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えばとん情報2024.12.10-11「突き上げる海流」
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235話「突き上げる海流」より
尾田栄一郎/集英社
突き上げる海流(ノックアップ・ストリーム)は
いわば災害だ。
本来、断固回避すべき対象なのさ。
相手が風と海なら航海してみせる!
麦わら海賊団、航海士ナミの名言
◇
突き上げが必要だ。
エバトンはマンスフィールドと非公開のトレーニングマッチを実施。
Everton are to play a behind closed doors training match this afternoon against Mansfield Town. Nathan Patterson, Seamus Coleman, Jake O’Brien, Armando Broja and Youssef Chermiti are all set to feature 🔵 pic.twitter.com/jvTsaeIEaV
— The Bobble (@ElBobble) December 10, 2024
パターソン、コールマン、オブライエン、ブロヤ、シェルミティといった怪我明け、プレー時間の少ない選手たちが出場した模様。後半戦へ向けて、ここから1人でも多く大きな役割を果たしてほしい限りだ。
昨季、(H)チェルシー戦でドビンが劇的な追加点を奪った日から1年が経過した。
A year ago today, Lewis Dobbin scored his first Premier League goal for Everton to seal a 2-0 win over Chelsea. Doucoure got the first. Broja in the Chelsea side. #EFC #Everton #UTFT pic.twitter.com/2UfmZ6ZSqD
— Bluekipper.com (@bluekippercom) December 10, 2024
長いシーズンで、日頃はスターティング・ラインナップに入れない選手たちがチームへの追い風を巻き起こすこと、底上げへの流れは非常に重要だ。近年、財政的な制約があったチームにとって冬の補強に頼ることはできなかった。たとえTFGが年末に到着したとしても、贅沢なクリスマスプレゼントをすぐさま用意してもらえるわけでは無い。真新しい煌びやかなカードではなく、既存の手札をいかに有効活用できるかが勝敗を左右する。
◇
クリスマス前に到着するか?
今すぐにサンタクロースからプレゼントが貰えなかったとしても、来年の年末に今より安定したクラブになっているかどうか。フリードキン関連、直近の情報をまとめてくれたToffee Web/リンドン・ロイド氏のコラムを。
買収関連の関係者に近い情報筋によれば、プロセスの終了が迫っている明確な情報はないものの、クリスマス前にはすべての契約が完了するだろうと漏らしているようだ。
最近ではBloomberg、The Athleticでも指摘があったが、777partners、A-CAP、リーデンホール、詐欺事件の訴訟や2億ポンドの融資とその負債、当事者たちが和解をし規則上の問題をクリアする最後の山場を乗り越える必要がある。Skyやiのダグラス記者からも、クリスマス前の週明けあたりには買収完了に至る、リーグからの承認ハードルを越え、新体制・新経営陣が即座に発表されるとの見立てもある。
一部では既に大きな取引は完了しているというゴシップも現地コミュニティでは見られている。次のストリームが迫る。
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バックアップから主軸へ
"Nothing has really taken me by surprise [at Everton], because I knew about the passion of the fans, the size of the Club, the history and the good players who are here."
— Everton (@Everton) December 10, 2024
Our latest long read is with Jesper Lindstrøm ⬇️https://t.co/GUJWMlttVy
暫定的な首脳陣、上層部から脱却し正式なトップが君臨するよりも早く、ピッチ上でも新たな変化は求められている。冒頭の練習試合に参加するメンバーには名を連ねていなかったが、今季ナポリからローンで加入したリンストロムは先発と控えの狭間にいる選手のひとりだろう。
ここまで10試合に出場(うち6度の先発)もプレータイムは494分。11月、ウェストハム戦、ブレントフォード戦、マン・ユナイテッド戦で3試合連続の先発も、マクニール(1,140分)、エンジャーイ(1,076分)、ハリソン(667分)と比較してもライバルたちの後塵を拝するプレータイムにとどまっている。
前節ウルブズ戦では、左:マクニール、中:ドゥクレ、右:エンジャーイの攻撃ユニットを選択したダイチ。ドゥクレをボランチから一列上げることでゲイェとマンガラのペアを選ぶことができる。リンストロムと同様にローン加入のマンガラは586分というプレータイムだが、ガーナーとイロェブーナムの不在で存在感が増しているのは確かだ。一方、その余波もありウイングのハリソンとリンストロムはベンチからのスタートとなり、指揮官のファーストチョイスからは漏れている状況だ。
今季初勝利となったクリスタルパレス戦では、歓喜の裏でリンストロムにとっては課題の残る一戦だった。スタメンとして口火を切ったものの、ハーフタイムで交代を命じられる結果となった。だが、それを糧にする本人のコメントは心強かった。
「フラストレーションが溜まって、前半は不本意な形で交代になった。 タフだったけど、それで落ち込んではいられないね。周りのみんな(チームメイト)は素晴らしい。 シェイマスやターキーのようなリーダーたちは本当に助けてくれたし、戦い続けるんだ、良いトレーニングを続けようと言ってくれた」
「正直に言って、僕たちは強いグループだ。 イリ(エンジャーイ)は僕と親しいんだけど、プレーもポジティブだし、彼をはじめ、みんな自分の持ち味を発揮している。チームワークは本当に強い。 昨年もそうだったと思うよ、減点があったりして、『何点奪われるんだろう』とか、『降格するんじゃないか』とか、外部のみんなは話していたけれど、みんなが力を合わせて乗り切った。 それは簡単なことじゃない。 選手だけでなく、スタッフや経営陣など、クラブを取り巻くすべての人がそうだ」
「ファンの情熱、クラブの規模、歴史、そして優秀な選手たちのことは知っていたからね。今年もタフなスタートを切ったけど、チームを再編成できたし、ここからさらに前進できると感じているよ」
直近の数試合を見ると、ボールを持たない時の鋭敏なプレッシングは加入当初には見られないものだった。ダイチの檄が飛んだかもしれない。ボールを持てば気の利いた位置でシュートの体勢へと移行し、自らゴールを狙っていくシーンも垣間見える。もっと時間を与えても良いと個人的には感じている。
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via under stat
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ショットマップ。
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シチュエーション毎のスタッツ。
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90分あたりのシュート数ではチーム2位。
オープンプレーでの攻撃に乏しいエバトンにとって、リンストロムの個性と戦術が合致していない可能性は大いにある。ほとんどのシュート・シチュエーションはオープンプレーから生まれているのはもちろんだが、特にペナルティエリアでその回数を増やしていくべきである。しかし、エバトンでは深い位置まで前進してもクロッサーとしてのタスクに限られてしまったり、そもそもボールを持つ時間も少ない。それでも、ゴールを狙うその積極性が数字に表れている。プレータイムの近いハリソンよりもシュートに絡む頻度は多く、キーパスの企図数でも上回っている。
意外にもリーグ戦でのセットピースにおけるダイレクト・フリーキックのゴールが無いリンストロムだが、プレースキックの精度や可能性にはマクニールにも劣らない魅力があるはずで、現在のチームではマクニールにその役割が任せられているものの、リンストロムの出番はピッチに立てさえすれば今後も訪れるだろう。
同じくローニーである2年目のハリソンと、シーズン終了後にはどちらかが再契約を果たす未来があるかもしれない。既にチームに欠かせないピースとしてアピールしているエンジャーイのインパクトには劣るリンストロムだが、彼の性格が垣間見えたインタビューからは、まさに突き上げを期待したい想いが高まった。チーム内では数少ない、CL&ELの経験を持ち、ブレンビー時代にはデンマーク/スーペルリーガのタイトルも獲得するなど、若くして勝者のメンタリティを知っている。
「兄がリバプールを応援しているんだ。さらにチェルシーファンの兄とウェストハムファンの兄がいるよ。そして、それ以上にブレンビーは僕らの心のチームだった。 僕たち全員がブレンビーを応援していたから、ブレンビーでプレーし、ブレンビーでリーグ優勝できたことは、家族にとって本当に特別なことだった」
「今、僕はエバトンの選手でここが大好きだ。 みんなも、トレーニングも、施設も、ファンも大好きだ。 ここでとても幸せだし、もちろん自分がその一員であることを示すために、毎日すべてを捧げていることを示すために、できることはすべてやっている」
「僕はとても謙虚な家族のもとで育ったんだ。 僕の価値観はエバトンの価値観に合っていると思う。それを示すのは、ピッチ上でのパフォーマンスだ。 もちろん、フィンチ・ファームの外でも、ファンに会えばできる限り時間を割いているけれど、選手としてチームのために戦うことを示したいし、自分が相応しいレベルを持っていることを示したい。良い試合もあったし、1度や2度は得点できたはずだった。でも、変わらず自分が貢献できる準備ができていることを示すため、日々のトレーニングでハードワークを続けているよ。いつでも準備はできている」
おそらく、フラストレーションは溜まっているはずだ。謙虚な言葉が印象に残るリンストロムだが、きっと内心では「もっと使えよ!」と指揮官への不満を募らせているだろう。
日々の準備を、鬱憤を、そして何より本人が重ねて発した「示したい」という欲求が、試練続きのチームに新たな流れを呼び込んでくれるかもしれない。
◇
ノックアップ・ストリーム
約1分もの間、爆発したかのように空へと突き上げる海流のことを「突き上げる海流(ノックアップストリーム)」という。詳しい原理は解明されていないが、定説では、海底のより深い場所にある大空洞に低温の海水が流れ込み、その下からの地熱で生じた膨大な蒸気の圧力で海底で引き起こされた大爆発の影響だとされている。その威力は島を一つ吹き飛ばすほどの威力であり、約400年前に偉大なる航路(グランドライン)にあるジャヤという島の半分が「突き上げる海流(ノックアップストリーム)」により突き上げられて空島へ飛ばされたとされている。
より抜粋。
作中の登場人物、クリケットの言葉を借りれば、まさに災害級の出来事が連続した近年のエバトン。クラブには大穴が空き、渦潮のように残留バトルへと飲み込まれた数シーズン。誰も近寄りたく無い、そんな状況に足を踏み入れたダイチ陣営。残されたセルウェル、エバトンで務める全てのスタッフたち。
ファンの怒り、選手の葛藤、トップハーフ進出への道のりが長く感じられる時間が続いている。
今後、もし爆発が起きた時、そのストリーム/海流をクラブはなんなく乗りこなしていけるだろうか。脱却を図る今こそ、風と波を相手にして突き進む。
クラブ(船)を沈ませないためにクルー(選手、スタッフ、ファン)たちは必死にもがいているはずだ。
激しい海流を眼前にして、突き進むための風を見つけ出し、漫画のように空まで飛んでいけずとも、現状を突き破る波に乗らなければいけない。
次の突き上げで振り落とされてはいけない。
ここから数ヶ月、1年、3年、5年、その繰り返しが求められている。
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