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えばとん情報2024.12.9「セットピースに嵐が吹く」

嵐がもたらしたものは?

燃えたぎっていたのに、極東のダービー仕草は鎮火してしまった。予定されていた東京での観戦会は"交流会"へと変更せざるを得なくなったけど、それはそれで楽しいイベントになったとのことで一安心。また月末にはマン・シティ戦の観戦企画も予定されているので、そちらで鬱憤を晴らしていただきたい。

週末のダービーが延期となったことで、クラブにとっては試合にかかる運営費、人件費、警備費用などを含めると結果的に損失を出すことになる。

一方、そのようなネガティブな要素の裏で、ポジティブなお話も。試合に向けて用意された生鮮食品は「Fans Supporting Foodbanks」キャンペーンに寄付され、その他の食料品はクラブのチャリティー部門「Everton in the Community」に届けられ、来週から使用されるとのこと。

オーストラリアからリバプールに訪れる予定だった15歳の少年にはキャプテンの粋な計らいによって、思い出を別の形で残すことができそうだ。

土曜日の延期を誰よりも気にしているサポーターのひとりが、オーストラリアのティーンエイジャー、マッケンジーだ。
シドニーに住む15歳の少年は、大好きなエバトンがレッズと対戦するのを見るため、リバプールへ行く旅費を捻出するために何ヶ月も貯金をしてきた。
北西部の親戚の家に滞在しているこのティーンエイジャーは、水曜日にグディソン・パークで行われたウルブズ戦に4-0で勝利したが、この旅のハイライトとなるはずだったのは土曜日のリバプール戦だった。
マッケンジーはBBCマージーサイドにこう語った。
「窓の外を見て "そりゃこうなるか"と思ったよ。 ちょっと悲しかったけど、大きな暖かい家に居座って、僕を愛してくれる人たちに囲まれているんだから文句は言えないよ」
延期の埋め合わせとして、クラブのキャプテンであるシェイマス・コールマンは10代の若者にビデオメッセージを送り、月曜日にクラブの練習場を訪れるよう招待した。
「すごいことだよ。 シュールだったね。ちょっとピンチな瞬間だった」とマッケンジーは言う。
「僕がしたことは飛行機を予約しただけなのに、フットボールの試合観戦からこんなことになるなんて。全選手を見ることができるのは素晴らしいこと。それを見ることができる人はあまりいないから本当に感謝しているよ」

BBCマージーサイドより

さて、チームの方はというと次節アーセナル戦へ向けての準備を整えなければいけない。少なくとも1試合分の休息を得て、トレーニングに集中する時間を獲得できたと捉えたい。

3人の選手が復帰するかもしれない、と伝えたのはエコー紙のトーマス記者。
先日、アカデミーのゲームで70分出場したシェルミティ、膝の故障で離脱したキーン、怪我明けでベンチ入りしていたコールマンにトップチーム出場のオプションとして計算が立つようになる。イロェブーナムは一歩前進、今月末に復帰できる状態まで回復してきたとのこと。ガーナーはまだ時間がかかりそう。

ウルブズ戦の勝利から良いムードになったとは言え、中2日だった土曜日のゲームと思うと大きな負担を回避できたのは前向きに考えたい一方で、厳しい日程を後回しにしただけ…と思わなくもない。エバトンはリーグ戦+FA杯ピータバラ戦、リバプールに関してはPLに加えてCLとカラバオ、同じくFA杯アクリントン戦を残しており、1月の末までは最低でも予定が詰まっている状況。代替日が決まるまでにはこれらの進捗次第になるだろう。互いの日程がどのように有利/不利に働くか、リバプールの方が消耗の激しいシーズンであることに変わりなく、エバトンとしては少しでも完成度を高めたいところ。

マージーサイド・ダービーはお預けになったけれど、ビッグクラブとの4連戦が3連戦になっただけである。だが、この嵐が我々にとってのリーグ戦を左右する可能性があるかもしれない。うねりの前に嵐あり。

セットピースFCの名にかけて

試合が無かったおかげで、えばとんニュースが少ないものだからThe Athleticにて次節のお相手アーセナルの記事に手を伸ばした(有料記事)。
マン・ユナイテッド戦での2得点勝利、フラム戦での1-1ドローはいずれもコーナーキックによるもの。あら、仲間じゃないですか(一緒にするな)。まあ、これは今季に始まった話ではなく、昨季もセットピースでエバトンよりも上に立ちはだかっていたのはアーセナルのみだった。ニコラス・ジョバー氏というスペシャル・セットピース・コーチと二人三脚、アルテタ監督を差し置いてコーナーキックとコーチに向けたチャントも生まれているとのことで、微笑ましい(?)限りである。
と、あんまり楽観してばかりいられないのはエバトン同様、アルテタのチームもオープンプレーが上手くいっていない、というお話。

チャンスの質、チャンスメイクの数、トップクラブに比べて劣る試合あたりのxGの低さ、何やらうちと似たような指摘をチラホラと見かけるけれど、別次元のご指摘に見えてくる。チームの核、ウーデゴールを欠いていた時期には当てはまるものとして、すでに復帰を果たし本来のクオリティを戻しつつあると思う。しかし、それだけでは改善できなかった、とされるのがフラム戦に当たる。偏った攻撃ルート、特にサカのサイドから侵攻したいアーセナル、それを封鎖したのが元エバトンのロビンソンである。シウバの率いるチームでロビンソンの活躍を拝見するたびに何か違う世界線に立ちたいと思わされる現象が続いているが、我々にはシウバもロビンソンもいないのが現実。ミコちゃんを継続して起用するのか、ヤングを左に回し、右にコールマンorパターソンを起用するのか…サカのサイドから攻められるとわかっていても封じることができるかどうかは別の話である。

ライバルに遅れをとっている、という見方が強いようで、負傷者を見れば無理もない。サカのバックアップに長けたホワイト、セットプレーの脅威でもあるガブリエウ、攻撃にダイナミズムをもたらすカラフィオーリ、さらにはジンチェンコや冨安も負傷で離脱している。エバトンとのマッチアップでアーセナルのディフェンスラインがどのような姿になっているかは要注目だ。彼らはミッドウィークにCLモナコ戦を経てエミレーツに戻ってくる。勝機が無いわけではない、回復した状況のエバトン、手負いのアーセナル、焦点はエバトンの守備精度、そしてセットピースだ。難しいゲームであることに変わりは無いが、マン・ユナイテッド戦での失敗を活かすべきタイミングである。

ちなみに、攻撃時のコーナーキックで腕前を発揮しているアーセナルだが、守備時コーナーキックではリーグで3番目に失点が多い(ウルブズ、サウサンプトンに次ぐ数字)。

これは望みあり?とセットピースばかりに期待を注ぐ自分に少し切なさを感じながら、この両者のバトルを楽しみに待ちたいと思う。ダービーへ向けた熱量は、一旦隅の方に避けておこう。デッドボールの先に次の嵐が近づいている。

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BF
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