芋がらとスパイス
ちょうど一年くらい前から毎月埼玉県は飯能にある「たいら栗園」というところで料理教室を開催している。せっかく行くのだからとカレー2、3種類と季節の野菜を使ったスパイス料理を何品か作る。毎月通っていると何度も参加してくれる人などいて顔なじみもできてきた。飯能市の観光のエコツーリズムの一環で開催しているので何かしら地元のものを毎回使っている。栗園なので栗を使ったハンバーグみたいなガラウディというものを作ったり、蕗の薹をひよこ豆と一緒に揚げたパコラというものや、のらぼう菜、ブルーベリーのさっぱりとしたアチャール、いちごはチャツネとアチャールにしてみたりとか、キウイもあったような気がする。冬を乗り越えてチラチラと桜が見えたと思ったらブワッと深い緑に覆われていく山々。秋には秋の色をたくさん見せてくれる。そんな風景を眺めながらの料理教室に行くのも月々の楽しみになりつつある。
主催のたいら栗園の廣田さんがお題のように毎月の地元食材を教えてくれる。お題の食材から何を作ろうか考えるのも楽しみの一つである。いちごのチャツネは焼いたお肉やカレーの付け合せにもなると喜んでくれた。蕗の薹はパコラの他にもアチャールにしてみたが程よい苦味とスパイスの辛みが合わさって良いレシピが生まれた。そして前回いただいた”今月の使って欲しい飯能食材”が「芋がら」というものであった。初めて聞く名前にワクワクしたが、味も形状もわからない。聞けば八つ頭や里芋の茎の部分を剥いて干したものであるらしい。そういえば洗濯バサミで挟まれた紐状の何かを料理教室帰りにみたような気がする。煮込んだり、炒めたりして食べるのだそうで、昔から食べられていると教えてくれた。しゃきしゃきした食感という人もいたり、柔らかいと答える人もいた。とりあえず実物を見てから考えてみようと当日の料理教室を迎えた。確かに見た目は柔らかそうでもあり、しゃきしゃきしてそうでもあった。どちらにしても味はそんなにないらしいのでしっかりと味がつくアチャールにしてみようとスパイスの辛みをしっかりと効かせたものを作ったらシャキッとした食感とピリッとした辛みが良い感じになり、参加してくれた方々がお代わりしてくれるようなレシピが出来上がった。
調べてみると結構昔から食べられているそうで、古くは戦国時代の武士たちの陣中食でもあったそうである。芋がら縄と呼ばれ、干した芋がらを縄状に結び味噌で漬け込む。紐状になっているので本当に縄の役目として荷物を縛ったりしていた。腹が減ったらそれをちぎって食べたり、お湯に入れて味噌汁にして食べたりしていたそうだ。荷物をなるべく減らしたい戦いに行く武士たちにとっても重宝したらしく、すぐに食べられる栄養価が高いものとして一翼、いや二翼、三翼を担っていたそうである。
生のものは芋茎(ズイキ)とも呼ばれ今でも様々な料理に使われ、愛されているそうである。
先人の知恵というものなのか。芋がらの存在とその歴史を知ってとても感銘を受けた。
スパイスをツールとしてその土地の歴史や風土を知れることができてとても嬉しかった。