このnoteのこと
年末年始と、地元と東京との行き来に新幹線に乗る。乗っている時間の半分はウトウトして、もう半分は本を読んでいることが多い。タブレットに何冊も入れておけるのは、ほんとに便利なのだけど、もともと同時に何冊かを読み進めるタイプだったのもあって、読みかけの本だらけになってしまっている。
そんなので頭に入るのか、と言われると、僕は結構頭に入らない。内容を忘れてしまうことも多いから、そういう意味では得るものが薄いし、当然タイムパフォーマンスも悪い。知識や論理を取り出して保存しておければと思うのだけど、なかなかうまくできない。そんなふうなことが分かっていながら、それでも本を読むし、読んでいる時間はやっぱり楽しい。そのときどきで考えることや、考えがつながることが楽しくて、それで本を読んでいるところがある。
『遅いインターネット』をいつからだか読み進めている。
今回の移動中、ちょうど「ほぼ日」についての記述に差し掛かった。「ほぼ日」というのは、ごく簡単に説明すると、糸井重里さんが作った読みものウェブサイト、「ほぼ日刊イトイ新聞」の略。本の中で語られていることを今ここで書くつもりもないし、できもしないのだけど、久しぶりに「ほぼ日」ってもの(その批評)と出会って、僕がこの「わたしと演劇とその周辺」で実現したかったようなものっていうのは、「ほぼ日」に近かったのかもしれないなと、なるほどなと思った。
そして同時に、(吉本隆明と、)「ほぼ日」(糸井重里)を批判的に継承することを提案したいと述べる、著者の宇野常寛さんが主宰する読みものウェブサイト、「遅いインターネット」に近い感覚でもあったのかもしれないと思った。
note「わたしと演劇とその周辺」は、この著書に沿って言えば、「自立」というものを考えるためのものなのだろうと思う。
僕は主に、東京の小劇場を中心に俳優をやってきた。
芸能ともエンタメとも縁はあまり近くなく、ほぼほぼギャラもなく、バイトの収入に頼る暮らしだった。それで将来どうするのか? という問いを向けられたとき、僕はほとんど答えるすべがなかった。ただ少なくとも自分にとって、俳優をやるというのが、必要なことだったはずで、それ自体が生活だった。
しかし語られないものはもちろん、理解されなかった。僕はそれを説明できなかったし、そもそも、語ろうとする努力もしなかったように思う。(あるいは、それを端的に語ろうとすれば、演劇は素晴らしい→だから俳優も素晴らしい、みたいな論理に陥ってしまっていただろうと思う)
価値自体を語るのは、実は案外難しい。
村上隆さんの『芸術起業論』も並行して読んでいる。村上さんは、芸術の世界、美術界の論理を読み解き、成功の鍵を、文脈(歴史的)のなかに創作を置くことと、自らに文脈(物語的)を持たせること、と述べている。(と僕は読んだ)。価値が発見されるためのサブタイトルを見つけるべきだと。村上さんは非常に厳しく、同時にとても優しく、成功することとアーティストについて語ってくれている。
成功する、というイメージはしかし、多くの、特に演劇を主戦場とする俳優には、はっきりとしたものが映らないのではないかと思う。少なくとも僕はそうだった。いまも別の稼ぎで暮らしながら、何かしら続けていきたいというふうに思っている。
それは成功だろうか。何が成功なのだろう。
どんな形でか続けていければ、というのは、もちろんそれも大変なことではあるけれど、同時に、どこか勝負からは降りているという感覚が自分にはある。ただ、それでもやはり、続けていくというところからは、絶対に降りていない。なんというか、そんなところで、勝ち負けのよく分からない戦いをしている。
だから僕は、そうやって、続けているという生き方自体が、もっと語られたらなと思ったのだろう。あるいは、続けているに限らない、今は休んでいるとか、やめて別のところにいるとか、そんなところからも語られるものがあるはずだ、と。
漠としたこの世界に、座標を置く必要がある。それはどこからか借りてくる以上に、自分たちで見つけるべきものなのだ。この企画が、2020年の演劇関係者のドキュメンタリー映像をきっかけにしているのには、こんな背景があったのだろうと、いま考えながら思う。
1月に書いた通り、現在の形式で続けられるのは、一旦今年度までになる。
僕も1年に渡って記事を書いて公開するということをしてきたけど、やっぱりなかなか、大変だ。
お金をもらっても、ちょっとそんなに、やりたいものでもないのかもしれない。
でも、ときどきだったら、と思う。
10人が1ヶ月1記事で、1年120記事は大変かもしれないけど、
120人が1年1記事で、年間120記事はどうなの?
そんなことをぼんやりと考えながら、この場所を続けていけたらと思う。
(365人が、と言わないのは、そんな毎日読むものでもないよなと、3日に1回くらいでいいよなと、それはどちらかと言えば全然ポジティブに、そう思っているから)
さて。
生活や活動、感じたこと考えたこと、この場所で公開してみませんか。
年に1回くらいはどうでしょう?
と、来年度、4月からのことを、そんなふうに考えています。
企画の紹介や干城の記事はこちらから。
https://note.com/beyond_it_all/m/maca6d8d671c9