー劇場」
インド人の考えた日本のカレーの物語。螺旋状にぐるぐると回りながら強い糸を紡いでいく。
その先はどんな物語が待っているのか、カレーブックの物語はまだまだ続いていく。