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えばとん情報2025.2.28「距離が結びつけるもの」

Everton’s new stadium as seen from the Pier Head on Tuesday night (📸 by Andy Mallins). How fantastic does this look?! 😃💙

(@uppergwladysblu.bsky.social) 2025-02-27T17:43:37.640Z

リバプールにあるピア・ヘッドというスポットから撮影された写真。中央奥でビビッドなピンクとブルーのライト。溌剌と輝くのはエバートン・スタジアム。この街を訪れたことがない私にとって想像を膨らませるには限界があるものの、ブラムリー・ムーア・ドックに新たな息吹を宿す新スタジアムは、夜景の中でも凛とした存在感を放っている。

この素晴らしい写真を見て、とある景色を思い出した。日本は神戸の夜景だ。山、陸、海の近さが互いの存在感を引き立たせ、海は陸を、陸は海と山を、山は陸を、独特の傾斜が生み出す彩りが空をもリンクさせ、どこの風景を切り取ってもウットリしていたのを覚えている。

距離とは何か?ダイチが築いたものの素晴らしさには、彼の哲学がはっきりと見え、選手たちも苦しい時間が続く中で、プレミアリーグに残留するための精神力を培ったと思う。モイーズがダイチの残した功績を称賛するように、指揮者が変わった現在もその残り香は至る所に浮かんでいる。
NY Times / The Athletic(有料記事)は、アウェイで見事な勝利をあげたクリスタルパレス戦の後、モイーズがどのようにしてエバートンを復活させたかを精細に綴った。

年始、最初のゲームであるボーンマス戦で敗戦したあと、某デイリー・メールの記者はSNSで「エバートンの降格への扉は開かれたばかりだ」とポストした。降格圏とは1pt差。ダイチは解任、モイーズがカムバックして現在に至る。形勢一変、状況は好転した。
「Relegation Battle」、もはや見慣れたフレーズも、今ではすっかり見かけなくなった。ブレントフォード戦を終え、降格圏とは15pt差である。

モイーズは、就任直後から現在まで、当初のプレスカンファレンスで語った姿勢を一貫している。あくまでも目標は残留であり、独自のスタイルを築くよりも、結果を優先することをしきりに述べた。その上で、ダイチのスタイルが非常に助けになっていることも認めている。
両者、似通った性質(グラウンド上の)を持ち合わせ、規律の厳しさやメソッドを備えるも、ダイチとクラブ、モイーズとクラブ、それぞれにおけるクラブとの距離感は別のものであると感じている。

モイーズ監督はクラブに活力を与え、フィンチ・ファームの練習場でも試合当日のスタンドでもムードを高めている。 モイーズとスタッフは、トレーニングセッションでよりポジティブな雰囲気を植え付けようとしている。

後者は前者と同じくらい重要なことかもしれない。

モイーズと彼のスタッフは、最初の就任時からクラブの多くの人々を知っており、他の人々ともすでに良好な関係を築いている。 個々の選手へのきめ細かなフィードバックと、チームの全員を知ろうとする姿勢で、老若男女を問わず選手たちに好印象を与えている。 ダイチの任期終了間際にフィンチ・ファームを覆っていた雲は晴れ始めている。

The return of David Moyes: How Everton have been revived by a familiar face back at the helm

ダイチ解任後に、監督と選手間の齟齬やスタイルへの蟠りが生まれていた、そんなあるある話が流れたが、その要素を除外してもモイーズが持つクラブとの関係性は、明らかに他にないメリットである。プレミアリーグ、ましてや世界中のマネージャーを探してもモイーズとクラブの繋がりを凌駕できる、そんな人材はいないだろう。

ダイチがパターソンとの距離感を間違えて、平手打ちをかましてしまったボヤ騒ぎのような出来事は、モイーズ政権下では発生しないだろう、そんな考えが頭をよぎった。

もちろん、ダイチにはダイチの良さがあることは重々承知している。

誰も勝てやしないストロング・ポイント。エバートンはどんなクラブなのか、ファンはどんな性格で、何を求めているのか、歴史を辿るだけでは追いつけない、本質的なムードを熟知している。昔からのスタッフ、それは例えばリクルーターであり、元教え子のジェイムズ・ヴォーンや、芝生の上に立つスタッフだけではない、食堂のシェフ、清掃員、警備員、あらゆる役割を持つ人々と繋がりがある。

東京での観戦会で、10年近くシーズン・チケット・ホルダーだったという現地出身のエバトニアンに出会った。彼の父は今もグディソン・パークで毎試合観戦しているという。

「ダイチのことは嫌いじゃないよ、でも彼のやり方は間違っていたと思う。それは今、モイーズが証明しているよね。これからの週末が楽しみになった」

そう語った彼は、何故私にエバトニアンになったのかを尋ねてきた。少ない時間ではあったが、モイーズ・エバートンの思い出話に花が咲いた。共にチャントを歌い、現地との距離が縮まった気がした。

everton TVのインタビューで、ブランスウェイトは「攻撃の脅威を高めることが焦点になっている」こと、「攻撃陣のさまざまなポジションや、相手ディフェンスをオープンにするためのさまざまな走り込みに取り組んでいる」ことを明らかにした。ベトの"オーダーメイド・トレーニング"もこれに当たるだろう。ゲイェは、「私たちはとてもいいトレーニングをしているし、監督もいくつかのことを変えてくれた。以前よりも個々のビデオを見ているし、短いパスでプレーするための戦術的な練習も増えている」とインタビューで語った。

フルバックをプログレッシブにプレーさせたがらなかったダイチ下の不遇を乗り越え、オブライエンが輝いていることも大きな変化のひとつだ。

ミコレンコがプレミアリーグ100試合目の出場にして、初のアシストを記録したことは偶然でないはずだ。このゲームでオブライエンがあの位置まで前進したことは一度だけではない。繋がるオプション。

攻撃に糸口の見えなかったチームがここまで姿を変えたこと。そこには戦術的に手を加えたことはもちろんだが、スカッドと言えない立ち位置にいた選手を抜擢し、本来の魅力を失っていた選手たちの活路も見出した。そこには、選手との距離感による違いもあるのではないか、そう感じた次第だ。

かつて、ラファ・ベニテスが選手との関わり・距離感の保ち方が原因でチーム状況がみるみるうちに悪化した、そんなレアル・マドリー時代の話を思い出した。アンチェロッティはその逆だった。

モイーズが就任して以降、印象的な場面が何度もあった。プレーが中断された際、タッチラインに選手を呼び寄せコミュニケーションをとるシーンがカメラに抜かれることが増えた。勝利後のピッチでは、選手とハグや握手を交わす場面が頻繁に映る。

どちらが正解で、間違いか、という話ではない。結果が全てを判断する。距離がもたらすチームの変化、それは周囲に田んぼしかなかった私の故郷と、思わず見惚れてしまう神戸の景色を比べているようなもの。どちらにも魅力はある。それでも、彩りを加えるには、何かを引き立たせるには、互いの適切な距離感が必要なのだ。

冒頭の写真に戻る。エバートン・スタジアムは、その単体で成功することはできない。街との繋がり、交通整備や環境を築くインフラ、人々との繋がり、新たな観客、ファンの創出、世界とのコネクト。

勝ち点は「金の粉」。モイーズは1ptの重さをそう例えた。7戦無敗の好発進も、現実的に未来を見ている。

さて、独り言を連ねるうちに大きなニュースが舞い込んできた。

Kevin Thelwell set to leave Everton as The Friedkin Group consider recruitment options www.liverpoolecho.co.uk/sport/footba...

Christopher Beesley (@cbeesleyecho.bsky.social) 2025-02-28T13:29:08.153Z

オーナー問題決着の後は、ダイレクター問題になる。ケビン・セルウェルは契約満了を以てエバトンを離れるようだ。

そして、こちら。グディソン・パークがウィメンズのホームスタジアムになるかもしれない。(有料記事)


明日はこの辺りの話題になるだろう。

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BF
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