見出し画像

ワインを飲むためのスパイスミックス


 情景が浮かぶような表現。手に取ってみたくなるような言葉。新しい世界を見せてくれる仕草。
 ワインを表現するようにスパイスを表現できたらさぞ素敵なんであろう。

 少し前、フランスのローヌワインが一般的にスパイシーだといわれているとかで、ローヌワインを日本で紹介するにあたりワインに合うスパイスミックスをブレンドしてほしいと依頼を受けた。フランスの食文化を日本で紹介する団体からの依頼でフランスの依頼主はローヌワイン委員会なのだとか。

 オリジナルのスパイスミックスを作るときに何を考えるのであろうか。もちろん依頼人のニーズに合わせてブレンドを作っていく。香りの記憶と情景を思い浮かべながら作ることが多い。「香りの記憶」というものをなるべく自分の中に貯めていくことで新しいミックスや料理を作るときにその記憶から引き出すようにしている。情景というものも私に取っては大事で料理を作りたい「時」「人」「場所」「理由」などがあると柔らかい味なのか、パンチが効いたものなのか、深みがあるものなのか、などと想像できる。
「真夜中の砂漠、満点の星空の下」
「柔らかい朝日が差し込むカーテンの隙間」
「誰も知り合いがいない港町の食堂」
それらが舞台だとしたらスパイスミックスの背景になる。そこに「人」や「思い」などをアクセントのスパイスとして入れていく。

今回のローヌワインに合うスパイスミックスをブレンドしてほしいといわれ、情景を思い浮かべてみる。赤ワイン、白ワインにロゼワイン。どれもしっかりとした味わいがスパイスが効いているようである。どのような場面で飲みたいかを想像していくとスパイスと合わせたい食材も思い浮かんでくる。

日本でフランスワインを紹介したいと思うローヌの人たちに日本の良さもスパイスを通して紹介できたらさぞ良いだろうと思い、それを「思い」としてスパイスミックスに入れてみた。赤ワインに合わせたスパイスミックスにはコリアンダーやキャラウェイ、パプリカにオレガノなどを混ぜ、どこかモロッコからスペインそして地中海の沿岸のような香りにしてみた。そこに日本ならではの「椎茸」をブレンドすることによって日本の「思い」と「旨味」を加えることができた。そして赤ワインに合うであろう肉料理がさらに美味しくなると思う。白ワインには柑橘系の香りを背景に日本ならではの「山椒」、ロゼには南仏をイメージしたブレンドに「昆布」を加えてブレンドを作った。

ワインを飲む人々が様々な表現をしてそれぞれのワインにストーリーを加えていく。ワインを作った人々はどんな気持ちで作り、どのような表現をしているのであろうか。ワインに合わせたスパイスを使う人たち、味わう人たち、香る人たちがそれぞれのスパイスミックスをどのように表現して新しい物語を作っていくのだろうか。新しい世界がまた広がっていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?