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翌日からその方法は「同調発狂」と命名された〜『ファッツァー』公演プログラム(2013)抜粋

表紙/うら表紙(デザイン:松本久木)

空間現代から最初のコンタクトがあったのは昨年11月末。彼らのアルバム発売記念ライブに出演してほしい、というメールでのオファーでした。ちょうど『コリオレイナス』の本番と日程が重なっていたため、丁重にお断りしたのですが、それからしばらくして、彼らから京都METRO でのライブの案内が再び届いたのでした。出不精の地点の面々も、近場のライブハウスには嬉々として赴きました。新作『駈込ミ訴ヘ』の稽古が例によって行き詰まり、悶々としながら丸太町に自転車で向かったのを覚えています。
演劇で、一つの台詞を複数で同時にしゃべることを群唱と言いますが、これがなかなか難しい。台詞が間延びし、節回しも幼稚になりがちなのです。とはいえ、声を合わせて音を増幅させる群唱にはロマンを感じてもいました。
そんな折に空間現代の音楽に出会い、一文字単位で声を合わせるやり方がひらめきました。ギター、ベース、ドラム(そして時にはボーカルでさえも)が一音のレベルで音を同期させ、その連なりでリズムをつくるというやり方に大いにインスピレーションをかき立てられたのです。

翌日からその方法は「同調発狂」と命名されて、新作の稽古場でいろいろに試されることになりました。「そこ、空間現代でやって」という指示が演出から大真面目に出される事もしばしばでした。トライアングルのフォーメーションで観客に愛想を振りまく事もせず、演奏に専念する彼らのストイックな姿もしばらく印象に残りました。ストイックすぎてユーモアをたたえるその姿は、きっと地点の舞台でも映えるだろうと思ったのです。

【内容】
「演劇の国にようこそ」三浦基(地点/演出)
「ブレヒト/ミュラーの『ファッツァー』敗北者の眼差し」市川明(大阪大学名誉教授/ドイツ演劇)
「『ファッツァー』の難問」平田栄一朗(慶應義塾大学教授/ドイツ演劇)

というわけで、空間現代とはいつかいっしょに仕事をすることになるだろうと思っていたのでした。その機会は存外早くやってきた訳ですが、アンダースローに彼らを迎えることになったのも、当然の成り行きのような気がしています。アンダースローは元々ライブハウスでしたが、バンドマンがこの空間にやって来たのは何年ぶりになるのでしょうか。大音量に耐える稽古場がなければこの作品は生まれませんでした。その点においても、アンダースローならではの作品になったことは、作り手としてうれしい限りです。

制作・田嶋結菜

地点の公演プログラムや雑誌『地下室』などは、コチラのウェブショップで購入可能です。


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