明遍僧都の来歴
明遍僧都は鎌倉時代の僧で、法然上人に感化を受け、三論宗や密教の聖道門から専修念仏の浄土門に転向したことで知られる遁世の念仏者。
『四十八巻伝』中の第十六巻に明遍上人の来歴が記載されている。
その後に浄土門に帰依した由縁は以下のようなことである。
生き方を変えた明遍僧都
浄土門に転向後の明遍上人の態度はそれまでに修めた学問や行は全て捨て去るという徹底したものであった。道元上人の『正法眼蔵随聞記』にその様子が記載されている。
※空阿弥陀仏=明遍
人間は生き方を変えようとした時にそれまでの自分の業績や成功体験といった積み上げてきたことを思い切って置いていくことができないことが多い。
明遍上人は三論宗・密教などの碩学と云われるほどであるにも関わらず、進むべき生き方を見つけた後はその生き方に専念することを貫いたわけである。
批難や誹謗も意に介さない明遍僧都
また明遍僧都は誹謗中傷や批難に対しても徹底している。
『四十八巻伝』中の第四十巻には、ある人が明遍僧都の信ずる念仏思想を非難する書物が出回っているからその内容を確認したらどうかと言われた時のその態度である。
誹謗中傷や批難などについ目がいってしまい、その結果、心が沈んでどうにもならなくなることはよくあることだが、明遍僧都の場合は全く関わるつもりはないとはねつけているところに僧都の確固たる生き方があることがわかる。
明遍上人だけではなく、日本歴史上・仏教史上に様々な人物がおり、その中の一人の人間に着目してみるとその人間の生き方や信念から大いに感化され得ることが多分にあるといえるだろう。