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えばとん情報2025.1.7「SHOGUN」

大河ドラマ『SHOGUN』のゴールデン・グローブ賞4冠の報を受けて、各演者たちの熱演を思い出した。"謀"の壮大な展開と驚きの連続。策略のために命を落とした数多くの人間たちが、己の大義のために全てを尽くす戦国の世。その先で泰平の世をもたらすための覚悟とはいえ、あまりに重く、残酷で、生と死の行方に心を揺さぶられる。国や思想、宗教の違いの中で互いの信念と心の内を知る、日常では感じ取ることのない凄みを得るばかりだった。時代を変えるとは並々ならない犠牲を伴う。私は相変わらず、性懲りも無く容易にエバトンを思い浮かべた。

買収動向を追わずに日々を過ごせるようになり、12月のビッグ6との3連戦をイーブンに終えたことで、年末年始は新たな気持ちと新鮮な門出を以って過ごせると感じていた矢先、エバトンは2024年のラストカードと、2025年最初のカードを相変わらずの無得点で落とすという、なんとも歯切れの悪いスタートを迎えることとなった。
どうやらひとつの分岐点を迎えている。戦国の世、切腹する家臣や介錯に付く家来たちの姿と重ねていく。

ダイチの寿命はいかに

「チャンスをモノにすることが我々の課題」という聞き飽きたフレーズ、「自信の無さ」が敗因と語った我らの指揮官ダイチ。引き分けの数を取り上げ、「勝ち星に変えられていたら…」など、本人に自信が欠けている印象すら窺え、ボーンマス戦後に肩を落とすことになった。その他発言からもポジティブな意味合いが空回りしている印象もある。マン・シティ戦までのドローで得た感触は手のひらから静かに零れ落ちた。

ボーンマス戦で決定機を逃したドゥクレも試合後にインタビューを受けた。ダイチ就任前には自身のポジションを失い、その後残留に貢献して復活を遂げたドゥクレにとっては、自らを信頼してくれた指揮官を支持する声が印象的だ。

これから状況を好転させるにあたり、ダイチ監督を信頼していますか?

「もちろん。 監督は2年前、非常に困難な時期にやってきた。僕らが抱えてきた困難や財政的な問題を知っていても、彼は僕らを信じて戦い続けてくれた。 彼の考えは変わらないし、私たちが現況から一線を越えるために助けてくれることを願っているよ」

現在のチームに1月の移籍市場で新オーナーであるフリードキン・グループの助けが必要だと感じますか?

「いずれわかることだ。 これは選手としての僕らには関係ないことだけど、クラブは必要としているかもしれない」

「ゴールを決めるクオリティはチームにある。 ただ、信じることが必要であり、現時点での信念の欠如は僕らにとっての問題だ」

「試合に勝つためにはゴールを決めなければならない。 それは集団の責任であり、まずはストライカーから求められるものだけど、チーム全員が得点を決めなければならない。今はとても難しい。 得点できないし、失点もしてしまう」

「ボーンマス戦は非常に難しかった。 ハーフタイムにもそう話したし、後半は修正しようとしたけど難しい部分があった」

「僕たちはこれより悪い時期もあった。 チームはまだ信念を持っている。今は辛いだろうし、今シーズンはここまで厳しいものだった。 でも、ここから立ち直って、自分たちをもっと良くするために努力するしかない」

「今は勢いがない。 アーセナル、チェルシー、マンチェスター・シティという3つのトップチームと戦った3試合はとても良いパフォーマンスだったんだ」

ダイチの今後について、上記「i」の記事にてマーク・ダグラス記者が綴った。

TFGには大きな期待が寄せられる中、対処しなければならないのは「今」だ、という見解から「ダイチに固執するべきか、考えを捻じ曲げるべきか」という選択肢を挙げ、いずれにせよ判断に迫られているのは間違いないと言える。

ダグラス記者が述べるポイントは下記の点。

  • TFGがダイチを解任したくない理由はいくつもあるが、少なくともPSRの状況を圧迫する要因となる

  • 1月に大型補強を実施できないエバトンにとって、ダイチ続投自体が救済措置になりうる可能性がある

  • 新首脳陣は野心をもって冷酷に判断を下す準備もできているが、ローマでの監督交代の余波として今後の対応はグループの評判に大きく関わる

  • 降格圏に少しでも近づくor落ちることがあれば厳しい話し合いは避けられない

こうした見解があった中で、次に大きな報道が取り沙汰された。スカイ・スポーツ/アラン・マイヤーズ記者による取材内容が公開された。

週末ボーンマス戦での敗戦後、新オーナー陣営が次にどのような手を打つか、監督人事について真剣に検討していることが明らかとなった。

プレミアリーグの他の監督たちよりも困難な状況を乗り越えてきたダイチへの称賛を送りつつ、本来の理想、今後の動向について言及している。

  • あくまでもTFGが公に声明を放った通り、ある程度の安定が第一で、少しでも良い順位へ浮上し、今シーズンをやり遂げることが目標だった

  • ダイチの契約期間満了を経て、改めて適切な評価と判断を下すことが理想だった

  • TFGが監督交代を決断した場合、すぐにでも就任できる人物を選ぶと予想。交渉する時間は限られており、木曜日のFAカップ、ピーターバラ戦のために短期的(暫定的)なオプションを用意し、次のプレミアリーグ、(H)アストン・ヴィラ戦のために、より恒久的な解決策を用意することになるだろう

  • モイーズは残留争い、降格圏内にあるクラブへの就任には興味がないことを示唆、噂にあがるポッター招聘は選択肢の最有力だとしても驚かない

同じくスカイ・スポーツからの報道によるとウェストハムがロペテギの後任としてグレアム・ポッターを招聘することを検討している。すでに接触もあった模様だ。エバトンの進捗よりも先に進んでいる印象はある。両者の試みがどのように事を運ぶだろうか。

(一方、BBCのエバトン番ジャーナリストであるジュリア・ボウルド記者がこれらの話題については静かなことも気になっている)

ベニテスのチームが降格圏に沈んだ時、ランパードのチームが残留争いに巻き込まれた時、その状況と近い情勢にあるダイチ・エバトン。現地でも解任を要望する声は日に日に強まっている。一方で続投を希望し、シーズン終了後に監督交代を行うべきだ、という意見で二分化されている印象だ。"ダイチの後任にはダイチが必要"、という旨のジョークを放っていたジャーナリストの言葉は妙な説得力があった。

もし、ダイチを切るならば、次の指揮官が残留だけを望む短期的な人材なのか、新シーズンも見据えた中長期的計画なのか、明確なプランが求められる。

ASローマでは、モウリーニョ更迭とデ・ロッシの解任やユリッチ、ラニエリの招聘など強気な姿勢を見せ、ある種の決断力を示してきたフリードキン一派。エバトンでの最初の采配がどのように処遇を決めることになるのか、ここから数日の動向に注目していきたい。

昨年12月以降、全コンペティション8試合で5勝を達成しているラニエリ監督。先日のローマ・ダービーではライバルを下して自身の対ラツィオ戦の記録を4連勝へ更新。現在、リーグ戦10位に及んでいるチームだが、ようやく軌道に乗せつつあるようだ。


移籍市場

元エバトン、ベン・ゴドフリーのイプスウィッチへのレンタルが決定した。エバトンの監督交代における動向を見守りつつ、冬の移籍市場でどのようなアプローチを仕掛けるのかも注目が集まる。下位クラブにとっては残りのシーズンでサバイバルを生き抜く重要な分岐点となる。

クーニャの契約更新と新たなCBの補強を進める不気味なウルブス、芯のある補強を実践するイプスウィッチ同様に復調の気配が色濃く映る。

ロマーノ氏からのゴシップも飛び出した。実にセルウェルらしい、しつこいアプローチ。ダンジュマ、エンジャーイらに通ずる一貫した熱視線。また、フィロジーンと同じく攻撃的な選手の噂として、以前も挙がったWBA所属トム・フェローズへの関心も続いているようだ。

また、トルコ方面からもゴシップ。トルコ代表FWユヌス・アクギュン(どなたかご存知?)を獲得するためにローン移籍の入札を行い、買い取りオプション付きでの獲得を希望しているとのこと。

放出面では、ボーンマス戦で出場したハリソン・アームストロング、怪我に苦しんだユセフ・シェルミティ、出場機会の限られているジェイク・オブライエンらのローンなどが取り沙汰されるが、信憑性も含め最も関心が集まっているのはベトの動向だろう。トリノに降り立ち、交渉を終えてクラブの判断を待つ状態にまで進んでいるとの話もある。

犠牲になるのは?

さて、最新の動向をおさらいしながら感じるのは、この1ヶ月で誰かが(何かが)犠牲にならなければいけないということだ。TFGの到着により新たな船出となった新生エバトンだが、この道のりに近道や最短距離を求めるのはお門違いのように思う。しかし、そうも言っていられない現状と言われても差し支えないだろう。

指揮官を更迭し、次なる歩みへの第一歩としてダイチが犠牲になるのか、はたまた現状からは希望を見出しにくい中でダイチを続投し時間を犠牲にして浮上の兆しを待つのか?

新スタジアムでの高らかなシーズンを迎えるまで、暫定的なヘッドコーチを据える手法もある。そうなればテイトやベインズが犠牲となるのか?多大なコストを払ってでも、別の残留請負人を頼るのか?

昨年よりは楽観できるとはいえ、PSRの厳しい財務事情が引き続く中、大金を叩いて獲得したベトを満足のいく結果のないまま放出し、新たな可能性ある選手を連れてくることは、懸命に働くセルウェルの失敗として覚えることになるかもしれない。

ボーンマス戦へ足を運んだ勇気あるファンたちは、チームの不甲斐ない戦いを受けて相手ファンからもクリティカルな煽りを受けた。
"How do you do watch this every week?"
今季、熱意を持って駆けつけた彼らも更なる犠牲者として数えられるかもしれない。「醜いチーム」と揶揄されるのは耐えられないはずだ。

大義を果たすには、多くの犠牲を払うことがある。フットボールは結果でのみ評価される世界。

証明できるのか?才能はあるのか?成長するチャンスはあるのか?それがわかるまで続けてみれば良いよ、続けられるって幸せなことだよね。仕事中、そんな意味合いの歌詞が夕刻のラジオから流れてきた。SHOGUNに続いて、またエバトンを思い浮かべた。

だがフットボールの世界では通用しない考えだと理解するのである。

これまで何人もの脱落者を見送ってきた。
ダイチは"ある意味で"彼らと同じように結果を証明した。降格圏からのグレイト・エスケープ、減点からの再起、そして契約最終年での力不足。攻撃面のあらゆるスタッツがリーグ最低の数字を残している。降格圏からの勝ち点差はたったの「1」。これが現実だ。

さあ、後半戦の火蓋は切って落とされた。
今期のドラマはどのように痺れさせてくれるだろうか。都合の良い話だが、私たちが犠牲になる未来は迎えたくないのだ。

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BF
気に入ってくださり、サポートしてくださる方、ありがとうございます。 今後の執筆活動や、エヴァートンをより理解するための知識習得につなげていきたいと思います。

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