夢のキッチンカー
本当か冗談かわからないが、私の祖父はインド独立運動に貢献したということでインド政府から土地をもらえることになったのだとか。さてどの土地が良いか、探しに行くためジープに乗りインドの様々なところを旅したそうである。
知らない土地や、新しい風習に出会うとゾクゾクゾクっと足の付け根あたりから何かがやってくるのをたまに感じる。きっと嬉しいのであろう。
スパイスを手にして、地域の様々なものや人と一緒に何かを作らせてもらえるようになり、色々なところに行ってきた。料理を教えたり、商品を一緒に作ったり、その地その地で出会う新しい風習にまたぞわぞわとした感じを受けてきた。
キッチンカーでカレーを売りたいと2人組の女の子が訪ねてきたのはそんな時でもあった。2人組の女の子は毎日のようにスパイスからカレーを作ってみては友人や家族に食べさせてもらっているのだとか。そのうち彼女たちらしい味わいのカレーが出来上がっていくのであろう。そんな二人を見ているとあーでもないこーでもないとやっているのが実に楽しそうである。爽やかな香りを行く先々で残していくようなフェンネル使いが上手なカレー屋になるのかもしれない、もしかしたら上品な香りを残していくカルダモンのようなカレーかもしれない。インパクトを残すレッドペッパー、異国感溢れるナツメグ、オリエンタルなスターアニス。手の届かないサフラン。懐かしさを感じさせるクローブ。クミンで食欲を掻き立てるのも良いかもしれない。と勝手に想像してはキッチンカーの今後を楽しみにしている。
万能なスパイスミックスなんてのはないのかもしれないが、そんなものができたらそれを持って日本中や世界をキッチンカーで旅したいものである。それぞれの土地のマーケットや畑や港に立ち寄っては美味しそうなものを手に入れて調理してはそこの人々と一緒にテーブルを囲んでワイワイとやりたいものである。きっと毎回が驚きの連続なんだろう。
インド政府から土地をもらえるということで土地探しの旅に出た私の祖父だが、結局土地はもらわなかったそうである。旅にでる口実が欲しかったのかもしれない。そしてきっと土地より素晴らしい何かを手に入れたのかもしれない。
私もそのうちカレーを売らないキッチンカーでのんびりと旅がしたいものである。きっとお金より良いものが旅で得られるはずだから。
素敵なテーブルクロスも用意しておこう。
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